日本のキッチンと言えば、白や木目などニュートラルな色柄を好む人が多いようです。キッチンメーカーも様々な色のバリエーションを増やし、多くの人の要望にこたえようとしていますが、なかなか大胆な色は選びにくいようです。
でも最近、とても増えてきたな、と思うのが黒いキッチンです。
黒というと重い色のように思えますが、実はインテリアを引き締めてくれる色なのです。いまはキッチンとリビングが一つになる間取りが増えています。
たとえばこのキッチン、黒という色がソファのあるリビングキッチン空間を、美しく引き締めています。
しかも黒の表現も2種類が使われています。手前のアイランドはピアノのようなつやのある黒のエナメル塗装。奥のキッチンは金属を特殊な加工をした発色した黒。少し光を吸い込むような、また違った黒です。テーブルやソファの素材感に合わせて、黒といっても今はさまざまな表現が可能なのです。
そして黒が似合うのはやはり男性かもしれません。下の写真は、ドイツで男性シェフが似合う場所をイメージして作られたスタジオタイプのキッチン。ぽんと家具のように置くだけで、はまってしまうのは、黒だからこその格好のよさ?
そんな黒のキッチン、素敵なマダムがとても上手に使いこなしているお家を訪ねました。吹き抜けの下に大きな黒いキッチン。テーブルコーディネートの教室も開いている彼女の家は、キッチンが主役です。オーダーメイドで製作しました。
広いワークトップは黒。ステンレスやガラスの器、クリスタル、ヴィンテージ風の木のトレイなど、お気に入りの持ち物が黒の空間でとてもシックに見えます。料理が始まって、雑然とした雰囲気に成っても、黒は散らかった感じに見えず、引き締めてくれる。そんな効果も感じさせます。本格的なガスコンロやレンジフードも黒の中では、プロの厨房風の雰囲気に。
さらに視点を変えると、黒の階段や照明、一部だけステンレスにした扉、キッチンにビルトインしたワインセラーの輝きが、黒の中にスマートに収まっています。
当初はカフェ風にしようか、真っ白なキッチンにしようか、さまざまなイメージがわいたそうですが、大人の女性の場所として選んだ黒は大成功だったようです。ただもちろん、広さも天井高もあるお家でしたから、重くならず、黒を効果的に使えたということもあります。黒いキッチンは空間の広さや天井高、窓の位置、床や家具の色や素材感など、全体とのバランスを考えて選びたい色ですね。