無洗米と精白米はどう違う?
そもそも無洗米とはどのようなお米なのでしょうか?
「無洗米とは、肌ヌカをあらかじめ取り除いているお米のことです。肌ヌカとは精白米の表面に残っている粘着性の高いヌカで、とぎ汁のもとになる部分です。通常の精白米にはこの肌ヌカが残っている状態なので、とぎ洗いする必要があります。無洗米にはこの肌ヌカが取れているので、とぎ洗いする必要がないのです」(高野江さん)
ちなみに、「ヌカ」というと糠床をイメージしてしまうかと思いますが、肌ヌカは、糠床を作る時に使うヌカとは違うものなのだそう。
また、無洗米というと、「無洗米」という種類のお米があると思っている方もいるかもしれませんが、玄米から白米にするための「精米」後に無洗米加工されているお米が無洗米です。お米の銘柄に関わらず無洗米加工することができるそうなので、自分好みの銘柄を選んでみるのもいいですね。
無洗米のおいしい炊き方
時短調理にも便利な無洗米ですが、基本をしっかり理解しないまま炊飯してしまうと、おいしく炊けない場合があるようです。高野江さんによると、その違和感は炊き方のコツを理解することで解決するケースが大半とのこと。
無洗米をおいしく炊くコツを教えていただきました。
1. 米のはかり方と水の量
無洗米の場合は、無洗米専用計量カップというものがあるので、それで計量すれば通常の水加減と同様でおいしく炊飯できるそうです。
無洗米専用計量カップがない場合は、お米1カップにつき、大さじ1~2杯(5~10%程度)を追加して炊飯するのがおいしく炊くコツなのだそう。これは、精白米と比較して、無洗米の方がカップに入るお米の量が肌ヌカがない分だけ多くなるからです。何度か炊いてみて、好みの水加減をみつけてみてください。
なお、高野江さんによると、最近では炊飯器メーカーによって、無洗米用の炊き方を案内していることが多いとのこと。
例えば、無洗米専用計量カップがついていたり、計量カップは一つで無洗米と精白米の2種類の目盛りがついていたり、内釜に無洗米用の水量の目盛りがついていたりするのだそう。
こんな所からも、すでに無洗米が広く普及していることがうかがえますね。
2. 水の温度
無洗米に限ったことではありませんが、お米を炊く時に使う水は冷たいものを。早く炊きあげたいからとお湯を加えたりするのは逆効果だそうです。
「お米にお湯を注ぐと、お米の表面が、焼き餅の様にぱっくり割れてしまいます。その状態で炊くと、ぐじゅぐじゅで食感が悪いご飯になってしまいます。冷たい水でじっくりゆっくりお米に水を吸わせてあげてから炊くと、おいしく炊き上がりますよ」(高野江さん)
3. 浸水時間
高野江さんによると、無洗米に限らず、お米をおいしく炊き上げるには、お米の吸水が重要なのだそう。一般的に、お米に水を加えてから、30分~1時間程度吸水させるとおいしく炊き上がるとのこと。
「何時から浸水をはじめたのかを忘れてしまった場合はお米の色を見てください。お米が白くなっていたらしっかり吸水できているサインです」(高野江さん)
とはいえ、帰宅時間が遅くなった時などはすぐにでも炊き始めたいもの。しかし高野江さんは、浸水なしで炊くのはやめた方がいいと言います。
「吸水していない状態で炊くと、米粒の表面だけが炊けて、中心部分は『生米のまま』で芯が残る炊き上がりになりがちです。最初の10分でかなり吸水できるので、急いで炊きたいときも最低10分程度は浸水してから炊くことをおすすめします」(高野江さん)
出勤前に夕食用のお米を準備しておく場合など
帰宅してすぐに夕食の準備ができるように、出勤前にあらかじめご飯を準備しておきたいという方もいるのではないでしょうか。
高野江さんは、お米と規定の水を入れた容器を、冷蔵庫に入れておくことを提案します。
「お米はお水に浸けて約2時間で飽和状態になり、それ以上は吸水しません。また、冷蔵庫なら低温で保管できるので、雑菌の繁殖も防止できます」(高野江さん)
注意点は、お米がしっかり水に浸かった状態で冷蔵庫に入れること。
「水に浸かっていない部分があると、乾燥によってお米の表面がカメの甲羅のようにヒビ割れてしまうのです。上は室内に約30分ほど放置したお米の表面の写真です。このヒビ割れたところからデンプンが流れ出て、炊飯時に余分な『おこげ』が発生する場合があります」(高野江さん)
鍋で炊く場合
鍋で無洗米を炊く場合の所要時間は約20分。炊飯器より短時間で炊き上がります。
「炊飯器はスイッチを入れてからの浸水時間が含まれているので、炊飯に40~50分程度必要なのに対し、鍋で炊く場合はそれが含まれていないからです。また、炊飯器と比較して直火の方が火力が強いことも大きな要因です」(高野江さん)
なお、お使いのガスコンロに「炊飯モード」がついていれば活用しましょう。炊飯モードなら、火加減の調節から消火、蒸らしまで、自動で行ってくれるので、終了音がしたら、すぐに召し上がれます。
お鍋を使ったご飯の炊き方は、こちらの記事も参考にしてみてくださいね。
【コンロのプロ直伝】意外と簡単! お鍋を使った「ご飯の炊き方と美味しい理由」
無洗米で炊き込みご飯をおいしく作るコツ
無洗米を使っている方のお悩みで、「うまく炊き込みご飯ができない」という方もいらっしゃるようです。
高野江さんが教えてくれたコツは「通常通りの分量で吸水させた後、調味料の分だけ水を取り除き、それから調味料を加えること」。
調味料を合計で大さじ1杯加えるというレシピなら、吸水が完全に終わってから水を大さじ1杯取り除いて、そこに調味料を加えるといったイメージです。
高野江さん「精白米であればとぎ洗いしている間にある程度水を吸収しますが、無洗米はそれがないため、無洗米で炊き込みご飯を炊く際には、調味料を入れる前にしっかり吸水させる必要があります」
下の写真は、吸水の実験を行った結果です。
左側は食塩水に、右側は水に、それぞれ8分浸した無洗米です。
右側の米は吸水が進み、しっかりと白色になっているのに対し、左側の米は、ほとんど吸水しておらず米は透明のままです。
浸透圧が高い食塩水は、浸透圧が低い米粒の内部に移動しにくいので、このような結果になるのだそう。
さらに40分経過すると、下のような状態になります。
左側はほとんど変化が見られないのに対し、右側はさらに吸水がすすみ、どの米粒も白くなっています。このように、無洗米は食塩水よりも水のほうが吸水しやすいため、塩分を含む調味料を入れる前に浸水するのが大切だということが分かりますね。
無洗米で炊くおいしい炊き込みご飯
高野江さんに、おいしい炊き込みご飯のレシピを教えていただきました。吸水が終わったお米に具材と調味料を加えたら炊飯スイッチをONにするだけ。とても簡単です。
材料
無洗米:無洗米カップで2カップ(約290g)
里芋:180g(大サイズ2個程度) - 7mm幅のいちょう切り
ニンジン:30g - 千切り
鶏モモ肉:1/2枚(約150g) - 1cm角切り
ショウガ:少々 - 千切り
三つ葉:1cmスポンジ1束 - 2cm長さに切る
[調味料]
しょうゆ、みりん、酒:各大さじ1
塩:小さじ1/2
作り方
- 無洗米に分量の水(材料外)を加え30~1時間程度浸水する
- 1.から大さじ3杯分の水を取り除く
- [調味料]を加えて、やさしく数回かき混ぜる
- 三つ葉以外の具材を米の上にのせて炊く
- 炊き上がったら、三つ葉を加えて具材とご飯をよく混ぜる
できあがった炊き込みご飯は、具沢山で食べ応えもあり、おかず要らずのぜいたくな味わいでした。
無洗米にはこんなメリットが!
とがなくてよいので簡単ということだけがクローズアップされがちな無洗米ですが、それ以外にも大きなメリットがあります。
1. 誰でも時短・簡単調理が可能
とぎ洗いせずに炊けるので時間の節約になります。また、きちんととぐのが難しい小さなお子さんでも炊けるので「ご飯を炊く」お手伝いもしてもらいやすくなります。おいしく炊くためのとぎ方のコツがよく分からないという方も、無洗米なら安心です。
2. 水が節約できて、災害時にも使いやすい
無洗米は、炊飯に使う水が少なくて済むのも特長。
高野江さんは「かつて60~70人を対象に、3カップのお米のとぎ洗いの実験をした結果、平均して使ったお水は4.5リットルでした。これは1年で計算すると2リットル入りペットボトルで828本分です。無洗米を使えばこれだけのお水を節約できるのです」と驚きのデータを教えてくれました。
また、とぎ洗いの水がいらないことから、災害時の備えとしても無洗米は注目されています。
3. 環境保全に役立つ
高野江さんによると、そもそも無洗米ができた背景には、環境保全の視点があるとのこと。米のとぎ汁が大量に流れ込むことによる河川や湖沼の水質悪化は深刻で、それを防ぐために無洗米が開発されたという経緯があるのだそう。無洗米を選んでいる方の中には、こういった環境に配慮した視点をお持ちの方も多いといいます。
「例えば、富士山の登山道『吉田口』の山小屋では、お米は全て無洗米が使われています」(高野江さん)
また、キャンプに持っていく米は無洗米を選ぶという方も増えているそうです。
無洗米Q&A
無洗米についてちょっと気になるアレコレを高野江さんに教えていただきました。
Q. 無洗米は普通のお米より割高ではありませんか?
食べられる分量とお値段の関係を考えると、割高とはいえません。精白米はとぎ洗いの際に流れてしまう肌ヌカを含んだ重さで量られて販売されているのに対し、無洗米は肌ヌカを取り除いた状態で販売されているからです。
高野江さんは「使う水が少なくて済むことや手間が省けることを含めて考えると、無洗米の値段は普通米と変わらないと思います」と話します。
Q. 肌ヌカがついていない無洗米は普通米より傷みやすいですか?
「無洗米は肌ヌカの酸化による劣化がないため、精白米と比較して、むしろおいしさが長持ちします」(高野江さん)
保存の視点から見ても、無洗米は優れているんですね!
Q. 無洗米は薬品で肌ヌカを取り除いているのですか?
日本で市販されている無洗米は以下のいずれかの方法で作られていて、化学薬品などは使っていません。
主な無洗米の製法4つを高野江さんに教えていただきました。
- ヌカ式:肌ヌカがもつ粘着力を活かし、肌ヌカ同士を付着させて取り除く方法
- タピオカ式:熱したタピオカに肌ヌカを付着させて取り除く方法
- 水洗い式:家庭でとぎ洗いする代わりに、工場で水洗いして取り除く方法
- 研磨式:表面をブラシなどでこすり取り除く方法
お米を無洗米にする製法は上記のように複数ありますが、今回取材にご協力いただいた全国無洗米協会さんでは独自の基準を定め、基準を満たしたものに「認証マーク」を付与しているのだそう。高野江さんによると、パッケージに認証マークがついている無洗米は、確実にとぎ洗いせずに炊けるお米だとのことです。
ただし、基準を満たしていてもパッケージに認証マークをつけていない商品もあるので、認証マークはひとつの目安と考えればよいそうです。
おわりに
無洗米のおいしい炊き方やメリットなどを全国無洗米協会の高野江さんに教えていただきました。無洗米を利用すれば手間や時間、お金が節約できることに加え、環境保全にも役に立てそうです。まだ召し上がったことがない方も、今回ご紹介した炊き方を参考に、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
最新のガスコンロなら、ボタン一つで「自動炊飯」
最新のガスコンロなら、自動で簡単にご飯が炊けるって、ご存じでしたか?
ガスコンロの「自動炊飯」機能は、ボタン1つで火加減の調節から消火まで全て自動で「かまど炊きのようなご飯」を炊きあげます。※
1合から美味しく炊けて、しかも炊飯時間は3合で約20分程度! (蒸らし時間は除く)
「自動炊飯」機能では、水位目盛りが付いた水加減が簡単な自動炊飯専用鍋などもありますが、ご家庭にあるでフタ付きで深めの金属製のお鍋(アルミ、ステンレス、ホーロー製など)で簡単にご飯を炊くことができます。
土鍋など一部「自動炊飯」機能に対応していない鍋があります。詳しくはコンロの取扱説明書をご確認ください。
目盛りがついていない鍋の場合は、お米の容積の1.2倍の水で炊いてください。水分を多く含んだ新米の場合は1~1.1倍で炊いてくださいね。
その他にも「ガスコンロ」には自動でおまかせの便利な機能がいっぱい!
ガスコンロを使いこなせば、調理グッズをたくさん買いそろえるよりも、時短&上手に料理ができますよ!
(※各機能は搭載されていない機種もあります。各画像はイメージです。専用容器は別売の場合もございます。)