子どもが幼稚園・保育園を嫌がる理由は?
「幼稚園(保育園)行きたくない! 」
朝、そんな風に子どもがぐずるときがありますよね。
ときには、前の夜から「明日は幼稚園ある?」と聞いてきたり、「行きたくない~」とベソをかいたり・・・
嫌がっているのに行かせるのは可哀想だな・・・とは思うものの、親にも都合や用事があるし、困ってしまう方も多いと思います。
子どもが登園拒否する代表的な理由
子どもが行き渋りや登園拒否をするときは、子どもなりに、何らかの理由があります。
たとえば、代表的な理由は以下のようなものです。
1. 人間関係
お友達と喧嘩した、嫌なことをされた、先生に叱られた、など。
2. 苦手なことや嫌いなこと
園の活動やプログラムなどで、苦手なことや嫌いなことがある、など。
3. 環境の変化
クラス替えがあった、連休明け、季節が変わって園でやることが変わった、など。
4. パパやママに甘えたい
入園したての年少さん、下の子が産まれて甘え足りない、など。
5. 生活リズムの乱れ
寝不足、起きるのがギリギリで心の準備ができていない、など。
6. 体調不良
風邪の引き始めや熱の出始めなど、体調の変化をうまく伝えられない場合。
幼稚園・保育園を嫌がる理由を「解決」してもダメ!?
ただ、こうした理由は、本人もうまく表現できないことがほとんどです。たとえ理由を言ったとしても、それが本当の理由とは限りませんし、それだけではないかもしれません。
周りが無理に理由を聞くと、何か言わなくてはと全く違う理由を答えてしまうかもしれませんし、親が先生に相談しても、結局はっきり分からないという場合も多いもの。
もしも、上記の5.6.あたりの理由が明らかであれば、早寝早起きするようにしたり、体調がよくなれば解決するかもしれません。特に、朝はスロースターターなタイプの子もいるので、ギリギリに起きると機嫌が悪くて、登園も嫌がるという場合は多いようです。
ところが、1~4の理由は、理由を究明して「解決」しようとしても、うまくいかない場合もあります。
「子どもが成長するための壁」とは?
その理由は、「子どもが成長するための壁」にぶつかっているから。
例えば、園に行きたくない理由として、子どもが「◯◯ちゃんが嫌なことをしたから」と答えたとします。そこで親や先生を通して、◯◯ちゃんにそれを伝えてもらったりして、もう嫌なことはしなくなってくれたとします。
それで解決する場合ももちろんありますが、まだモヤモヤしている様子が続くこともあります。
それは、「◯◯ちゃんが問題だった」という訳ではなく、「それまでうまくいっていたのに、うまくいかないことが見つかってしまった」ということが問題で、幼稚園(保育園)に行ったら、またうまくいかないことが起きるかもしれない、と思ってしまっているのです。
一度体験した嫌な気持ちや恐怖は、簡単には消えません。
これは人間の脳の構造によるもので、危険なことを回避するために、危険な目に遭ったことを忘れないようにするため、という説があります。
そのため、一度感じた「嫌な気持ち」を「もう大丈夫」と思えるようになるには、ある程度時間がかかるそうです。
それはいわば、「子どもが成長するための壁」。
壁にぶつかるのはその子の世界が広がろうとしているからで、それまでの適応能力を広げるチャンスでもあります。
無理に乗り越えさせるのは逆効果!
小さな壁なら、日々何らかの形でぶつかって、子ども自身の力で乗り越えていくものですが、
登園を嫌がるほどの壁にぶつかってしまったときは、無理して乗り越えさせようとすることは避けた方がよいこともあります。
親から見たらたいしたことのない壁に見えても、その子自身の体験した嫌な気持ちや不安、恐怖の大きさはなかなか理解できません。それを汲み取らずに、「たいしたことないから行きなさい」と強引に登園させると、子どもの不安はますます大きくなってしまいます。
「無理矢理にでも行かせれば、そのうち慣れる」という考え方もあります。
子どもによってはそうして自力で乗り越えられる子もいますが、子どものタイプによって、乗り越えられないこともあります。
ゆっくり成長するタイプの子は、一度は諦めたとしてもなかなか嫌な気持ちが消えず、引っ込み思案になったり、親子の信頼関係を壊すことにも繋がってしまうかもしれません。
「我慢も大事」とは言いますが、幼児期の年齢では、怖い、寂しい、不安などの「情緒的な欲求」に対して「我慢」をさせすぎると、自己肯定感が下がってしまうそうです。
(お菓子を食べたい、おもちゃが欲しいなどの「物質的な欲求」に対する我慢は別です)
幼稚園・保育園を嫌がったら、休ませる? 休ませない?
じゃあ、登園を嫌がったら休ませないといけないの? と思ってしまいますよね。
登園拒否で一番悩むのは、「休ませるかどうか」の判断ではないでしょうか。
結論としては、休ませられるなら休ませてもいいですし、どうしても休ませられないなら、それはそれでひとつの方法です。
休ませる・休ませないの前に一番大切なのは、「子どもの気持ちを、どれだけ受け入れてあげられるか」ということです。
子どもに共感し、甘えを受け止めること
子どもが壁を乗り越えるには、「時間」と「安心できる環境」が必要です。
大人でも、何かに挫折してくじけたときは、ゆっくり休んだり、気持ちを慰めるものを必要ですよね。子どもはそのセルフコントロールができないので、親の助けが必要です。
実際の理由はよく分からなくても、その子なりの「嫌な気持ち」や「恐怖」を思いやって、共感してあげることが大切です。
具体的には、本人が理由らしきことを言えば「そうなんだ、それは嫌だったね」とか、「それはつらかったね」と共感してあげること。理由を言わない場合は、「何か嫌な(つらい)ことがあったんだね」と心から言ってあげましょう。
そう言ってもらって安心すると、子どもは甘えたがります。
抱っこやスキンシップを求めたり、「赤ちゃん返り」することもあります。親から「安心感」をもらうことで、自分の気持ちを慰めたり、壁を乗り越えるために必要なエネルギーを充電するのです。
スキンシップなどの情緒的な「甘え」をしてきたときは、いくら甘えさせても、子どもにとってマイナスになることはないと言われています。しっかり共感して受け入れてもらい、「安心感」を得ることができれば、自分からまた新しい世界に入っていく気持ちになれます。
子どもは、こうしてくっついたり離れたりを繰り返しながら成長していき、だんだんと壁を乗り越えられるようになっていきます。
それにどれくらい「時間」がかかるかは子どもにもよりますし、その子が成長・発達のどの時点にいるかや、親・先生の受け入れ方、支え方によっても異なります。
休ませてあげられる場合
もし子どもがどうしても嫌がって、親の都合としても休ませてあげられるときは、休ませてあげるのも一つの手です。
子どもは、決して怠けたり楽をしようとしている訳ではありません。そう見えたとしても、それはこれまで、その子なりに頑張ってきた反動だったりします。
そのときに大切なのは、ただ休ませるのではなく、子どもの甘えたい気持ちを受け止めてあげて、たっぷり甘えさせてあげることです。甘えさせるといっても、お菓子を好きなだけあげるとか、好きなおもちゃを買ってあげる必要はありません。
必要なのは「安心感」です。
話をしたそうならゆっくり話を聞いてあげる。また、一緒に遊んであげたり、その子のことを気にかけながら一緒に過ごしてあげることが大切です。
怠け癖がつくとか、休み癖がつくのでは・・・という心配もあるかもしれませんが、ゆっくり休みを取ったほうが、登園拒否が短期間で終わるという説もあります。
「行かせなくては!! 」「休ませてはいけない! 」と親が思い詰めていたり、休ませても「休ませてしまった・・・」と不安になっていると、子どももそれを察知して、ますます不安になってしまいます。
長期的にみれば、ときどき休ませてあげて、子どもの「安心感」を満たしてあげれば、また自分から行こうという気持ちになりやすいそうです。
休ませるのは難しいとき
「休ませないといけない」かといえば、そういうわけではありません。
特に保育園に通わせている場合、休ませるのはどうしても難しいときもありますよね。
大切なのは、子どもをできるだけ「安心」させてあげることです。
大人が不安になったり、過度な罪悪感を持ったり動揺したりすると、子どもにも不安が伝わってしまいます。かといって、「そんなの大したことないから行きなさい」と突き放すのではなく、子どもの不安やつらさは受け止めた上で、「とってもつらいんだね。でも、ママも先生も味方だから、安心していいんだよ」と伝わるように心がけることが、大切なのではないでしょうか。
次の章では、休めないときの対応についてご紹介します。
幼稚園・保育園を嫌がるけど休めないときの対応5つ
行き渋りや登園拒否があっても、どうしても休ませてあげられないときの対応について、5つご紹介します。
1. 先生と連携する
子どもにとって大切なのは、幼稚園・保育園にも、親と同じように「安心できる味方」がいるということです。行き渋りや登園拒否があったら、幼稚園・保育園の先生に状況を伝えておくことが大切です。
例えば、「お昼寝が嫌」「リトミックが嫌」「だから保育園行きたくない」と行き渋りをしている場合、連絡帳や口頭で先生にそのことをお伝えして、「先生には言ってあるから大丈夫だよ」「嫌なら見ているだけでもいいって先生も言ってるよ」と伝えてみましょう。
先生からも、「大丈夫だよ、無理してやらなくてもいいよ」と言ってもらうと、少しは安心できるかもしれません。
行き渋ったとしても、園に行ってしまえばちゃんとお昼寝できたり、リトミックも楽しんでいたりするもの。ただ、「嫌な気持ちをママも先生も受け入れてくれる」という安心感が欲しかったのかもしれません。
2. 笑顔で送り出す
登園のときは、不安な顔をせず、笑顔で送り出してあげることが大切です。
これも先生と連携して、子どもを先生に託したら、親は名残惜しく残らずに、笑顔で手を振ってさっと園を出た方が、子どもも気持ちを切り替えやすい場合があります。
先生に抱っこしてもらう必要があるときは、先生が手の空きやすい時間帯を狙って行くなどの工夫も必要かもしれません。朝のお別れ後にどんな様子だったか、連絡帳などで先生に聞いてみるとよいでしょう。
お迎えのときも、「ごめんね」とは言わずに、「頑張ったね、ありがとうね」と伝えてあげると、子どもも気持ちが前向きになれます。
3. 気持ちを切り替える「儀式」をする
子どもによっては、気持ちを切り替える「儀式」が手助けになることもあります。
たとえば、入園してから1年間、「靴を脱がせてあげて、上靴を履かせてあげる」という行為を毎日繰り返したことで、ようやく園に慣れることができたり、通常は玄関で行ってらっしゃいするところを、毎日ママが抱っこして2階の保育室まで送ってあげたところ、一年後に急にあっさり自分から離れられるようになった、なんてこともあります。
これくらい自分でできるんだから、やらせなくては・・・と思いがちですが、安心感が欲しい、甘えたいという気持ちが子どもにあるときは、能力的にはできることも、精神的にできなくなってしまいます。
そんなときは、しつけはちょっと後回しにして、甘えさせてあげて、安心させてあげた方がよいこともあります。
子どもによって、気持ちを切り替えたり安心できる「儀式」は色々あるもの。その子が喜ぶことを試してみましょう。
4. お休みの日は思いっきり関わる
子どもが帰ってきてからやお休みの日は、子どもの話を聞いてあげる、子どもが好きなことを一緒にする、スキンシップを増やすなど、意識して思いっきり関わってあげましょう。
たとえば兄弟姉妹がいる子の場合、どうしても構ってあげにくく、寂しさを抱えていることもあるかもしれません。そんなときは、他の子どもは預けて、「一日一人っ子」状態にしてたっぷり構ってあげましょう。
「あなたのことも大好きなんだよ」と伝わるようにしてあげると、子どもも気持ちが安定します。
5. 周囲に相談する
子どもが登園を嫌がると、親としては不安になりますし、ストレスも溜まりますよね。
いくら、不安を子どもに伝えないようにとは言っても、親も他に抱えていることがあったりすると、うまく対応できないことがあるのも当然だと思います。
子どもの気持ちは分かってあげたくても、長引いてきたりすると、親の方もつらくなります。
そんな時、じっくり話を聞いてくれたり、何らかのアドバイスをくれたり、時には代わりに子どもの面倒をみてくれる人が、親にも必要です。
これくらいのことで・・・と思わずに、幼稚園・保育園の先生はもちろん、自分のパートナーや親、知人・友人、自治体の子育てセンターの相談窓口など、自分が安心できそうな人に相談してみましょう。自分の重荷を減らすことは、とても大切です。
参考:学校法人創造の森学園 札幌トモエ幼稚園「この問題どう考える」
幼稚園・保育園を嫌がるときの注意点は?
幼稚園・保育園を嫌がったときの対応をお伝えしてきましたが、ちょっと注意した方がよいときもあります。
それは、「体調不良」と「園・先生の対応」です。
体調不良があるとき
子どもが幼稚園・保育園を嫌がっているとき、ストレスによる体調不良が起こる場合があります。
・吐く
・下痢・便秘をする
・お腹が痛い
・夜泣きする・おねしょする
・食欲がなくなる
登園拒否の上に、こうした症状が起こったときは、ストレスが大きいサインかもしれません。その場合は、ゆっくり休ませてあげた方がよいこともあります。
また、お熱が出たときは当然休みにはなりますが、その原因にストレスもあるかもしれない・・・と、少し注意してあげましょう。免疫力が下がるのはストレスが原因の場合もあります。
園や先生の対応が合わないとき
幼稚園・保育園で色々な壁にぶつかったときに、頼れるパパ・ママがいない園で子どもが頼れるのは先生しかいません。
でも、園や先生の教育方針や対応の仕方が、どうもこの子に合わないのでは・・・ということがあれば、最後の手段として「転園」を考えるのも一つの手です。
成長の過程で「壁」にぶつかることは仕方なく、それを避けてもきりがないのですが、ぶつかったときの「サポートの仕方」がその子に合っているかは大切です。
子どもの適応能力は大人よりも高いので、多くの子どもは与えられた環境に適応しようとします。しかし、子どもにも生まれつきの個性やペースがあって、どうしても合わない、という場合もあります。
また、親自身が先生や周囲と合わなくて、どうしてもストレス、ということもあります。
それが子どもに伝わり、子どもが不安になる場合もあります。
通ってみて初めて分かることがあるのは、仕方のないことです。
園によって教育方針は違ったりするので、「ここに通い続けなきゃ」と思い詰めずに、他のところに目を向けてみてもよいかもしれません。
おわりに
子どもが幼稚園・保育園を嫌がるときの理由や、そんなときの対応・対処法、注意点や他の選択肢などについてご紹介しました。
ちょっとしたことがきっかけで、行き渋りが始まることはよくあります。
親が一人で抱え込まず、色々な人に相談したり、子どもの様子をよく見ながら対応していけたらよいですね。