【オーダーメイドキッチン実例取材】「働きもの」なキッチン
最近の取材で、実に「働きもの」なキッチンに出会いました。
そもそもキッチンとは、無駄な動きなく、きちんと食事をつくれて、てきぱきと後片付けできることが大事。そんなキッチンの「本分」を、改めて痛感させてくれたのが、Kさんのキッチンです。
仕事から家に戻るのが18時。24時には就寝するKさんには、毎日6時間しか、自宅での時間がありません。夫も多忙で、娘は小学生。帰りの電車の中で夕飯の段取りを考えて、帰宅するとすぐに実行に移す。そんな毎日です。
自宅を新築するときに、Kさんはそんな毎日をどう快適に過ごすか、じっくりと考えました。そしてキッチンをオーダーメイドで製作してもらったのです。
【オーダーメイドキッチン実例取材】右から左までスムーズな流れ
白い清潔感のあるキッチン。壁に向けて設置していて、間口が約3メートル半ほどです。右から左までスムーズに動作が流れるように考えています。
右端が水回り。シンクから食洗器に洗い物を移しやすいように、シンクの右側に食洗器を配置しています。海外製の幅60cmの大きな食器洗い機は、小皿からガスコンロのゴトク部までを入れて、一日分の洗い物を一気に片付けてしまいます。
【オーダーメイドキッチン実例取材】衛生的な自動水栓
まず右端が水の場所。
シンクは中に段をつけ、水を使う作業をすることができます。汚れ物を洗う場所と食材を扱う場所が、シンクの中で分かれて清潔に作業できます。
水栓は手をかざすだけで開閉できる自動水栓。水栓に汚れが付かず、衛生的だといいます。ステンレスは拭くだけで掃除でき、Kさんの時短家事を支えます。日々の作業で自然につく傷も味わいになっていきます。
【オーダーメイドキッチン実例取材】上部扉内に水切りラック
その上の棚は、扉がふわっと上にあがり、最下段が水切りラックになっています。濡れたものを置いても、水滴はシンクへ。
食器や道具もそこから、ほぼ動くことなく出し入れできます。
【オーダーメイドキッチン実例取材】スムーズな配膳
キッチンから振り返った場所に配膳台があり、その下の収納には、ご飯茶碗、汁茶碗、お箸をセットにして収めてあり、しまうのも出すのもスムーズ。家族のうち手の空いた人が、さっとお膳を用意できるのです。
【オーダーメイドキッチン実例取材】「働きもの」なキッチン
そして左サイドのメインになるのがガスコンロ。
Kさんの優先した効率的なキッチン計画の中では、他の選択肢も考えたそうですが、「キッチンにガスがなければ、子どもが火を見て使う機会がなくなってしまうかもしれない、それはどうなのかな」―そんな想いがKさんの心をよぎって、ガスを選んだのだそうです。
Kさんはお気に入りの鋳物鍋や鉄のフライパンを使った後、タイマーをセットして火にかけて乾かすこともあります。「うっかり、カンカンに熱しすぎることがなくなりました」。ガスコンロのタイマーを「片付け」にまで使う発想が、新鮮です。
普段は野菜や魚など、食材をシンクで下ごしらえし、ガスコンロでさっと茹でたり蒸すだけの、素材の味を活かした料理が多いそうです。お皿を出して盛りつけて、振り返った配膳スペースに用意したお料理は家族がテーブルへ。
料理の準備も片付けるのも数歩歩くだけで済むキッチン。機能的でありながら、木目を活かしたダイニングの温かなインテリアと調和しています。片付けがすぐに済むから、ダイニングのテーブルでは娘の宿題を見たり、家族で話をする時間が生まれます。
おわりに
実はKさんのお仕事は医療関係。直接関係はなさそうなものの、作業効率や衛生、間違いのない手順が求められる環境にいるKさんの人生体験が、自然にキッチンに反映されています。小さなディテールも一つ一つに意味があり、説得力がありました。レストランの厨房や乗り物のギャレーを参考にしたキッチンは今までも見てきましたが、Kさんの家ではキッチン本来の目的を、改めて考えさせられたのです。
オーダーキッチン製作:ekrea オーダーキッチン
撮影/工藤朋子