先日、あるうつわ屋さんとお話をする機会がありました。
その方がおっしゃるには、最近のお客様は「このお皿は何に使うのですか? 」とまずうつわの用途を聞かれることが多いとのこと。本来、どのように使ってもいいのですが、どうも使用目的を決めたがる傾向があるようです。うつわは人や場面によって千差万別なのにもったいない・・・と嘆かれていました。
たとえば「カレー皿」は、カレー皿だけにあらず。あるときは花瓶がわりに、またあるときは箸入れにしたりと、臨機応変に対応するところに楽しさがあるのです。
見立ての文化が発達した日本では、お茶の世界でも元来の用途を越えて、色々な目的でうつわが用いられた歴史があります。現代の食卓でも、ぜひ自然な流れで見立てを継承していきたいですね。
うつわはキャンバスのようなもの。カタチに制約があるからこそ、自由に使ってみるのが面白いのです。
絵柄がたくさん入っていたり、個性的な色やカタチのものは料理や使い方を限定してしまうので、ここでは初心者さん向けに、シンプルな白いお皿で例をご紹介しましょう。
シンプルな白い皿
今回はシンプルな白い皿として、小さめのリム皿を選びました。これに色々盛りつけていきます。
手作り豆腐と色々薬味の場合
きつねそばの場合
ニンジンのスパイシーサラダの場合
ブーケパンの場合
うつわ選びは自分選び
みなさんがうつわを購入する際は、色々な料理に合いやすそうなものを想定して選ぶかと思います。おそらくそこは価格やデザイン、使い勝手など自分の中の落としどころで決まるわけです。
そして子供のような好奇心を持って、様々な角度から使い方を想像します。
でも本当に愛着のあるうつわをさまざまなシーンで活かした方が、「なんとなく登場回数が多そう」という視点で選んだものよりも、きっと暮らしが豊かになるはずです。
では、自分にピッタリのうつわはどのように選べばいいでしょうか?
値段は気にしない!? 好きなうつわを選んでみよう
「よし、それならば自分らしいお皿を探してみよう」と決心しても、膨大な商品の中から見つけ出すのは大変です。
いっけん同じようなシンプルな皿でも、それが北欧のデザインで2000円以上するものもあれば、100円均一もあります。ところが価格が高いから良い、安いから悪いものとは一概には言えませんよね。こんなふうに迷いだすと、また無難な路線に戻ってしまうかも知れません。
そこで、まずは100円でも10,000円でも良いので、これだと思った物を買って、とことん使ってみてください。長いこと使い倒していくうちに、「自分にとって使い勝手がよいか? 本当に好きか?」が見えてくると思います。いつしか価格が高い低いよりも大切な、あなただけの視点が浮かび上がってくるのです。
私のお気に入りのうつわも、値段も価値もバラバラです。大切なのは「好き」だということ。下記は20倍も金額に差がありますが、どれがどれだか分かりますか?
ある期間うつわを持っていると、よく使うものと使わなくなったものが出てきます。それらの比較をして分析してみると、何かしらの答えが必ずあるはずです。
丈夫であったり、耐熱だったりするような実用面かも知れませんし、よく食べる食材に合った形なのかも知れません。お客様に評判がよい、家族が気に入って毎日のように食卓に並ぶ・・・など、頻度が高い理由はそれぞれです。もちろん、デザイン重視でも構いません。そこから導きだされた、あなただけの視点を大切にしましょう。
うつわを探すトレーニング
誰しも買い物で失敗した苦い経験がありますよね? 安いからといって、ちょっと妥協して購入した洋服は結局着なくなったりします。
うつわも同じ。安易に買ったものはいずれ使わなくなります。失敗した理由を明確にしないと、同じ失敗を繰り返すのです。つまりいつまでも高い勉強代を払い続けなければなりません。
もちろん、手あたり次第どんどん買って経験値を積んでいくという手段もありますが、現実的ではないですよね。あまり勉強代をかけず、お気に入りのうつわを見いだしていく方法があります。
それは日々のトレーニング。
うつわ屋さんに入ったら、「この中で、ひとつだけ食器を買うとしたら自分はどれを選ぶか?」と考えてみるのがおすすめです。実際には買わなくても、1分でもいいから真剣に考えます。これを繰り返すことで、いつの間にか好みのうつわを見いだす目が鍛えられてくるのです。
他にも、美しく盛られた料理を前にした際には、その容器がなぜ美しいと感じるのか?を自分なりに答えを出すことも勉強になります。
「これが欲しい! 」と思ったら、どこのブランドかを確認することで、お気に入りのエッセンスを見いだすことができるかも知れません。美しいと感じる現象を考え抜くことはもの凄くよい勉強になります。
みなさんの暮らしがより輝くよう
それから最後にもうひとつ。自分が手にしたその器を、「10年経っても使い続けたいか? 20年経ってもそうか? 」と問いかけてみてください。
そのうつわが“自分にとって錆びない”ものを選ぶことが重要だからです。時が経っても中古品ではなく、自分の中でビンテージになるもの。壊れても修理して使い、一緒に育つものであるものということです。
そんな基準で手元にやってきた器は、結局自分自身を選んでいるのと同じだと思います。どんな自分でありたいのか? それがDiscovery's Eyeなのです。
3回に渡って、日々の食卓に自分なりの視点を入れることの楽しさをお伝えしてきました。少しでも取り入れて頂くことで、みなさんの毎日の暮らしがより輝くお手伝いができることを願います。お読みくださいまして、ありがとうございました。