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【教育研究家に聞く】「赤ちゃん返り」は大切!? 上手に対応する9つの方法

下の子が産まれたり、環境が変わると起こる、子どもの「赤ちゃん返り」。一体どうしたらいいの? いつまで続くの? とイライラすることもありますよね。赤ちゃん返りの原因や期間、本当の意味、上手に対応するための方法について、教育研究家の征矢里沙さんにご紹介いただきました。

最終更新日:2024.1.22

目 次

【赤ちゃん返りの対応】赤ちゃん返りの原因とは?

大泣きする子ども

PIXTA

「赤ちゃん返り」とは、ある程度色々なことができるようになった子どもが、まるで赤ちゃんに戻ったような振る舞いをすることを言います。
特に、下の子が産まれたばかりの上の子に起こりやすいと言われていますが、一人っ子でも、環境が変わったときに起こることもあります。

赤ちゃん返りの原因は、「もっと愛情を注いで欲しい」という気持ちだと言われています。
自分を見て欲しい、構って欲しい、可愛がって欲しい、という気持ちです。
そのために、それまでできていたことをやらなくなったり、激しいワガママや自己主張をして、親に強制的に手をかけさせる行動に出ます。

「幼児退行」などという言葉もありますが、子どもの赤ちゃん返りは、今の自分に必要なもの(愛情・関心)を求めるための大切な行動。
いわば成長の証であり、とても健全な発達過程だと言えます。

【赤ちゃん返りの対応】赤ちゃん返りの行動の例

抱っこしてもらう子ども

PIXTA

赤ちゃん返りの具体的な行動には、以下のようなものがあります。

●スキンシップを求める
 ・ベタベタくっついてくる、抱っこをせがむ、離れない
 ・おっぱいを欲しがる、触りたがる

●できることをやらない
 ・一人でできるようになったことを「手伝って」「やって」と言う
  (着替え、トイレ、食事など)
 ・ベビーカーに乗りたがる

●ワガママや欲求の主張が増える
 ・「アレしたい」「コレ欲しい」が増える
 ・「聞いて聞いて」と主張する、大人同士の会話を遮る

道端で泣く子ども

PIXTA

●機嫌が悪くなる
 ・物を投げる
 ・叩いたり引っ掻くなど暴力的になる
 ・反抗的になる、怒りっぽくなる
 ・下の子をいじめる、いじわるする

●スムーズに寝られなくなる
 ・寝かしつけに手間がかかる
 ・夜泣きする
 ・おねしょをする

特に、下の子が産まれたときは、下の子がやってもらっていることは自分にもやって欲しい! と思うようです。また、赤ちゃん返りで甘えるのは、特に「ママ」が多く、「パパじゃダメ」ということもあります。

【赤ちゃん返りの対応】赤ちゃん返りはいつまで続く?

泣く子ども

PIXTA

赤ちゃん返りが起こる年齢は、自我が発達してきた2歳頃から、小学生くらいまでと幅広いそうです。
特に2~3歳に起こりやすいと言われていますが、環境が変わったり、精神的なストレスがかかったりすると、小学生くらいまではいつ起こってもおかしくありません。

赤ちゃん返りが続く期間は1ヶ月以下~1年以上と幅がありますが、平均では約半年(5.3ヶ月)という調査もあるようです。
一度収まったと思った赤ちゃん返りがぶり返したり、何度も繰り返すこともあります。
また、赤ちゃん返りをしたときに十分に対応してあげられないと、もっと大きくなってから、また爆発することもあります。

実はこんなに大切! 赤ちゃん返りすることの意味

悩む女性

PIXTA

親をほとほと困らせる赤ちゃん返り。特に下の子が本当の赤ちゃんだと、二重に手がかかって大変ですよね。
しかも、トイレトレーニングやしつけで、せっかく一度はできるようになったことがまたできなくなったりすると、「いい加減にして! 」とイライラしてしまいます。

でも、実は子どもにとって、赤ちゃん返りをすることは、とても大切な行為なのです。

「赤ちゃん返り」の本当の意味とは?

笑顔の赤ちゃん

PIXTA

子どもはどうして「赤ちゃん」になりがたるのでしょう。
それは、赤ちゃんは「何もできない」からです。

自分では何もできなくて、何かの役に立てるわけでもなく、自分の欲求を主張するだけなのに無条件に可愛がってもらい、世話をしてもらい、愛情を注いでもらえる。それが赤ちゃんという存在です。

「生きる力」をテーマに様々な教育を研究してきた私が、子どもの健全な成長に一番大切だと考えていること。

それは、「自己肯定感」です。自己肯定感・自尊感情は、いわゆる「自信」と混同されることもありますが、ちょっと違います。

自信というと、「〇〇ができるから、僕・私はすごい」「競争で〇番になったから、僕・私はすごい」という、「『能力』に対する自信」が含まれます。
一方で、自己肯定感・自尊感情は、「何ができても、できなくても、自分は自分でいいんだ」という、「『存在』に対する自信」と言われています。

つまり、たとえ赤ちゃんのように何もできなくても、自分の存在は大切なんだ、ということへの自信です。

自己肯定感

0歳から3歳が「心の土台」をつくる大事な時期!しつけ・勉強よりも大切なこと(明橋先生の新刊発売インタビュー1)

この「自己肯定感」がベースにあって、はじめてしつけが身についたり、勉強に興味を持ったりすることができるそうです。

「たとえできないことがあっても、自分は大切な存在なんだ」と思えるからこそ、できることは自分でやろうとしたり、できないことがあっても前向きに頑張ろうという気持ちになれると言えます。

子どもの自己肯定感は、産まれたての赤ちゃんのときから3歳くらいまで、親に無条件で愛情をかけてもらうことによってはぐくまれると言われています。
赤ちゃん返りをするのは、いわば、「自分の存在価値」を確認したい、という気持ちなのではないでしょうか。

子どもの成長は、「甘え」と「自立」の繰り返し

抱きつく子ども

PIXTA

自分が何もできなくても、手をかけて欲しい、関心を向けて欲しいと思う。それは、いわゆる「甘え」です。子どもは、「甘え」と「自立」を何度も繰り返しながら成長していくと言われています。

特に2歳~小学生にかけては、少しずつ自分でできることが増えてきて、親も「もう自分でできるでしょ」「一人でやってみようね」と言いがちなときです。

それは、子ども自身にとって嬉しい一方で、まだまだ「不安」になるときもあります。
それで、「自立」から「甘え」に戻って、親の愛情を求めるという「行ったり来たり」を、何度も繰り返すそうです。

そこに下の子へのヤキモチや、環境の変化からのストレスなどが加わることで、激しい「赤ちゃん返り」が起こるのです。

「甘え」に戻るのは、「まだ自立は不安だから手をかけて欲しい」という、いわば子どものSOSサインです。それを出してくれないと、親も「手がかからない子だわ」「しっかりした子だわ」と勘違いして、どんどん手をかけなくなってしまいがちです。

その結果、もっと大きくなってから「自分は愛情をかけてもらえなかった」と不満を爆発させてしまったり、かえって自立できなくなってしまうこともあるそうです。

赤ちゃん返りに上手に対応する、9つの方法

赤ちゃんにミルクをあげる

PIXTA

では、赤ちゃん返りにはどう対応したらよいのでしょうか。
上手に対応するための9つの方法をご紹介します

1. 怒らない

寝かしつけ

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まるでわざと親を困らせているようにも思える赤ちゃん返りですが、子どもは「困らせようとしている」「恥をかかせようとしている」というわけではありません。
ただ、自分に目を向けて欲しい、構って欲しいという気持ちなのです。

だから、「お兄ちゃん/お姉ちゃんでしょ! 」「そんなことしないの! 」「恥ずかしいでしょ! 」などと怒っても、効果はありません。
それどころか、余計に酷くなったり、心を閉ざしてしまう可能性もあります。

2. 年齢が下だと思って接する

ベビーカーに乗る子ども

PIXTA

子どもが赤ちゃん返りすると、「もう◯歳なのに・・・」と思いがちです。
でも、これまでできていたことを思い出しても、今は仕方ありません。
小学生なら幼稚園児、幼稚園児なら2歳さんなど、実際の年齢よりもずっと下だと思って接してあげるのがおすすめです。

実際は、本当に能力が戻ってしまった訳ではないので、気持ちが落ち着いたら、前できていたことはまたできるようになります。

3. やって欲しがることはできるだけやってあげる

高い高いする親子

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子どもが甘えてくることに対して甘やかすのは、子どもにとってよくないのでは、と思う方も多いと思います。でも、スキンシップなど情緒的な要求に応えてあげるのは、「甘えを受け止める」といって、いくらやっても害にはならない、大切なことだと言われています。

また、身の回りのことなど、自分でできることをやらせるのは大切ですが、「能力的にはできるけど、今は精神的にできない」ということは一時的に助けてあげた方が、精神安定上はよいと言われています。

ただ、自分でやろうとしていることまでやってしまう、お菓子やおもちゃなど物を際限なく与えようとするのは過保護・過干渉であり、あまりよくない甘やかし方だと言われています。

4. スキンシップを増やす

見つめあう母と子ども

PIXTA

言葉がまだ分からない赤ちゃんのとき、一番愛情を感じられるのは、スキンシップ、つまり、抱っこしたり、撫で撫でしたり、キスしたりすることだそうです。

最近では、スキンシップによってオキシトシンというホルモンが分泌され、それが親子の愛着だけでなく、「人への信頼感」をはぐくむということも研究されています。

もう大きいんだから、とは思わずに、できるだけスキンシップを増やしてあげると、「大切にされている」と実感しやすくなるそうです。

5. 「頑張ってるね」と声をかける

子どもを褒める

PIXTA

子どもが赤ちゃん返りしていると、「◯歳なんだからもっと頑張って! 」と言いたくなりますよね。

でも赤ちゃん返りは、これまでその子なりに色んなことを頑張ってきた反動でもあります。
家ではワガママ三昧でも、幼稚園・保育園や学校ではしっかりやろうとしている、ということもあります。

ちょっとしたことにも、「とっても頑張ってるね」「よく頑張ったね」と声をかけてあげると、今の自分を認めてもらったという気持ちになり、気持ちが落ち着きやすいそうです。

6. 「ありがとう」と伝える

食事の準備

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何の役に立たなくても愛してもらいたい! と赤ちゃん返りしている子どもですが、本当に一日寝っ転がっているわけではありませんよね。何かしら自分でやっていたり、手伝ってくれることもあります。

そんなとき、これまでは「当たり前」だと思っていたことにも、「ありがとう」と声をかけてあげることで、子どもの自己肯定感が高まるそうです。

ちょっとしたことに「ありがとう」と言うことは、「ちゃんと見ているよ」というメッセージにもなります。

7. 周囲に助けてもらう

家族集合

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特に下の子がいる場合は、ただでさえ大変なのに、上の子まで赤ちゃん扱いするなんて無理! ということもありますよね。

赤ちゃん返りは、特に「ママ」をターゲットに甘えてくることも多いので(お世話をママにしてもらいたがる、おっぱいを吸おうとするなど)、ママ一人に負担がかかりがちです。
夫はもちろん、両親(子どもにとっての祖父母)や、地域のサポートなども含めて周囲に助けてもらいましょう。

その場合、「ママに構って欲しい! 」と上の子は思っているので、ママは子どもに構ってあげて、それ以外の家事や、下の子のお世話などをお願いすることがおすすめです。
幼稚園・保育園・学校に通っていれば、先生と状況を共有しておくことも大切です。

8. 一人っ子タイム、一人っ子デーをつくる

家族団らん

PIXTA

下の子が産まれると、これまで一人っ子で愛情独り占めだったのが、急にライバルが出現したことになります。それでも子どもは、どうしても愛情を「100%」貰いたがるそうです。

特に下の子が小さいと、上の子をパパや祖父母等に預けて、下の子をママが見る・・・ということになりがちですよね。でも、どれほど他の人に愛情を注いでもらっていても、やっぱり子どもにとっては「ママ」の完全な代わりにはならないそうです。

そんなときは、下の子の方をちょっとの間預けて、「一人っ子タイム」や「一人っ子デー」をつくってあげましょう。その子に100%構ってあげられる時間をもつことで、子どもの欲求が満たされることもあります。

9. ママの時間やストレス解消の方法を持つ

寝転んで本を読む

PIXTA

赤ちゃん返りは大切だと頭では分かっても、「構って構って」アピールがあまりに激しいと、ママも疲れてしまいますよね。ママのストレスが溜まっていると、それが子どもに伝わって、悪循環になってしまうことも。

それを解消するためにも、何か自分が心からリラックスできる時間や方法(趣味など)を持つことがおすすめです。車の中で大声で歌を歌うとか、ピアノで好きな曲を弾くとか、小説や漫画を読むなど、何でもいいのです。

ママがストレスを溜めないことこそが、子どもにもいい影響を与えます。

おわりに

エプロンを引っ張る子ども

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赤ちゃん返りはイヤイヤ期に戻ってしまったようで大変ですが、決して戻ってしまったわけではなく、少しずつ成長している過程であることも感じることができます。
周囲に助けてもらい、色々な工夫をしながら乗り切っていきたいですね。

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公開日:2017.10.2

最終更新日:2024.1.22

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