必ずしておきたいペット用の防災備蓄

提供:ペット災害危機管理士会
なぜペットのために防災備蓄が必要なのでしょうか。
「例えば、南海トラフ地震のような大規模災害が起きた時は、ペットに関わる物資は届くのが遅れる可能性が高いと考えます。災害時には、人用の支援物資でさえ届くまでに時間がかかります。災害時には人間用の支援物資でさえ届くまでに時間がかかりますので、ペットフードなどはさらに遅れることが予想されます。そのためペットのための防災備蓄が必要なのです」(鈴木さん)
備蓄しておきたいもの
ペットのために備蓄しておきたいものにはどのようなものがあるでしょうか。以下の表にまとめました。

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※これらを3日分非常持ち出し袋に入れ、避難時に持ち出しましょう。残りは家の頑丈な場所に保管しておくとよいでしょう。
ペット用防災備蓄のポイント
ペット用の防災備蓄では、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。備蓄方法と備蓄品についてのアドバイスを伺いました。
ペットフードと水は普段から多めに買い置きを
「大きな災害に備え、普段から自宅に2週間分のペットの水と食料を用意しておくことをおすすめします。避難時に持ち出せる量は限りがあるとしても、避難所が家から近く、家屋が倒壊などしていなければ、ペットの食料を家に取りに帰るという選択肢もあるからです」(鈴木さん)
ペットフードは普段食べているもの+αを
災害時のストレス下で、ペットが普段と違うものを食べない可能性があることを知っておいてほしいと鈴木さん。避難所でペットフードが配布されても、それをペットが食べるかどうかはわかりません。
「そのため防災備蓄には、日頃食べているフードを用意しておくことが大切です。また、ドライフードは水が必要になるため、ウェットフードも一緒に準備しておくと安心でしょう。ただし、ウェットフードは賞味期限が比較的短いので注意してください」(鈴木さん)
また、ペットがストレスで食欲がない時などに好きなおやつも役立つので、もしもの時のために買い置きしておくとよいそうです。
水は人間用と共通で備蓄してもOK
「災害時に備えて人間用の水を備蓄している方は多いと思いますが、ペットがいる場合はペットの飲み水も必要なので多めに備蓄を」と鈴木さん。
ペットにはNGなミネラルウォーターもあるので、ペットボトルの水を備蓄する時には、ペットが飲んでよいものかどうかを獣医さんに確認しておくとよいでしょう。
ペット用備蓄もローリングストック方式を活用
「人間の食料と同様、ペットフードもローリングストック方式で管理するのがおすすめです。普段から食べ慣れているものを使用することで、緊急時のストレスが軽減できます」(鈴木さん)
持病のある場合は薬を多めに

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「持病があるペットの場合、災害時にすぐに動物病院に行けるとは限りません。獣医師に相談の上、可能であれば1カ月分程度の予備の薬を常備しておくことをおすすめします」(鈴木さん)
防災グッズは玄関近くに
ペット用の備蓄品は、玄関近くに置いておくのがおすすめです。
「基本的な防災グッズの保管場所は玄関付近がよいでしょう。玄関は比較的頑丈な構造のため、家屋が倒壊しても取り出せる可能性が高いからです」(鈴木さん)
ペットの命を守るために必要な対策やしつけ

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大切なペットを災害から守るために、普段からどのような準備をしておくとよいのでしょうか。
迷子対策

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「災害時はイレギュラーなことが起こりやすいので、ペットとはぐれてしまうリスクも高くなります。ペットとはぐれてしまっても再会できるよう、ペットの身元が確認できる対策をしておくことが大切です」(鈴木さん)
迷子札(犬・猫)
飼い主の連絡先を書いたものを首輪などに装着します。プレート型やカプセル型、シリコンタグなどさまざまなタイプがあり、飼い主に直接連絡できるQRコード付きのものもあります。
マイクロチップ(犬・猫)
動物病院などで犬や猫の皮下に装着します。マイクロチップの識別番号で身元を含む動物の情報がわかります。
犬鑑札、狂犬病注射済票(犬)
登録された犬、または狂犬病予防注射を受けた犬であることを証明するための標識です。自治体により標識の色や形は異なります。
※犬は生涯1回の登録と、年1回の狂犬病予防接種が法律上の義務となっています。
感染症対策

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「避難所では多くのペットが集まるため、感染症予防が重要です。法律で義務付けられている狂犬病予防接種はもちろん、そのほかの予防接種も適切に受けておく必要があります。持病や老齢などでワクチン接種が難しく未接種の場合は、その旨を記した獣医師の証明書を用意しておくことをおすすめします」(鈴木さん)
キャリーケース、ケージに慣れさせる

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災害時の混乱を避けるため、キャリーケースやケージ、クレートなどに普段から慣れさせておくことが大切です。
「キャリーケースは動物病院に行く時だけ使っているという飼い主さんも多いかもしれませんが、病院に行く時だけの使用だと、ペットが嫌な記憶と結びつけてしまいます。キャリーケースを怖がらないようにするには、普段から使い、慣れさせておくことが大切です。そのためには段階的に練習をしていきましょう。
解体できるタイプのキャリーケースの場合、まずは底の部分だけを置いて、その上でエサを与えるところから始めます。それに慣れたら上部をかぶせ、最後に扉を閉めるという順序で慣らしていくことをおすすめします」(鈴木さん)
基本的なしつけをしっかり行う
「特に犬の場合、避難所での共同生活を考えると、お座り、待て、呼び戻しなどの基本的なしつけができていることが重要です。災害時に備えて、呼び戻しの練習は、長めのリードを使用して段階的に行うことをおすすめします」(鈴木さん)
避難所での生活に備え、犬の場合、かまないようにさせるのも必要なしつけです。
「かみ癖のある犬のしつけは、叱るよりも『理解させて改善させる』ことが大切です。原因に応じて正しいアプローチを取り、安心・信頼・一貫性を軸にしつけると効果的です。以下のような方法を試してみて、本気かみ、流血、コントロール不能などの場合は、問題行動専門のドッグトレーナーに相談してみるのも一つの方法です」(鈴木さん)
- かんだら怒らず冷静に「ノー」と短く低く一貫して伝える。
- かんだら遊びを中断して立ち去る。かんだら楽しいことが終わると学習させる。
- かんでよいものを与える。かみたい欲求を満たすためにおもちゃやガム等を活用する
ペット関連の災害情報などをチェックする

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災害時にはペットと一緒に避難するということを前提に、普段から情報収集しておくことが大切です。知っておくべき情報とその収集の仕方について鈴木さんに伺いました。
ペットと避難できる場所を確認しておく

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自宅近くの指定避難所の情報を事前に確認しましょう。ハザードマップには、ペットとの避難に関する情報が記載されている場合もあります。
「お住まいの地域の指定避難所が、ペット同行避難に対応しているかどうかを事前に確認しましょう。また、災害の種類によって使用できる避難所が異なる場合もあるので、その点も確認が必要です」(鈴木さん)
ペット同行避難が可能な指定避難所が自宅近くにある場合は、同伴方法(飼育方法)や受け入れ可能なペットの種類、頭数なども事前に調べておくと安心です。
避難ルートを確認しておく
避難指示が出た場合に備え、住んでいる自治体の防災マップやウェブサイトなどで避難ルートを確認しておきましょう。
避難時にはペットを連れ、人間の荷物のほかにペット用の荷物も持つことになるため、ルートをあらかじめ確認しておくことはとても重要です。例えば、キャリーに入れて運ぶ必要があるペットの場合、無理なく運べる距離かどうかや、途中に歩きにくい場所はないかなども確認しておきましょう。
「災害の種類によっては使えなくなる避難ルートもあります。地震の場合はブロック塀の倒壊、水害の場合は浸水など、想定されるリスクを考慮して、複数の避難ルートを確認しておきましょう」(鈴木さん)
地域のコミュニティーを大切にする
地域の人々との良好な関係を築くことが災害時のペットトラブルを回避する鍵になることもあるそうです。
「災害時に備えて、普段から近所のペット飼育者のコミュニティーに参加していると、ペットを災害から守るための情報共有や助け合いの基盤となるでしょう」(鈴木さん)
ペットの情報をまとめておく

提供:ペット災害危機管理士会(会員に販売)
ペットの情報と飼い主の情報をまとめてメモにしておき、避難時にも携帯するとよいでしょう。
ペットとの避難については、以下の記事でもご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
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災害時、ペットとの避難はどうする? どうなる?【ペットの防災vol.1】
おわりに
災害への備えは、決して特別なことではなく、日常生活の延長にあるものだと鈴木さんは話します。
「災害が起きた時のために準備するのではなく、日常的に使っているものを災害時に役立てるという『フェーズフリー防災』という考えがありますが、ペットの防災についても同じです」(鈴木さん)
普段からペットのことを考え、大切にしていくことが、災害から愛する命を守ることにつながっていくのは間違いないでしょう。