お屠蘇の意味と由来
お屠蘇とは、酒やみりんに5〜10種類の生薬を浸け込んだ薬草酒で、一年間の邪気を払い、長寿を願ってお正月にいただく祝い酒です。
屠蘇の「屠」は屠(ほふ)る、邪気を払うという意、「蘇」は魂を目覚め蘇らせると解釈し、邪気を払い生気を蘇生させるという意味だと言われています。
お正月にお屠蘇を飲む習慣は中国で始まり、平安時代に日本へ伝わったと言われています。嵯峨天皇の頃に宮中正月行事として始められ、江戸時代には一般庶民に広まったそうです。
屠蘇散(お屠蘇の材料)の中身と効能
お屠蘇を作るときに使う生薬を屠蘇散(とそさん)、屠蘇延命散(とそえんめいさん)といい、漢方薬に使われる5〜10種類の生薬が用いられています。一般的によく使われる生薬には、下記のようなものがあります。
- 白朮(ビャクジュツ):キク科オケラもしくは、オオバナオケラの根。
- 山椒(サンショウ):サンショウの実。
- 桔梗(キキョウ):キキョウの根。
- 肉桂(ニッケイ):ニッケイの樹皮、シナモン。
- 防風(ボウフウ):セリ科ボウフウの根。
無病長寿を願って飲むだけあり、体に良さそうな素材ですね。
お屠蘇の作り方
準備するもの
- 屠蘇散:スーパーやドラッグストアなどで手に入ります。
- 日本酒
- 本みりん:料理用みりんではなく、本みりんを使います。
作り方
- 日本酒と本みりんを合計300ml程度にし、そこに屠蘇散を浸します。日本酒が多いと辛口に、本みりんが多いと甘口になります。どちらかのみでもOK。お好みで調整してくださいね。
- 7〜8時間漬け込みます。
- 屠蘇散を取り出して完成です。
※ 日本酒&みりんの量が多い場合は、屠蘇散を長めに浸します。
※ あまり長時間浸しすぎると濁ったり沈殿物ができたりすることがあります。様子を見て調節してくださいね。
伝統的なお屠蘇の作法
地域や各家庭によって異なりますが、一般的なお屠蘇の作法をご紹介します。
お屠蘇を作るには時間がかかるので、大晦日の夜に屠蘇散を仕込み、元旦に屠蘇散を引き上げます。
お屠蘇は、おせちやお雑煮などを食べる前に飲みます。正式には、漆器または白銀や錫などのお銚子と三段重ねの盃を使います。ご家庭にない場合は、お正月にふさわしい酒器や、それ以外でも構いません。
お屠蘇を飲むときは、年少者から年長者へと盃を順番にすすめます。
例えば20歳の子・50歳の母・55歳の父・80歳の祖父の場合、
まずは祖父が子に注ぐ→飲んだ子が母に注ぐ→飲んだ母が父に注ぐ→飲んだ父が祖父に注ぐ→祖父が飲む
という手順です。こうして若い人から順番に飲みまわしていくことで、年長者まで生気がうつり、家族みんなが健康で過ごせるといわれています。
厄年の人がいる場合には、最後に飲んで厄を払います。さらに、東の方角を向いて飲むとよいとする説もあります。
また、正月三が日の来客には、初献にお屠蘇をすすめて新年のお祝いの挨拶を交わすのが礼儀とされているそうです。
地域によって違う!? お屠蘇の作り方・作法
作り方の違い
お屠蘇は地域性が色濃く反映されるのも特徴です。
お屠蘇は「屠蘇散」「本みりん」「日本酒」で作りますが、使う日本酒に、その土地ならではの特殊なお酒を使う地域もあります。例えば熊本県では赤酒、鹿児島県では黒酒で作ります。
一方で、何も手を加えていない日本酒をお屠蘇として飲む地域もあります。また生薬などの量や種類、配合にも違いがあります。
作法の違い
先ほどお伝えしたとおり、お屠蘇は若い人の生気を移すという意味で年少者から年長者へと順番に飲み進めていきますが、年長者の英知を分けるという意味で年長者から順番に飲み進めたり、みんなで一斉に飲んだりするなど、地域や家庭で違いがあります。
お屠蘇を飲む際の注意点
お屠蘇はアルコールです。未成年や車を運転する人、お酒が苦手な方は飲むふりにとどめましょう。せっかくのお祝い事なので、口をつける真似事などでお屠蘇の雰囲気を楽しんでくださいね。
また、お屠蘇に含まれる生薬の効能は、少量では期待できません。生薬の効能を期待しての暴飲には気をつけてくださいね。
子どもはどうする?
大人がお屠蘇を飲む様子を見て「自分も飲みたい! 」なんて言い出すお子さんもいますよね。
でもお屠蘇はアルコールですから、お子さんは飲めません。
みりんだけで作れば大丈夫、と思う方もいらっしゃるようですが、それは大きな勘違い。本みりんにはアルコールが約14%含まれているため、みりんだけで作った場合もNGです。
とは言え、お屠蘇は縁起物ですので、例えば空の盃に口をつける、盃にジュースなどを注いであげるなど、工夫をして一緒に楽しめるようにするといいですね。
おわりに
お屠蘇の意味や由来、作法、作り方などをご紹介しました。新年の無病息災を願って飲むお屠蘇。お正月は、是非お屠蘇でお祝いしてみてはいかがでしょうか。
参考:日本名門酒会「お酒の歳時記」