後悔しない注文住宅について、プロの見解を聞く

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注文住宅とは、施主(家を建てる人)の希望やライフスタイルに合わせて、間取り・デザイン・設備などを自由に設計・建築する住宅のことを指します。建売住宅や分譲住宅と異なり、土地の選定から設計、施工までのプロセスに施主が深く関わります。建築士やハウスメーカー、工務店と打ち合わせを重ねながら、プランを作成していきます。
自分のライフスタイルに完璧にフィットする空間、趣味を心ゆくまで楽しむ部屋、家族との理想の時間を過ごすための間取り―――。夢を形にできる注文住宅には、特別な魅力がありますね。
しかし、そのメリットの裏では「予算が大幅にオーバーしてしまった」「完成したけど、なんだか使いにくい」「もっとこうすれば良かった」といった後悔の声も・・・。注文住宅は、建売住宅や分譲住宅と比べると、割高になりがちです。せっかく時間とお金をかけて建てた家なのに、満足がいかない結果になるのは避けたいものです。
一生に一度の大きな買い物となる注文住宅で、満足のいく結果を得るためには、どんな秘訣があるのでしょうか。また、家づくりを始める前に、知っておきたい大事なポイントはあるのでしょうか。

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住まいづくりの専門家である山内亮美さんに、家づくりの前に知っておきたい成功の秘訣を伺いました。山内亮美さんはOZONE住まいづくりコンサルタント。建築士の資格を持ち、家を建てる人の立場に立って、家づくりをサポートする中立的な専門家です。長年、OZONE住まいづくりコンサルタントとして、家を建てたい方とハウスメーカーや建築家との間に入り、計画や調整を行いながら、理想の住まいづくりをサポートしてきました。
【注文住宅成功の秘訣1】 「普通でいいです」が最も危険。遠慮が最大の後悔につながる

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家づくりの打ち合わせの初期段階で、多くの人が建築家や設計士に対して、つい口にしてしまう言葉があります。それが「普通でいいです」という一言です。どう伝えたらいいか分からなかったり、専門家を前に遠慮してしまったりすることが原因です。
しかし山内さんは、この言葉こそが後悔の最大の原因になると指摘します。なぜなら、家族の数だけ「普通」の形は異なり、一人ひとりにとっての快適さも違うからです。曖昧なリクエストは、無難で特徴のないプランにつながってしまい、満足度に大きく影響してしまいます。
ここで重要なのは、自分たちの暮らしを客観的に分析すること。山内さんがまず行うのは、各家庭の現在のライフスタイルを朝起きてから夜寝るまで、徹底的に棚卸しすることです。
- 朝起きてから夜寝るまで、どんな流れで家にいるのか
- 趣味や在宅仕事を行うためのスペースはどうするか
- 家族一人ひとりに、どんな要望があるのか
- 将来の展望はあるか(例:子どもが独立したらコンパクトな住まいに引越ししたいなど)
このように、自分たちにとって大切な事柄を棚卸ししていく中で、どんな家がふさわしいのかが見えてきます。
例えば、「ペットの足を洗えるように、玄関に水道が欲しい」「夫婦でキッチンに立つから、通路は広めがいい」「生活動線を考えて、ベランダの近くに洗濯機を置きたい」「子ども部屋が欲しい」など、具体的な要望が出てきます。
自分たちのライフスタイルや、将来の展望を言語化するのは、簡単なことではありません。しかし、そうした努力が、未来の暮らしやすさを左右します。
【注文住宅成功の秘訣2】予算オーバーは"必ず起きる"と想定しておく

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注文住宅を考え始めると、最も気になるのがお金の問題です。山内さんによると、大抵のケースで予算オーバーは起きているそう。つまり、「注文住宅において、予算オーバーは必ず起きるもの」という前提で臨むべきだということです。
「価格は予算を超える可能性がある」という現実を最初から受け入れておくことで、冷静な判断ができます。将来の生活設計を考えた時に、払える上限額をそのまま予算としてしまうのは危険です。あらかじめ、多少超えても払える程度の金額に、予算を設定しておく必要があります。
また、注文住宅において予算オーバーが起きるのには、構造的な理由もあります。まず、建築家に設計を依頼した場合、デザインと施工が別会社のため、実際の工事費が見積もり段階で確定せず、最終的に10〜20%のズレが生じることがあります。
ハウスメーカーや工務店と進める場合でも、打ち合わせを重ねる中で「この設備を入れたい」「壁材をグレードアップしたい」といった希望が出てくるもの。良いものと比較すると、思わずそちらを選んでしまい、費用がかさんでいくことも珍しくありません。
また、打ち合わせでのやり取りにも、注意が必要です。顧客は「こうだったらいいな」と単に意見を述べているつもりでも、業者は「要望が追加されたのだから、当然予算は増える」と解釈します。顧客の立場から見れば、業者から「その分、予算が増えますが大丈夫ですか」と聞いてほしいものですが、『アップグレード=予算増』という認識の業者が多く、そうしたやり取りをせずに、予算だけが上がってしまうことも多いそうです。この認識のズレが、後々のトラブルの火種となるのです。
【注文住宅成功の秘訣3】成功の鍵は「日常の機能」と「非日常の夢」のバランス
満足度の高い家には、必ず2つの要素がバランスよく満たされていると山内さんは語ります。それが「日常の機能」と「非日常の夢」。
- 日常の機能:日々の暮らしを快適で効率的にするための実用的部分。無駄のない家事動線や、十分な収納スペースなど、生活のしやすさを支える家の土台となる部分。
- 非日常の夢:単なる快適さを超えて、住む人の心を満たし、究極の満足感をもたらす要素。リゾートホテルのような開放感かもしれませんし、バルコニーや庭を通して外界とダイナミックにつながる感覚の場合も。高い天井、趣味に没頭できる特別な空間、こだわりのバスタブなども、この「夢」を形づくる要素。

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「日常の機能」だけを完璧に追求した家は、とても暮らしやすいかもしれません。しかし、どこか物足りなさを感じてしまう可能性があります。家づくりにおける本当の成功とは、この両方を実現すること。自分の「夢」が何なのかを深く考え、それを伝えるための「勉強」も、家づくりにおける重要なプロセスです。
理想の『機能』と『夢』の設計図が固まったら、次はそのビジョンを現実に変える実行フェーズです。しかし、ここにも思わぬ落とし穴が潜んでいます。
【注文住宅成功の秘訣4】現場の職人との何気ない会話が、思わぬトラブルを招くことも

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家づくりが始まり、基礎ができ、柱が立つと、自分の家が形になっていく様子を見るのは大きな喜びです。顧客として、こまめに建築現場に足を運びたくなるのは自然なことですね。
しかし、ここに一つ、守るべき重要なルールがあります。それは「現場で職人さんに直接、変更の依頼や質問をしない」ということです。
すべてのコミュニケーションや質問は、必ず現場監督など、そのプロジェクトの責任者を通して行う必要があります。なぜなら、施主からの何気ない一言で職人さんが善意で作業をした結果、後から認識のズレが生じたり、想定外の追加料金を請求されたりするトラブルにつながることがあるからです。現場の指揮系統を乱さず、正規なルートで対話することが、スムーズな工事と良好な関係を維持する秘訣なのです。
現場を見に行きたい場合には、あらかじめプロジェクトの責任者に相談してから行くのが大切です。
注文住宅を建てる際の選択肢とそれぞれのメリット

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注文住宅を建てる際には、主に「建築家」「ハウスメーカー」「工務店」という3つの依頼先があります。どの選択肢にも特徴と得意分野があり、施主の価値観や優先順位によって最適なパートナーは異なります。
また、それぞれの実績やデザインの雰囲気などをウェブサイトを見て確認するのが大切です。特に工務店の場合は、10年以上の社歴があるなど実績部分も丁寧に見ておくと良いそうです。
- 建築家:施主のライフスタイルや敷地条件、家族構成、将来の暮らし方などを丁寧にヒアリングし、完全オーダーメイドの設計を行います。限られた土地を生かした設計や、個性的なデザイン、素材へのこだわりなど、「世界に一つだけの家」を実現できるのが魅力です。デザインや間取りに強いこだわりがある方、狭小地や変形地など、難しい土地を生かしたい方などに向いています。設計料が別途かかるほか、別途、施工会社の選定が必要になります。
- ハウスメーカー:品質や構造、断熱性能などが一定の基準で安定している点が特徴です。住宅展示場で実際のモデルハウスを見られるほか、保証・アフターサービスも整備されており、安心感と効率性を求める人に向いています。特に全国規模で展開しているハウスメーカーは、安心感があります。工期や予算を明確に把握して進めたい方やアフターサポートを重視したい方に向いています。ただ、設計自由度はやや低く、独創的なデザインや細部の素材選びには制約があることがあります。
- 工務店:柔軟な対応力とコストパフォーマンスに優れています。小規模ながらも職人との距離が近く、細かい要望に応じやすい点も魅力です。特に地域密着型の工務店は、地元の気候や土地事情を熟知した提案をしてくれることもあります。地元に密着した会社と長く付き合いたい方や、コストを抑えながら自由設計をしたい方に向いています。品質や対応力は会社ごとに差が大きく、信頼できる担当者や施工実績をしっかり確認する必要があります
おわりに
俗に「家は3回建ててようやく満足できるものになる」といわれます。満足できる注文住宅を建てるためには、自分たちの暮らしを深く見つめ、遠慮せずに要望を伝え、起こりうる現実を直視し、正しいコミュニケーションルールを守ることが大切です。理想の暮らしに近づく、家づくりができるといいですね。
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リビングデザインセンターOZONEでは、住まいづくりのサポートメニュー「OZONE家design」をご提供しています。住まいづくりコンサルタントが、新築・建て替え・リノベーションなど、お客さまそれぞれの家づくりのご要望に合わせてご対応します。
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◆電話番号:03-5322-6500(代)
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