【寝かしつけのコツの前に】子どもはどうして早く寝る必要があるの?
睡眠には、身体の疲れを回復させることはもちろん、脳や体を『成長させる』働きがあります。
脳の海馬という部位は、睡眠中に活性化し、昼間経験したことを知識として蓄積します。
この海馬の働きを助けるなど、子どもの成長に欠かせない『メラトニン』いう脳内物質や、脳・骨・筋肉の成長を促す『成長ホルモン』は、眠っている間に活発に分泌されます。
夜ふかしして寝る時間が遅くなってしまうと、これらの脳内物質の分泌に影響を与えてしまうのです。
家事やママの自由な時間の確保のためにも、子どもが早く寝てくれると助かりますよね。
ママのためにも、子どものためにも大切な、スムーズな寝かしつけの方法をお伝えします。
子どもの寝かしつけのコツには「生活リズム」が重要! その科学的な理由とは
一番基本となるのが、『生活リズム』の見直しです。
朝起きる時間が遅いと、どんな技やアイテムを駆使しても、早く寝ることはなかなかできません。
それは、単に身体が疲れていないからというだけではなく、実は『セロトニン』という脳内ホルモンが関係しています。セロトニンは朝起きると分泌され始め、脳の覚醒を促したり、心のバランスを整えてくれると言われるホルモンです。
一方、睡眠を促すホルモンである『メラトニン』は、実はこのセロトニンを材料にしています。ですので、昼にセロトニン分泌を増やすような活動をすることが、夜眠くなるためには必要なのです。
ただし・・・生後3・4ヵ月くらいまでの赤ちゃんは、ほとんど昼と夜の区別がなく、生活リズムを整えるのはまだ難しいです。赤ちゃんに合わせてママも睡眠を取るのがおすすめです。3ヵ月を過ぎたら徐々にリズムが出来てきますので、焦る必要はありません。
科学的観点から見た、子どもの寝かしつけのための朝~昼の過ごし方のコツ
セロトニンとメラトニンの分泌、という科学的観点から見た寝かしつけのコツは、以下の4つです。
その1 朝、同じ時間に起こす
寝かしつけがうまくいかなくて、寝る時間がバラバラでも、朝は毎日決まった時間に起こしてみましょう。繰り返すうちに、だんだん眠くなる時間も決まってきます。
その2 日光を浴びさせる
セロトニンの分泌は、眠っている間にはなく、朝起きたときから始まります。
朝はカーテンを開けて、まず日光を浴びさせてあげることで、脳が目覚めやすくなります。
もちろん、昼間にも日の光を浴びることは大切です。晴れた日には、なるべく外で遊ぶ時間を作るとよいでしょう。セロトニンの分泌という観点から言うと、雨の日も外でお散歩するのが理想です。
赤ちゃんなら、窓際で日光浴もおすすめ。日焼けのし過ぎには注意して下さいね。
その3 リズミカルな運動をする
セロトニンは、「リズム運動」によって分泌が促されると言われています。
夏休みに朝ラジオ体操をするのは、とても理にかなっているのですね。
では、そういう体操やダンスをしないとだめなのか・・・と身構える必要はありません。
「歩くこと」も、このリズム運動の一つと言われています。外で遊んでいるだけで、歩いたり走ったりするもの。ゆったりお散歩をするのもいいですね。
その4 よく噛んで食べさせる
もぐもぐ噛む行為も、リズミカルな運動の一つとなり、セロトニンの分泌を促すと言われています。
朝ごはんをしっかり食べさせれば、目覚めもスムーズになります。
赤ちゃんでも、おっぱいや哺乳瓶やおしゃぶりをもぐもぐすることで効果があるそうです。しっかり噛めるようになったら、噛みごたえのある食材を使うことも大切です。
参考:早寝早起き朝ごはん 全国協議会
夜の寝かしつけの天敵!? 子どもの「お昼寝」との付き合い方のコツ
生活リズムを作る上で、意外と難しいのが「お昼寝」。
お昼寝と上手に付き合うことで、夜もスムーズに眠りやすくなります。
その5 お昼寝をさせすぎない
お昼寝してくれるとついほっとして、いつまでも寝ていて欲しい・・・と思いますよね。ただ、お昼寝をしすぎると、夜寝る時間が遅くなる場合があります。
これは個人差があり、昼寝をいっぱいしても夜は決まった時間に寝るという子もいます。
でも、そうでない場合は、お昼寝時間の見直しが必要です。
その6 夜と昼の合計睡眠時間を見直す
では、お昼寝は何分ならいいの? と思いますよね。
2016年に、米国睡眠医学会が”Journal of Clinical Sleep Medicine" に、乳児~高校生向けの推奨睡眠時間のガイドラインを次のように発表しています。
生後4か月まで 不定(個人差が大きい)
生後4~12ヶ月 12~16時間(昼寝を含む)
1~2歳 11~14時間(昼寝を含む)
3~5歳 10~13時間(昼寝を含む)
たとえば、夜20:00に寝かせて、朝7:00に起こしたいとしたら、お昼寝の時間は、各年齢の推奨時間から11時間を差し引いた時間が目安になります。
逆に、保育園や幼稚園でお昼寝していたら、その時間を推奨時間から差し引いたのが、夜に寝かせる時間の目安です。
幅があるのは、個人差があるからです。
30分とか、1時間半とか、色々な説がありますが、その子が無理なく、すっきり寝て起きられる時間を見つけてみて下さい。
その7 お昼寝の時間帯を見直す
お昼寝の時間が長すぎなかったとしても、夕方近くに寝てしまえば、夜眠るのは遅くなってしまいます。
多くの保育園では、お昼ごはんの後にお昼寝の時間を作っています。
12時~14時くらいが、寝始めるベストなタイミングです。また、1歳以上であれば、遅くても15時くらいには切り上げるとよいでしょう。
お昼寝の後も、日が明るいうちは、おやつを食べたり遊んだりすることで、またセロトニンの分泌を促すことが大切です。
夕方~夜にかけた、子どもの寝かしつけのための準備のコツ
朝早く起き、昼間に光を浴びて遊べば、自然と眠くなっていくはずです。
夕方から夜にかけて、心と身体の準備をしていくためのコツをお伝えします。
その8 興奮させるような遊びや運動をしない
「その3」と逆で、夕方から夜にかけては、バタバタ走り回るような遊びをするのは避けましょう。
パパが帰ってきてはしゃいでしまったり、眠たくて逆にテンションが上がったりすることもありますが、「今は遊ぶ時間じゃないよ」ときちんと伝えましょう。
身体が興奮して眠れなくなる、とよく言いますが、セロトニンの分泌の観点からも避けたいところです。
その9 テレビやスマホなどを見せない
夕方以降の時間に、テレビやスマホはなるべく見せないようにしましょう。
番組の内容で興奮してしまうから・・・ということもありますが、テレビやスマホの光に含まれる「ブルーライト」に問題があります。
実はこのブルーライトは、自然の日光にも含まれていて、身体を目覚めさせるセロトニンの分泌を促します。一方で、睡眠を促すメラトニンの分泌を抑制してしまうのです。
そのため、朝~昼ならまだしも、夕方~夜にブルーライトの刺激を受けると、日光を浴びたのと似た状態になってしまいます。
「子どもの寝かしつけ動画」などもよくありますが、この観点からすると、あまりおすすめできません。
その10 明かりを暗くする
10と似ていますが、寝る時間は明かりを暗くすることで、子どもの身体と心を「おやすみモード」にすることが大切です。
寝る時間になったら、お部屋の電気を消すのはもちろん、他の部屋の電気もなるべく消していって、おうち全体を「おやすみモード」にしましょう。
ドアやカーテンもきちんと閉めて、余分な光が目に入らないようにします。
また、夜中にオムツ替えをするためにパッと電気をつけると、子どもの目も覚めてしまいます。
紙おむつなら、一晩漏れないサイズのオムツを使ったり、布おむつなら、小さな明かりやバケツをそばに用意しておくとよいでしょう。
夜、寝室に行ってからの子どもの寝かしつけのコツ
さあ、いよいよ眠る時間です。
寝室に行ってから、眠りにつくまでのコツをお伝えします。
その11 快適な室内環境を作っておく
寝室が暑すぎたり、寒すぎたりすると、うまく寝つけません。
また、眠る直前に限って、「水が飲みたい」とか「虫さされが痒い」とか言い出したりするものです。
ママがイライラしないためにも、あらかじめ寝室を冷やしたり暖めたりしておき、必要なものも寝室に準備しておきましょう。
逆に、おもちゃなど気が散るものは、寝室には置かないことがおすすめです。どうしても置きたい場合は、箱に入れたり布をかけるなど、目に入らないようにしましょう。
その12 「寝ることはよいこと」というイメージを持たせる
「早く寝てよ・・・とイライラしていると子どもは寝ない」、そんな話を聞いたことはありませんか?
そんなこと言われても・・・とは思うのですが、子どもが「寝ることはよいこと」だ、というイメージを持っているかが大切なのではないでしょうか。
一例ですが、私の子どもは、前の保育園でお昼寝の時間が大嫌いでした。「寝ないとダメだよ」「静かにしなさい」と言われるのが嫌だったようです。
ところが別の幼稚園に行ったら、皆と一緒に素直にお昼寝をしているそうなのです。
驚いて先生に聞いたところ、「『眠ると、お空の上でいい力をたくさんもらえるんだよ』というイメージを子どもに持たせるようにしています」とのこと。目から鱗でした。
「早く寝なさい!」と叱ると、子どもは寝かしつけられることがストレスになってしまいます。
まずは、「夜にぐっすり眠ると大きくなれるんだよ」「ねんねの国で、ゆっくり遊んできてね」など、子どもにも「眠るのって大事なんだ、いいことなんだ」というイメージを持たせてあげることが大切です。
その13 トントンやマッサージをする
眠るときにトントン・・・と背中や胸を規則的に軽く叩いてあげると、子どもが寝付きやすくなる場合があります。
また、背中、手、足などをさすってあげるマッサージも、子どもの心を落ち着かせる効果があります。
ツボ押しなどの方法もありますが、まずは子どもの反応を見ながら、気持ちよさそうなところを軽くさすってあげることから試してみましょう。
特に足が冷えていると、子どもはなかなか寝つけないので、足を温めるようにさすってあげるのがおすすめです。
余裕があれば、いい香りのオイルでマッサージをしてあげたりすると、より効果的です。
その14 安心アイテムを用意する
「これがあれば眠れる」という、お決まりのアイテムがあることで安心する子もいます。
たとえば、毛布や、タオルや、ぬいぐるみなど、手触りがよく柔らかいものが好きな子が多いようです。
夜に目が覚めても、安心アイテムがそばにあれば、また寝ついてくれる場合もあります。
ただ、なくしたりすると大騒動なので、気をつける必要があります。
その15 毎日繰り返し行う、寝る前の「儀式」を作る
他にも、色々な寝かしつけ方法が言われていますよね。
音楽をかける、子守唄を歌う、絵本を読む、お話をする、などなど。
一番大切なことは、これらを、「毎日繰り返しやること」です。音楽なら、毎日同じ音楽。子守唄なら、同じ歌。絵本やお話なら、毎日同じものでよいのです。
「おやすみロジャー」という、子どもが眠れる本が話題になりましたが、「眠り」がテーマの歌やお話もいいですね。ロジャーの本からも分かる通り、文章のテンポがよく、繰り返しがあり、適度に長いものがよいと思います。昔話にも、そのようなお話が多いです。「3匹のやぎのがらがらどん」「大きなかぶ」「3匹のくま」など。
うちの上の子には、かれこれ二年以上、毎晩「桃太郎」のお話をしています。毎晩話せば自分も暗記できるので、電気を消してから空で話しています。
ママと子どもが心地よいものなら、何でもいいと思います。
何にせよ、毎日繰り返しやることで「儀式」のようにし、「これをやると眠たくなる」という回路を脳の中に作っていくことが大切です。
おわりに
赤ちゃん・子どもがすっと眠る15のコツをご紹介しました。
このテクさえ使えば絶対! ということよりも、毎日の生活リズム、毎日の習慣をつくっていくことが一番大切です。
それがつくれるまではひと苦労ですが、長い目で見ても、家族皆で早寝早起きの生活リズムを作っていくことは、大きなメリットがあります。
家族で協力しながら頑張っていきたいですね。