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冷蔵庫を開ける女性

停電したら冷蔵庫の中身はどれくらいもつ? 食と防災の専門家が停電対策を紹介!

停電が起こると、すべての家電製品が影響を受けますが、特に心配になるのは冷蔵庫の状態ではないでしょうか。庫内の食材はいつまでもつのか、長期間停電した後の対応も気になります。今回は管理栄養士・防災士でもあり、災害食専門員でもある今泉マユ子さんに、停電の際に冷蔵庫の中の食材のダメージをできる限り少なくするために普段から心がけておくべきことや、実際の停電対策について伺いました。

最終更新日:2025.5.9

目 次

停電すると冷蔵庫内の温度はどうなる?

冷蔵庫 野菜

PIXTA

「停電した際、ドアを開けなければ冷蔵庫内の温度は、一般的に2~3時間は保てます」(今泉さん)

しかしドアを開けなくても、停電したときの室温、冷蔵庫の機種や設置場所、庫内の食品の内容や詰め具合によって低温がどれくらい保たれるかは異なるそうです。

「古い機種と最新の機種で性能が異なりますし、普段の設定温度や中にどのような物をどれくらい入れているか家庭によって違うので、一概には言えないのです。冷蔵庫の機種や庫内の状態などによって、常温に戻るまでの時間は大きな差があると考えられます」(今泉さん)

停電したとき、自宅の冷蔵庫がいつまで庫内の温度を保てるか、基本的にはわからないと考えておくべきですね。

冷凍庫は?

停電によって冷凍庫内の食品や製氷室内の氷、霜が溶けることによって、水が漏れだすことも考えられます。

「冷凍庫から水漏れするかどうかは機種にもよります。今販売されている冷蔵庫の多くは霜がつきませんが、心配な場合は、冷蔵庫の周囲にタオルや雑巾を敷いておきましょう」(今泉さん)

また、今泉さんによると、製氷室内で作っていた氷はポリ袋に移しておくのがおすすめだそう。

「ポリ袋に入れておけば、製氷室内が水浸しになるのを防げます。また、災害時には貴重な水として活用することができます」(今泉さん)

ぜひ取り入れたいアイデアですね!

停電した時にまずやるべきことは?

冷蔵庫の電源プラグ

uchicoto

停電したとわかったら、冷蔵庫の電源プラグを抜くべきなのでしょうか。

家電メーカーは、停電した場合は一度電源プラグを抜いて10分ほどしてから再び差し込むことを推奨しています。そうすることで、圧縮機(コンプレッサー)の負担が軽減されるからです。ただし停電が10分以上の場合は、電源プラグを抜き差しする必要はないそうです。

また、自宅を出て避難しなくてはいけないような災害時には、通電火災を予防するために、ブレーカー自体を落とします。ただ、自宅避難している場合は、ブレーカーを落としてしまうと、電気の復旧が分からないので難しいところですね。

わが家の場合、自宅から避難する場合は通電火災防止のためブレーカーを落とし、自宅避難中で安全が確認できている場合は落とさないけれど、水漏れや転倒などで危険がある場合は、 該当回路のみ落とすと決めています」(今泉さん)

ご自身の状況に合わせた対策を行いましょう。

停電中の冷蔵庫の保冷対策

冷凍庫 食品

uchicoto

停電が数時間で終わるなら、できる限り庫内温度を保ち中の食品を守りたいと誰もが考えるでしょう。冷蔵庫の保冷状態をできる限り維持する方法を今泉さんに伺いました。

できる限り冷蔵庫を開閉せず、冷えた物を出さない

「停電時に冷蔵庫のドアを開ける回数を減らすには、明るいときにスマホで冷蔵庫内部の写真を撮っておくとよいでしょう。開けなくても中身を確認できて便利です。

ただし、停電中はスマホの充電も貴重です。必要なとき以外は写真を何度も見返さず、紙に簡単にメモしておくと安心です。また、モバイルバッテリーを備えておくと、いざというときにスマホの電源を確保できます。」(今泉さん)

停電時に冷蔵庫の中のものを使って調理する必要があるときは、冷蔵庫内部の写真やメモを見ながらレシピを検討するとよいでしょう。

保冷剤や凍らせたペットボトルなどを冷蔵室に入れる

「冷気は密度が高く、重いため、上から下へと流れていきます。そのため、凍らせた保冷剤や水を入れて凍らせたペットボトルを、冷蔵室の上部に置いておくことで冷蔵室内の冷えを維持しやすくなります。特に数時間停電する際、冷蔵庫内の温度を上げないための有効な対策になります。このペットボトルの水は、溶けたら調理用の水としても使用できますよ」(今泉さん)

なお、ペットボトルを凍らせる場合は、冷凍可能なペットボトルや冷凍できる密閉容器に水をいれて使用するようにしましょう。

停電中・停電後に冷蔵庫内の食品はどうする?

鍋 女性

PIXTA

停電すると冷蔵庫内の食材が心配です。
停電中や停電後、冷蔵庫内の食材をどのように管理すればよいのでしょうか。今泉さんに伺いました。

停電が続いているなら、食べたい物から食べる

「食材を無駄にしないように、傷みやすい食材から調理して食べることを考えるかもしれませんが、冷蔵庫・冷凍庫に大量の食べ物を置いている人は、庫内にあるすべての食材を使うのは難しいですし、食べきれるとは限りません。そのため、停電が続いている場合は、まずは自分やご家族が食べたい物から食べるほうがいいと思います」(今泉さん)

今泉さんによると、災害時だからこそ、ストレスを感じないことが大切だそう。停電しているときもできるだけ無理なく楽しく食事ができるようにしたいですね。

食材を捨てる勇気も必要

「停電がある程度長時間続いた場合は、冷蔵庫に入っていた食材を食べて大丈夫なのか悩みますね。その判断は、まず触ってみて冷たいか、ぬるぬるしていないかなど、停電時には自分の五感を頼りにするしかないと思います」(今泉さん)

食べ物が腐敗している場合は、見た目が変化し、不快な臭いがするため、判断できます。しかし、食中毒の場合は、そうした変化がありません。

「災害時は、医療にアクセスしにくい状態になります。食中毒になった場合、通常よりも大変なことになる可能性もあるので、やはり心配な食材は捨てる勇気も必要だと思います。

特に消費期限が近いもの、生鮮食品、自分で色や臭いを確認して違和感のあるものなどは廃棄しましょう。また、一度解凍した冷凍食品は再冷凍できませんので、すぐに食べるか、食べきれないものは廃棄してください」(今泉さん)

冷蔵庫の停電で慌てないために普段から対策を

カセットコンロ

提供:今泉マユ子

一時的な停電であれば冷蔵庫を開閉しないなどの対策を行えばよいですが、災害などが起こって停電した場合は、長引く可能性もあります。できる限り食材を無駄にせず、有効活用するためにはどのような対策が必要なのでしょうか。普段から気をつけるべきことを今泉さんに伺いました。

冷蔵庫の転倒防止対策を行う

「地震で冷蔵庫が転倒すると、非常に危険ですし、冷蔵庫の中身を使うことも難しくなります。家具と同じように、冷蔵庫にも転倒防止グッズを使ってください。

東日本大震災の津波により、壊れた家に9日間もの間、閉じ込められた方の体験談では、冷蔵庫が奇跡的に扉を上にして倒れたため、庫内にあったヨーグルトや牛乳、ビスケットなどで9日間なんとか食いつなぐことができたそうです。この時、扉が下になって倒れていたら、何も食べることはできなかったかもしれません。

 停電時に冷蔵庫を上手に活用する工夫も大切ですが、まずはその冷蔵庫が安全な状態で使えることが何より大事です。食べ物を守るためにも、命を守るためにも、冷蔵庫の転倒防止対策を忘れずに行っておきましょう。また、普段の備えを大切に、いざというときに落ち着いて行動できるよう心がけておきたいですね」(今泉さん)

水、カセットコンロとカセットガスボンベを用意する

冷蔵庫の中にある食材を無駄にしないためには、電気やガスがなくても調理できるように準備しておく必要があります。

「防災食3カ条として私もお伝えしていますが、調理するための水、カセットコンロとカセットガスボンベは絶対に必要です。各ご家庭で用意しておいてください」(今泉さん)

普段から冷蔵庫の中を整理整頓しておく

停電すると当然、庫内の照明も消えます。昼間ならまだしも、夜間はなにがどこにあるのかほとんど視認できません。

「停電時に冷蔵庫の冷気を維持するためには、できる限り扉を開閉しないことがポイントです。いざというときに何度も開閉して確認しなくても済むように、普段から冷蔵庫内を整理整頓して、どこになにがどれだけ入っているのか把握しておきましょう」(今泉さん)

冷蔵庫の食材をできるだけ多く使って料理するスキルを身につける

「冷蔵庫の食材をできるだけたくさん使って臨機応変に料理を作るスキルを身につけておくのもよいでしょう。
ただし、停電が長時間続く場合は、大量に作っても食べ残しの保存もできないので、結局無駄になってしまうこともあります」(今泉さん)

災害による停電で、電気だけでなく、ガスや水道も止まってしまうことがあり得ます。そのような場合でも作れる料理のレパートリーを増やしておくと役立ちます。

ストレスを感じない備えを心がける

「例えば、停電に備えて、冷気を抜けにくくするために冷凍室をぎっしり詰めて、冷蔵室は7割程度詰めることがベストといわれていますが、常にそういう状態にしておくのは難しいと思います。ご家族の人数や買い物のタイミングによって、冷蔵庫の中の状態は変わるからです。まずは、日頃の生活を大切にしましょう」(今泉さん)

自然解凍で食べられる冷凍食品があれば、停電時には便利です。しかし、普段冷凍食品を食べないのに、限られた冷凍室のスペースに冷凍食品を常に入れておくことは邪魔に感じるでしょう。
もちろん、日頃から冷凍食品を活用している方は、意識してストックしておけば備えとして有効です。

「毎日使う冷蔵庫を、停電の備えのために使い勝手の悪いものにする必要はありません。しかし、無理しない程度で、例えばペットボトル1本なら入れておいても邪魔にはならないし、暑い季節なら日頃から使うので、備えておくとよいと思います」(今泉さん)

停電、断水体験をしてみる

「防災の知識や情報を得るだけではなく、それを自分の生活にあてはめることが大事です。そこで、ご家庭で“停電ごっこ”という形で体験してみることをおすすめします。
停電、断水したことを想定して、電気を消してランタンを使い、カセットコンロとカセットガスボンベや備蓄している水で調理をしてみてください。そうすると、備えておくべきものがわかると思います。
また、冷蔵庫のことだけではなく、調理をして食べて、それをどう片づけるかまで(洗い物、ゴミ問題、排せつ)を考える必要もあります」(今泉さん)

「私なら水浸しになるのが嫌なので、取りあえず冷凍庫で作っている氷だけはポリ袋に移しておくと思います。各ご家庭でどうするのがよいか、どうしたいのかを、話し合ってみてくださいね」(今泉さん)

停電の時、ガスコンロは使えるの?

ガスコンロ

TOKYOGAS

停電時にガスコンロは使用できるのでしょうか?

停電してもガス供給がストップしていなければ、ほとんどのガスコンロは使用することができます。

ただし、停電中は換気扇が作動しないので、ガス機器をご使用になる場合には、必ず換気を確保するようにしてください。
夜間は操作ボタンがよく見えず、ガス機器の操作を誤るおそれもあります。ご使用の際は十分ご注意ください。

以下のリンクで、ご家庭のガス機器の備えをぜひご確認ください。

おわりに

冷蔵庫にはさまざまな種類があり、性能もそれぞれ異なります。各家庭で入れる食材や量、入れ方も異なるので、「停電するとどうなるか」はそれぞれ異なってきます。
だからこそ、自分の家の冷蔵庫の状況や対処法を想定して、停電への備えを考えてみることが大切です。そうすることが家庭の防災意識のアップにつながるでしょう。

  • この記事取材先

    今泉マユ子

    防災食アドバイザー

    今泉マユ子

    株式会社オフィスRM代表取締役 管理栄養士、防災士、災害食専門員。防災食アドバイザーとして講演、講座を行う。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで活躍。「もしもごはん かんたん時短、即食レシピ」、「防災教室 災害食がわかる本」など著書多数。

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公開日:2016.11.10

最終更新日:2025.5.9

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