幼稚園と保育園、どんな違いがあるの?
同じ「子どもを預ける施設」である、幼稚園と保育園。
「両親が働いている場合は保育園、そうでなければ幼稚園」、そういう考え方もありますが、最近は幼稚園でも延長保育を行い、働く両親の子どもを預かるケースも増えてきました。
確かに、共通している点もたくさんありますが、実は根本的に違う点もあるんだとか。
幼稚園と保育園の違いや、選び方のポイントについて、教育研究家の征矢里沙さんにお話を伺いました。
幼稚園と保育園、根本的な違いとは?
私自身は、諸事情により、上の子を幼稚園に、下の子を保育園に通わせています。
実際通わせて分かった点も含めて、なるべく分かりやすくご紹介していきます。
「幼稚園」は、「教育施設」です。目的は「幼児の心身の発達」をサポートすることです。
「学校教育法」に基づき「文部科学省」が管轄。
いわば、幼稚園教諭が先生となって、子どもを教育してくれる「小さな学校」です。
入れる年齢は、ある程度身の回りのことができるようになった3歳~5歳です。
一方「保育園」は、「児童福祉施設」です。親が働いているなど、「保育に欠ける子ども」をケアすることが目的です。
こちらは「児童福祉法」に基づき、「厚生労働省」が管轄しています。
いわば、保育士が親代わりとなって、子どもを保育してくれる「大きなおうち」です。
入れる年齢は、産休が明ける0歳~5歳です。
根本的に、ここが大きな違いです。
【幼稚園と保育園の違い】それぞれどんな種類がある?
幼稚園と保育園は、それぞれいくつかの種類があります。
幼稚園の種類
幼稚園には、主に、
〇公立幼稚園
〇私立幼稚園
〇認可外の園
の3つの種類があります。
〇「公立」は、国や地方自治体や運営するもの。
〇「私立」は、学校法人(又は宗教法人)が運営するもの。
〇「認可外」は、それ以外の個人や団体が運営するものです。
保育園の種類
保育園には、主に
〇認可保育園
〇認定こども園
〇認証保育園(自治体により呼び名が異なります)
〇企業主導型保育施設
〇認可外の園
の5つの種類があります。
〇「認可保育園」・「認定こども園」は、国が定めた基準をクリアして、地方自治体の「認可」を受けた保育園です。
この中に公立・私立があり、公立は国や地方自治体が運営、私立は社会福祉法人(又は宗教法人)が運営しています。
〇「認証保育園」は、東京都が独自に定めた基準をクリアして、「認証」を受けた保育園です。
(こうした独自の認証(認定)を行う保育所制度の詳細や呼称は、地域によって異なります。この記事では、「東京都の認証保育所」についてご説明します)
主に私立で、社会福祉法人や株式会社が運営しています。
〇「企業主導型保育施設」は、国が定めた基準をクリアして、地方自治体に「届け出」をすれば、助成が受けられるという新しい仕組みです。
主に株式会社が運営しています。
〇「認可外」は、それ以外の個人や団体が運営するものです。
幼稚園と保育園、また種類によって、それぞれで「入れる人」と「入り方」が違います。
分かりやすくご紹介していきます。
【幼稚園と保育園の違い】幼稚園に「入れる人」「入り方」は?
幼稚園は学校と同じ「教育施設」なので、幼児教育を受けさせたい人は誰でも希望することができます。
ただし義務教育ではないので、入れずに家庭で過ごすことも自由です。
幼稚園は、各園が入園審査をする
実際に希望の園に入れるかどうかは、「その幼稚園の審査」によります。
これは、公立でも私立でも認可外でも、基本的に同じです。
審査のプロセスや基準は各幼稚園が決めることで、園によって違います。
競争率や人気度も、園によって違います。
入園したい園があったら、おおよそ以下の流れになります。
1. それぞれの幼稚園で「願書」を購入し、各園に提出
2. 面接・面談や試験等を受ける
3. 合格したら入園できる
つまり幼稚園に「入れる人」の条件その1は、「希望の幼稚園の審査に合格した人」です。
幼稚園にかかる費用は?
入園の際は、入園料と保育料を、家庭から幼稚園に直接支払います。
保育料の他に、入園料や制服代・備品代など諸経費がかかる場合もあります。
文科省の学習費調査(平成28年度)によれば、幼稚園における学校教育費(年間)は、公立幼稚園120,546円、私立幼稚園318,763円でした。(給食費や学校外活動費(習い事、補助学習費など)は含まず)
私立幼稚園は公立幼稚園の約2.5倍となっています。
幼稚園に「入れる人」の条件その2は、「希望の幼稚園にかかる費用が払える人」です。
参考:文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」
【幼稚園と保育園の違い】保育園に「入れる人」と「入り方」は?
保育園は、家庭で保育ができない事情のある子どもを預かる施設です。
両親が働いている他、病気や介護、産前産後など、様々な事情で「保育に欠ける子ども」がいる場合に、入園を希望することができます。
入り方は、「認可」か「認証」か「認可外」かによって違います。
認可保育園は、自治体が間に入る
「認可保育園」の場合、入れるかどうかは「地方自治体の調整」によります。
各保育園での審査はなく、入園決定まで直接のやり取りがほぼないのが、幼稚園との大きな違いです。
なお保育園の場合、「認可保育園」というくくりの中に「公立」と「私立」がありますが、認可である限り、入園プロセスはどちらも同じです。
認可保育園の場合、入園するためには、おおよそ以下の流れになります。
1. 「保育に欠ける」状況と、入りたい認可保育園の希望順位を、自治体に申請
2. 自治体の基準によって、状況を点数化
3. 点数の高い人から順に、希望順位に応じて、入園可否を調整
4. どの園に入園が決定したか、又は入園不可能かの通知が来る
現在、待機児童問題が言われているように、保育に欠ける状況でも、空き枠がなくて入れない場合もあります。その場合、空きが出るまで待って(待機)、再度申請することになります。
入園の際は、家庭の収入に応じて保育料が決められ、自治体に支払います。差額は補助金で補われます(園によっては、課外活動費など多少の諸経費を直接徴収することもあります)。
認証保育園の場合
「認証保育園」の場合は、各園で入園審査をするため、説明会や面談等も各園で行います。
ただし、基本的な審査基準は、東京都が定めたものに従っています。
認可と認証の違いは、認証の方が、(東京都の場合)認定基準が緩やかなことです。
認可保育園は園舎や園庭にかなりの広さが必要ですが、認証保育園は認可保育園に比べ比較的狭いスペースだったり、園庭がなくても開園できます。たとえば駅前のビルに認証保育園が入っていることもあり、立地が便利なことも多いです。
一方、補助金の額は認証の方が低いので、保育料は認証の方が高くなります。
現実的には、認可保育園の空き枠がなくて入れなかった方が認証保育園に入ることが多いのですが、教育内容や立地の利便性で選ぶ方もいます。
なお、平成28年度から始まった「企業主導型保育施設」(事業所内の託児所などを補助する制度)についても、入り方については、おおよそ同じです。
認可外の保育園の場合
「認可外の保育園」の場合は、幼稚園と同じように、各園の審査で入園できます。
審査基準も、自治体の定めは関係なく、各園の判断でOKなら入園可能です。
認可外は、自治体の認定を受けていないので、施設や保育内容に縛りがありません(認可外保育施設としての基準はありますので、最低限の安全性はチェックされています)。
また、補助金も受けていないので、保育料は認証保育園と同程度か、それ以上に高くなります。
認可と認証を合わせても、保育園の空き枠が足りないことも多い現在、認可外の保育施設も、保育を必要とする家庭にとって大切な存在です。
保育園にかかる費用は?
認可保育園の場合、収入によって保育料の負担金額が0円~10万円前後と異なります。
厚生労働省の全国調査では世帯の児童一人あたりの月額保育料は、2万円以上~3万円未満の世帯が最も多いようです。
認証、企業主導型、認可外の場合は、保育料は施設によって異なります。
ただ、「行政の補助金が少ない」または「全くない」ため、利用者の負担額は、認可保育園の倍以上になることが多いようです。
参考:厚生労働省「平成24年 地域児童福祉事業等調査の概況」
【幼稚園と保育園の違い】「認定こども園」は幼稚園+認可保育園
平成18年から始まった「認定こども園」は、一言でいえば、幼稚園と認可保育園が、一つの施設で行われているものです。
保育園を増やすために、既にある幼稚園の施設を使って、保育園も開園できるようにした、というのがその趣旨です。
入れる人や入り方は、「幼稚園部分」と「認可保育園部分」で異なるので注意が必要です。
【幼稚園と保育園の違い】内容や環境の違いは?
ここまで、制度面の違いを見てきました。
次に、教育・保育の内容や、環境などの違いについてご紹介します。
幼稚園は「教育」、保育園は「生活」が基本
幼稚園は、3歳からの幼児教育をサポートするための施設なので、預かり時間は9:00~14:00頃までが多いです。
比較的短い時間の中で、自由に遊ぶ時間と、例えば「体育や学習や音楽」など、何らかのプログラムに取り組む時間があります。
保育園は、仕事等で忙しい家庭をサポートするための施設なので、7:30~18:00頃まで預けることができます(場合によってさらに延長も可能)。
時間が長いので、おやつがあったりお昼寝があったりと、子どもの「生活の場」という側面が強いです。0歳から入るということもあり、「食べる、寝る、遊ぶ」といった、子どもが健康な生活を送れるようにすることが、第一目的とされています。
ただし、2・3歳くらいからは、幼稚園のように何らかの教育プログラムも行っている園も多いです。
幼稚園は「教育」、保育園は「生活」が基本
幼稚園の場合、何かと「親と一緒に行う」こと・行事などが、比較的多いです。
時間の融通が利く親が多いこともあり、行事の準備に親が参加したり、昼食が給食ではなくお弁当だったり、幼稚園で使うカバンなどを手作りするよう指定があったり、バザーに出品するために手作りをしたり・・・。
また、親同士で集まって交流したりランチしたり、といった機会も、幼稚園の方が多くなります。
親の時間が取られる反面、親同士で交流ができたり、一緒に子育てをするコミュニティとして結束が固まるという面もあります。
一方、保育園は、忙しい親をサポートするための施設なので、なるべく親の時間を割かなくてよいよう配慮されていることが多いです。「親の代わりに」やってくれる部分が比較的多いと言えます。
昼食は基本的に給食です。また預かり時間が長いので、懇親会や行事等を除いては、親同士の集まりや交流は少なめです。
何かトラブルがあったときに困らないよう、普段から意識してあいさつや声がけをしたり、懇親会等で親睦を深めるとよいかもしれません。
幼稚園は「学校に付属」、保育園は「職場に付属」
幼稚園は教育施設なので、私立学校に付属していることもあります。
いわゆる有名私立幼稚園などは、幼稚園~大学の一環教育を行っていることもあります。
あるいは、「この私立小学校に入るには、この幼稚園に行くとよい」ということもあったりします。
一方、保育園は働く親のための施設なので、企業や病院など職場に開設していることもあります。
前述した企業主導型保育施設は、「こうした託児所を企業が開設する場合に補助をする」という制度で、これから増えていくと考えられます。
幼稚園は園バスがあることも
幼稚園は、教育やサービスの内容で選ぶ人も多く、色々な地域から人が集まります。
街中で走っている「園バス」は、幼稚園にしかないものです。色々な地域から通えるように、園バスを走らせるわけです。
もちろん、園バスがない幼稚園もあります。
【幼稚園と保育園の違い】共通点、似ている点は?
これまで色々と違いを述べてきましたが、共通点や似ている点もたくさんあります。
子どもへの考え方・接し方
「子どもを育てる」という点では、幼稚園も保育園も同じです。
先生達も、幼稚園教諭と保育士免許と両方を取得している方が7割以上いるそうです。
「子どもが好き」「子どもに接する仕事をしたい」ということから選ぶ方が多いからではないでしょうか。
出典:文部科学省「幼稚園教諭免許・保育士資格の併有状況」
子どもについての考え方や接し方は、幼稚園・保育園で違うというよりも、それぞれの園の方針によって違うところが多いと思います。
教育・保育の内容は、色々な園を見学して選ぶとよいですね。
親へのサポート
現在は働く親が増えているので、幼稚園でも働く親に対応するサービスが増えています。
早朝保育や延長保育などで、預かり時間を長くしてくれる園が多くあります(ただし別料金です)。
幼稚園へ通う子の親の中でも、働いている方、いない方、両方いることが当たり前になりつつあるようです。
一方、保育園でも、働いていない親に対するサービスもあります。
「一時保育」の制度では、親の就労等の状況に関わらず子どもを預かってくれます。親子クラスや妊婦さんのためのクラスを開いていることもあります。
仕事に就いていなくても、こうした制度を利用することもできます。
どちらの施設も、現代の親の課題に応えようと、色々と考えながらサポートしてくれていると感じます。
おわりに
幼稚園と保育園について、入れる人と入り方の違い、内容や環境の違い、そして共通点や似ている点についてご紹介しました。
最初は違いが分からないかもしれませんが、よく見ていくと全く違う点もたくさんありますね。
また、それぞれの園によっても、教育方針やサービス内容がかなり違います。
自分の家庭にぴったりの園と出会えるといいですね。