早く治したい! 不快な口内炎の原因と対策。危険な口内炎の見分け方とは?
一度できると、一朝一夕では治らない口内炎。食事中や会話中に痛みを感じるのはもちろんのこと、日常生活のパフォーマンスが下がってしまう厄介な存在です。さらに、「ただの口内炎だろう」と油断していると、ガンなどの危険な病気の兆候を見逃す可能性も・・・? そこで、複数の大学で教授として教鞭も取る、口腔外科の専門家で『開業医だから発見できる口腔がん』著者・東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックの新谷悟先生に、口内炎の原因や対策について伺いました。
口内炎ができる原因は、大きく分けて4つ!
1.ストレスや疲労
口内炎で一番多いのは、舌や口のなかに小さな腫瘍ができる「アフタ性」と呼ばれるもの。
「これはストレスや疲れが原因と言われています。睡眠不足や栄養不良、過度な運動など、心身の疲れがたまり、免疫力が低下しているため、体から『少し休みなさい』というシグナルが出ている状態です」(新谷先生、以下同)
このタイプの口内炎は、なぜか若い人に多くできる傾向があるそうです。
2.ウイルスやカビ、細菌などの病原体
そして、口の中に水疱などができるのが「ウイルス性」の口内炎。
「ウイルスやカビ、細菌などの増殖が引き起こす口内炎が、このタイプです。多いものとしては、口唇ヘルペスなどで知られるヘルペスが原因の『ヘルペス性口内炎』や、カビの一種であるカンジダ菌の増殖による『カンジダ口内炎』があります。症状として、発熱や痛みを伴うこともあります」
3.傷などの物理的な刺激
入れ歯や歯の被せもの、食事中に魚の骨が口の内側に刺さったり、ほほの内側を誤って噛んだりした際にできた傷が元で、口内炎ができることもあります。そうした口内炎は「カタル性口内炎」と呼ばれます。
「外部からの物理的な刺激によってできた傷に、菌が入って、繁殖することでできるものが、こうした『カタル性口内炎』です。口の中の粘膜が赤く腫れたり、水疱ができることもあります。特徴は、唾液が増えて口臭が出ること。また、時には味覚がわかりにくくなることもあります」
4.その他(アレルギーやニコチン)
上記の3つの原因よりは数は少ないものの、そのほかにも口内炎を引き起こす原因はいくつかあります。
「まず、特定の食べ物や薬物、金歯や銀歯といった金属へのアレルギー反応を示す『アレルギー性口内炎』。これは、抗がん剤やリウマチの薬など、なんらかの薬を服用しているときにも起こりえます。そのほか、喫煙などの習慣により、口の中が熱にさらされることで起こる『ニコチン性口内炎』などもあります。」
口内炎ができたとき、自宅でできる対策とは?
口内炎ができた時、できれば自宅で治してしまいたいと思う人も多いはず。そこで、新谷先生に、病院に行く前にやってみるべき対策法を伺いました。
1.頻繁に水やぬるま湯でうがいをする
口内炎への一番の対策は、口のなかを清潔に保つこと。気が付いたときには、できるだけ頻繁にうがいをするのが良いそうです。
「1日に何回でもいいので、少しでも時間があるときは、水やぬるま湯でうがいをしましょう。そうすると、口のなかが清潔に保たれやすくなるので、常在菌の増殖を防ぐことができます。なお、『うがい薬や食塩水を使うほうが良い』という声もありますが、口内炎には刺激は悪影響。水やぬるま湯でのうがいで十分です」
また、口の中を清潔に保つために、「頻繁に歯磨きをしたほうがよい」という説もありますが、「歯磨きは口の中に刺激を与えるので、食後に歯磨きするくらいの頻度がちょうどよい」そうです。
2.ゆっくり休養を取る
徹夜や夜更かしが続いたり、体調を崩したりして、疲れがたまっているときほど、免疫力が落ちて、口内炎になりがちです。そこで、有効な手段はとにかく休息をとるということ。
「いつもより長めに睡眠を取ったり、家でゆっくりしたりすると、口内炎は治りやすく、また、転職や異動、引っ越しなどといった生活環境の変化も、知らないうちにストレスを呼び込んでいることも。気分転換のために、ストレス発散ができそうな余暇を楽しむのもいいかもしれません。また、口内炎は『体調のバロメーター』とも言われています。口内炎ができたときは、本格的に体調を崩す予兆かもしれないので、あまり無理をしないようにしましょう」
3.ビタミンB群を積極的に取る
たっぷりの栄養も、口内炎の治癒には効果的です。「規則正しく3食しっかり食べて、栄養を取れば、免疫力も高まります。特にたくさん摂るとよいのが、粘膜を守る働きがあるビタミンB群です」と語る新谷先生。
うなぎやレバー、タマゴなどに含まれるビタミンB2や、カツオやマグロなどの赤身肉やバナナなどに含まれるビタミンB6、そして牡蠣やほうれん草やなどに含まれるビタミンB12を中心に、積極的に食事からビタミンを取るのも大切です。
参照:文部科学省「食品成分データベース」
参照:日本医師会 健康の森「ビタミンの話」
4.刺激物を避ける
一方で、避けてほしいのが、タバコやアルコール、辛い物といった刺激物。
「ニコチンやアルコール、辛い物を口の中に含むと、口内炎を刺激し、傷口が悪化します。よく『アルコールには殺菌作用があるから、飲んでも大丈夫』と言う人もいますが、アルコールはタンパク質を凝固させる作用があります。アルコールを含むことで、タンパク質のなかに細菌を閉じ込めてしまい、完全には滅菌していない状態になることもあります。その結果、口内炎の治癒を遅らせる可能性があります」
5.市販薬を塗る
昨今は口内炎の市販薬もたくさん出ているので、痛みがひどかったり、治癒を早めたい場合は、こうした薬を使うのも手。
「軟膏は、綿棒などを使って塗るのがいいですね。最近は、そのまま傷口に貼れるパッチ型のものや、粉末状の薬をスプレーで塗布するタイプのものもあるので、どんな場所にできていて、どんな形状をしているかによって、使いやすいものを選びましょう。なお、『薬を塗る前には、薬がよく塗布されるように、ガーゼなどで乾燥させたほうがよい』という意見もありますが、ガーゼやティッシュなどで口内炎を触ると傷口に刺激を与えてしまうので、避けたほうが無難です」
6.唾液マッサージで口の乾燥を防ぐ
口の中が乾燥すると粘膜の免疫力が低下し、治りが悪くなります。そこで、できるだけ口内を乾燥させないために、新谷先生が提案するのが“唾液線マッサージ”。
「耳下腺や顎下腺、舌下腺など、顔周りにある唾液腺を手でマッサージすると、唾液の流出が活発になります。口の中が乾燥したなと思ったら、唾液線マッサージを行って、唾液を出し、口内炎の患部を湿らせるようにしましょう。唾液は、口内炎だけではなく、歯周病や虫歯などを防ぐことにも役立ちます。」
また、睡眠時に口を開けて寝てしまう人は、口の中が乾燥しがち。その場合、マスクなどをして寝るなどの対策も有効だそうです。
油断禁物! 病院に行くべき危険な口内炎とは?
しかし、これらの対処法でもなかなか口内炎が治らない場合。もしくは、症状が悪化してしまった場合は、病院に行って、医師の診断を仰ぐのも大切です。では、どんな症状が続くと、病院に行くべきなのか、新谷先生に「口内炎」と「舌癌」の特徴を聞きました。
上記の表のなかに、気になる症状がある場合には医師に診てもらうと良いでしょう。
病院に診察してもらうには、「何科」に行けばいいの?
口内炎が悪化して痛みを伴う時。あるいは、ただの口内炎ではなく、別の病気である可能性を秘めている時。そんな時は、すぐに医師に相談したいところですが、内科や歯科、口腔外科、耳鼻咽喉科と数ある病院のなかで、いったい何科に行けばいいんでしょうか?
これに対して、新谷先生の回答は、「どこでも構いません」とのこと。
「口の中の専門家と言われると、口腔外科に行かなければならないのかと思う方が多いですが、内科や歯科、耳鼻咽喉科でも全く問題ありません。ポイントは、『日ごろから口のなかを見る機会が多い専門家に見てもらう』ということです。たとえば、内科であれば、風邪を引いた人の喉の状態を見慣れているし、耳鼻科なら咽喉を診断する際に、口腔を見る機会も多いです。歯科医も当然、歯を診断する際に、口のなかはよく見ています。普段、口の中を見慣れている専門家が見て、その症状に異常を感じるかどうかを、判断基準にしましょう」
また、新谷先生が何よりアドバイスするのは、「たかが口内炎だと軽視せずに、おかしいと思ったらきちんと病院に行く」ということ。
「アメリカでは年々ガンの治癒率が上がっているのに、日本では毎年ガンの治癒率が下がっています。これにはいろいろな要因があるのですが、私自身は、日本人の国民性が作用しているのではないかと思っています。
ガンの治癒には早期発見が一番重要です。日本人は、『仮に病院に行って、たいしたことがなかったら恥ずかしい』と思いがちで、仮に不安な症状があっても軽視してしまいがちです。最近は、有名人の方の舌癌報道などの影響で、病院に来る人は増えましたが、これを一過性のブームで終わらせず、『あれ、おかしいぞ』という不安があったら、きちんと病院に行くように心してほしいです」
おわりに
一見、ただの口内炎に見えても、実は恐ろしい病気が潜んでいる可能性も。「まさか自分が・・・」と軽く考えるのではなく、上記兆候などに当てはまるケースがあれば、迷わず病院に行く習慣をつけたいものです。
また、日頃から粘膜を守る働きがあるビタミンB群の摂取を心がけましょう。