【有名料理人に聞く】おいしいあさりの見分け方
食材すべてに言えることですが、おいしい食材を見つけるには鮮度を見極めることが大事です。
まず、新鮮なあさりは調理の段階で「生きている」ことが重要です。あさり料理の下準備である砂抜きも、あさり自身が呼吸をする仕組みを利用して行うため、あさりが生きていなければ砂抜きができません。
また、年中見かけるあさりですが、旬がいつかご存知ですか? あさりは春から初夏にかけて産卵期を迎えます。産卵期を迎えたあさりは身が膨らみおいしくなります。関東以南では秋にも産卵期となるため、9~10月も旬といえます。
おいしい時期に、鮮度のよいものを選ぶことが大切です。
数々の有名和食店・みちば和食で料理長を歴任した、舘野雄二朗さんから教えていただいた、新鮮でおいしい、生きているあさりを見分ける方法や、あさりの砂抜きの基本やコツをご紹介します。
【見分け方1】呼吸器官と口の開きを確認!
海水に浸かっている状態で呼吸管が出ているあさりは、生きていて元気なあさりです。一方で、お店に陳列されている状態で口が常にぱっくりと開いているあさりは、すでに死んでいます。
呼吸器官が貝の口から出ていたり、口が閉じぎみだったりするあさりを選びましょう。
【見分け方2】貝同士を軽くぶつける
舘野さんによると、生きているあさりは、貝同士を軽くぶつけてみると見分けられるそうです。
新鮮なあさりはぶつけた時に「ゴツッ」と鈍く低い音がします。あさりは生きている間は身が詰まっていて、なおかつ貝がぎゅっと閉まっているので、ぶつけたときに音が響かず鈍い音がするのです。一方、死んでしまっているあさりは、貝の口がうっすらと開いています。そのため貝同士をぶつけた時に貝殻の中で音が反響し、生きているあさりと比べて高い音がします。
時には、海の中で死んだあさりが混ざっていることもあります。死んだあさりは貝同士を軽くぶつけた時に、貝の口から軽く砂や水が出てくることがあります。反対に、生きているあさりはぶつかった衝撃に驚き、貝の口を固く締めるため、砂や水が出てくることはありません。
【見分け方3】魚屋さんと仲良くなる
舘野さんによると、食材の新鮮さはプロに見分けてもらうのが一番とのこと。「スーパーでは難しいかもしれませんが、近所に魚屋さんがある方は、ぜひお店の方と仲良くなってみてください。買った商品がおいしかったときには、それを素直に伝えるだけでいいのです。見分け方や、より新鮮な商品を教えてくれるようになりますよ」と舘野さん。
料理人は仕入れる魚屋さんと仲良くなることで、より新鮮な食材を仕入れることができるのだそう。一般消費者も勇気を出して声をかけることで、耳寄りな情報や魚屋さんだけが知っている、おいしいあさりを教えてくれるかもしれませんね。近所に魚屋さんがある方は、仲良くなれるように声をかけてみてはいかがでしょうか。
あさりの砂抜きの準備
あさりを食べている最中に砂を噛んでしまうと、「ジャリッ」という感触が残ります。あさりが苦手な理由として、「砂を噛むことがあるから」と言う方が多いですよね。舘野さんによるとあさりから完全に砂を抜くのは不可能に近いそうです。それでも、あさりはしっかり砂抜きをしてから調理をした方が、よりおいしく、安心して食べられます。砂抜きが必要な理由と、その準備について舘野さんに伺いました。
あさりに砂抜きが必要な理由は?
あさりは海で砂に潜っている間、水を殻の中に吸い込んで吐き出すことを繰り返して、酸素や餌を取り込んでいます。その際に、砂も殻の中に吸いこんだり吐き出したりしているそう。家庭では、海水の環境に近い状態(塩水、暗さ)にし、その呼吸を利用して砂抜きをするのが一般的です。砂のない塩水を吸わせると、砂は吐き出す一方になるので砂抜きができるというわけです。
あさりは、しじみなどの他の貝に比べて取り込んでいる砂の粒が大きいため、間違って砂を噛んでしまった時の不快感が大きいのだそうです。そのため、あさりは、しっかり砂抜きを行いましょう。
用意する材料と道具
舘野さんは、上記のような大きめのバットと、巻きすを使ってあさりの砂抜きを行っているそうです。同じような道具はなくても、どのご家庭にもありそうな材料や道具で十分にあさりの砂抜きができます。
【用意するもの】
・ バットもしくは少し深さのある大きめのお皿
・ アルミホイル(バットのふたがあればアルミホイルは不要)
・ 巻きす(平たい網などでも代用できます)
・ 塩水(海水に近い3%ほどの塩水)
砂抜き前の下準備
砂抜き前にあさりをよく洗います。貝同士を軽くぶつけてこするようにするのがコツです。死んでいるあさりは、この作業によって口が開くため、そうしたものがあったら除いてしまいましょう。
あさりは極端な寒さ、熱さに弱いため、常温の水(25℃前後)で洗うのがよいでしょう。
あさりの砂抜きの基本手順
1. バットもしくはお皿に巻きすを敷きます。
2. その上に重ならないようにあさりを並べます。
3. 塩水をあさりが浸る程度(あさりが水から少し出るか出ないかくらいの量)に注ぎます。
4. アルミホイル(もしくはバットのふた)をかぶせて一晩(6~7時間ほど)おきましょう。
塩水に浸してしばらくすると、あさりの呼吸管が出てきます。その状態であさりが水を吸い込んだり吐き出したりすれば、砂抜きができます。
あさりは薄暗い場所を好むため、バットにはアルミホイルやふたをかぶせるようにしましょう。あさりが水を吐き出すときに、周囲に水が飛ぶのも防ぐことができます。
あさりの砂抜きは時短ワザのデメリットに要注意!
忙しい日々の中で料理をしている方にとっては、あさりの砂抜きが早くできたら大変便利です。ただし、早くあさりの砂抜きを終わらせる時短ワザの中には、本来の手順を省いている方法もあるため、デメリットがある場合もあるそうです。
50℃のお湯を使う
約50℃のお湯にあさりを入れて砂抜きをすると、20分ほどで砂抜きが終わる、という時短ワザは知られていますよね。
しかし、あさりはもともと海水の中で暮らしていた貝です。そのため、熱いお湯の中ではストレスを感じます。「人間もストレスがある状態では良いパフォーマンスができないように、貝も動きが鈍くなります」と舘野さん。この時短ワザを使うとうまく砂を吐かなかったり、あさりが死んでしまったりする可能性が高いそうです。
冷蔵庫に入れる
舘野さんは、あさりを冷蔵庫に入れると早く砂抜きができる、という時短ワザもおすすめしていません。
あさりは、極端に暑いところや寒いところが苦手です。海の中で暮らしていた状態に近い、20℃弱の薄暗い場所が快適に過ごせる環境です。そのため10℃以下になる冷蔵庫に入れることも、あさりにとってはストレスになると言えるでしょう。
くぎを入れる
あさりの砂抜きを早くしたいときに、「鉄包丁や古くぎ」など金属を入れておくとよいと聞いたことはありませんか?
鉄分が出て水が海水の成分に近づくかもしれませんが、実はこの方法、舘野さんによると科学的根拠はなく、ほとんど効果がないそうです。衛生的にも、やめておいた方がよさそうですね。
砂抜き後のあさりのアレコレ
人からいただいたり、潮干狩りで採ってきたりと、一度に食べきれない量のあさりは、どのように保存したらよいのでしょうか。そもそもあさりは保存できるのでしょうか?
また、スーパーでは「砂抜き済み」として売っているあさりもあります。あさりに関する「こんなときはどうしたら? 」という疑問を、舘野さんに伺いました。
保存期間はどのくらい?
砂抜き後のあさりを生で保存をすることは、あまりおすすめできません。冷凍もできますが、旨みは半減してしまいます。砂抜き後のあさりは、できる限りその日中に食べきるのがよいでしょう。
もし食べきれなかった場合には、一度火を通してから保存すると、比較的おいしく食べることができます。
舘野さんのおすすめは、貝の口が完全に開くまであさりを茹でてから保存する方法です。
まず、茹で上がったあさりをざるにあげます。煮汁もおいしい出汁が出ているので、キッチンペーパーなどで濾して取っておきます。煮汁の粗熱が取れたら一旦フリーザーバッグに入れて冷蔵庫でさらに冷まします。あさりは貝から身を取り、ざるの上で冷まします。
あさりの身と煮汁がしっかり冷えたら、煮汁を入れたフリーザーバッグにあさりの身を加え、ボウルやバッドに氷水を用意します。氷水に煮汁とあさりの身を入れたフリーザーバッグを沈めてさらに冷やします。冷蔵庫だけでなく、氷水でも冷やすことであさりと煮汁の内部までしっかり冷え、傷みにくくなり、さらに常温に戻した時あさりの身が固くなりづらいそうです。
保存したあさりは、味噌汁や炊き込みご飯などに使うとおいしく食べることができるそうです。加熱後のあさりも2~3日を目安に使い切りましょう。
砂抜き済みで販売されているあさりの扱い
現在、スーパーなどで販売されているあさりは砂抜き済みのものがほとんどです。しかし、砂抜き済みのあさりでも、そのまま料理すると砂を噛んでしまうことがあるものです。よりあさりの身の奥に潜む砂を少なくするために、可能であれば自宅でもう一度砂抜きをするのがおすすめです。
おわりに
舘野さんによると、あさりの砂抜きの時短ワザにはデメリットが多く、昔から伝わる砂抜き方法が一番おすすめのようです。時間がかかっても、手間はそれほどかかるものではないため、ご家庭でも心掛けてみるとよいかもしれません。また、しっかり砂抜きすることで、よりおいしくあさりを食べることができます。ぜひ試してみてくださいね。
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