プロに聞く最強術「柔軟剤のニオイの消し方」
お下がりの衣類をもらったり、フリーマーケットで購入した時に気になるのが、柔軟剤のニオイ。最近の柔軟剤はニオイが長持ちするように改良されており、「洗濯してもなかなか落ちない・・・」という悩みは多いようです。
自分の好きな柔軟剤のニオイをつけ直したい人もいますし、香害が気になる人や化学物質過敏症で柔軟剤のニオイを避けたい人も。
衣類に染みついた柔軟剤のニオイを消したい場合には、どうすれば良いのでしょうか。
染み抜きセミナー講師の横倉靖幸さんによると、柔軟剤(柔軟仕上げ剤)の性質を理解することで、効果的に落とせるのだと言います。
「柔軟剤(柔軟仕上げ剤)は油と馴染みやすい『親油性』という性質があります」(横倉さん)
柔軟剤は親油性の性質を持ち、繊維をごく薄い油の膜で包み込むような働きをします。この膜のおかげで繊維同士の摩擦を防ぎ、柔らかい肌触りになるのだと言います。
「この薄い油の膜を破壊するのに、最も効果的なのは『食器用の中性洗剤』を使用することです。食器用洗剤はひどい油汚れでも落としてくれますね。これは、食器用洗剤に含まれる、陰イオンの界面活性剤の力です」(横倉さん)
また、柔軟剤が親油性の性質を持つのは、陽イオンの界面活性剤が含まれているため。食器用洗剤には陰イオンの界面活性剤が多量に含まれており、陽イオンの界面活性剤と化学反応を起こすため、より柔軟剤の成分が繊維から落ちやすくなるとのこと。
食器用の中性洗剤を使えば、陽イオンを陰イオンの力で引きつけて、さらに界面活性剤の力で、繊維から柔軟剤の成分を引き剥がしてくれるんですね。
衣類には使えない食器用洗剤も・・・
「ただし、『除菌』と書かれているタイプの食器用洗剤の場合、中性洗剤に含まれる除菌成分が衣類を漂白してしまうことがあります。衣類の色落ちが発生してしまうことがあります。使用しないようにしましょう」(横倉さん)
せっかく柔軟剤のニオイが落ちても、色落ちしてしまったら残念ですね。表示をしっかり確認するようにしましょう。
食器用洗剤で柔軟剤のニオイは本当に落ちる? 実際に試してみた!
実際に、食器用の中性洗剤を使い、柔軟剤のニオイが取れなくなった衣類を洗ってみました。
用意するもの
・バケツなど
・40℃くらいのぬるま湯
・食器用洗剤(中性洗剤)
手順
1.バケツに40℃くらいのぬるま湯を入れ、その中に食器用の中性洗剤を入れ1~2%の濃度にする
(今回は1Lの水に10㏄の洗剤を入れました)
2.半日ほどつけ置きをする
3.柔軟剤のニオイ残りをチェック
4.ニオイが取れていたら軽くすすぐ
5.洗濯機に入れいつも通り洗う
6.ニオイが取れていない場合には、再度1から5までの作業をニオイが取れるまで繰り返す
かなりニオイの強い柔軟剤だったのですが、4~5時間食器用洗剤を薄めたお湯につけただけで、ほとんどそのニオイが分からないほどになりました。「つけておくだけ」「すすいで再度洗濯機にかけるだけ」と、ほとんど手間がかからない方法なのが良いですね。
柔軟剤のニオイを消すとネットで話題の「クエン酸・重曹・ドライヤー」、専門家の見解は・・・?
ネット上では「クエン酸」「重曹」「酸素系漂白剤」につける方法や「ドライヤー」の熱風に当てて落とす方法が話題です。柔軟剤のニオイを消す方法をネットで検索すると、クエン酸が最も多く検索されており、次にドライヤー、重曹の順で検索されていました。こうした話題の方法にも、有効性は期待できるのでしょうか。
横倉さんによると、「柔軟剤は親油性の性質を持つため、油を落とす働きがある洗剤を使う方法は理屈的には正しい」とのこと。
柔軟剤が作り出す油性の薄い膜は酸性のため、同じ酸性のクエン酸よりは、アルカリ性の重曹や酸素系漂白剤の方が効果が期待できるようです。クエン酸、重曹、ドライヤーの効果について詳しく伺いました。
クエン酸の効果
「柔軟剤の中にはカプセルにニオイを閉じ込めて、衝撃や汗の酸、体温に反応させることで、ニオイが長続きするように工夫されたものも。汗の酸で溶けるなら、同じ酸性のクエン酸でも効果があると思われがちですが、柔軟剤は複雑な配合で作られています。酸の力だけでニオイを消すのは不可能でしょう」(横倉さん)
重曹の効果
「柔軟剤は親油性の性質を持ち、薄い油膜で衣類を包みこんでニオイをキープする仕組みのため、油汚れに強い重曹や酸素系漂白剤でも一定の効果は期待できます。特に重曹は陰イオンの性質があるため、柔軟剤の陽イオンと化学結合し、繊維から剥がれやすくしてくれます」(横倉さん)
ただし、重曹に界面活性剤は含まれていないので、食器用の中性洗剤のように、繊維から柔軟剤を剥がして泡で包み込むような効果は期待できないとのこと。重曹はある程度の効果は期待できるものの、食器用の中性洗剤ほどではないのですね。
ドライヤーの効果
「柔軟剤の中には、熱や衝撃を受けてカプセルが溶けて香るタイプもあります。こうしたカプセルの場合、ドライヤーの熱風の熱や衝撃で、カプセルが溶け、ニオイの主成分の気化を促進してくれる可能性があります」(横倉さん)
クエン酸、重曹、ドライヤーなどさまざまな方法がありますが、横倉さんのイチオシは陰イオンの界面活性剤を多量に含む「食器用の中性洗剤」。最も高い効果が期待できるのだそうです。
柔軟剤のニオイを消す効果を比較「クエン酸」「重曹」「ドライヤー」「食器用中性洗剤」
「ポリエステルなどの化繊素材」や「毛足の長い素材」の場合、柔軟剤のニオイが残りやすいと言われています。ここではニオイが残りやすい衣類を使いたかったので、ポリエステル98%ポリウレタン2%、ブークレ起毛加工された靴下を4枚、実験に使用しました。
「クエン酸」「重曹」「食器用中性洗剤」の場合
上の手順同様、最初に40℃のぬるま湯に1%程度のクエン酸や重曹、食器用中性洗剤をそれぞれ入れ、1時間つけ置きします。つけ置き後に1枚ずつ、ぬるま湯で押し洗いしました。
※上の写真は2枚ですが、3枚の靴下をそれぞれ溶液につけ置きしています。
「ドライヤー」の場合
最初に衣類にドライヤーの風を1分ほど当てて温め、40℃くらいのぬるま湯で押し洗いします。
1枚ずつ小型洗濯機で洗い、脱水して乾燥させます。
乾かした後にニオイを比較してみました。ニオイが全くしなかったのは、やはり食器用中性洗剤でした。ほんのりニオイが残っていたのが、重曹とドライヤー。クエン酸については、ほとんど効果は感じられませんでした。
柔軟剤のニオイを消す効果が高い順に並べると、
食器用中性洗剤>重曹=ドライヤー>クエン酸
となりました。
やはり、食器用中性洗剤が一番効果が期待できるようです。クエン酸は除菌や消臭作用が高く、トイレや喫煙後のアンモニア臭などアルカリ性のニオイに効果がありますが、柔軟剤のニオイにはそれほど効果が期待できないことがわかりました。
ニオイが残りやすい柔軟剤と残りにくい柔軟剤は何が違う?
柔軟剤によってニオイが残りやすいものと残りにくいものがあると思います。これは何が違うのでしょうか?
「数年前、海外製の香りの強い柔軟剤が流行しました。そこで日本のメーカーも同じように香りの強い柔軟剤を作り出したわけですが、香りの強さを全面に主張するタイプの柔軟剤は、ニオイが残りやすい傾向にあります。一方で、『ほんのりと香るニオイ』と記載されているものは、ニオイ残りしにくいですね」(横倉さん)
香りの強さは、商品のパッケージ裏に記載されている商品が多いようです。柔軟剤のニオイが苦手な方や、気分によって複数の柔軟剤を使い分けたい方には、香りが弱めの柔軟剤を選ぶと良いですね。
また中には、無香料で衣類を柔らかくする効果に特化した柔軟剤もあります。ニオイが苦手な方には、こうした選択肢も1つですね。
おわりに
柔軟剤のニオイを消す方法をお聞きしました。家に必ずある食器用洗剤を使用すればニオイが消せるというのは驚きですね。「いつもはお気に入りのニオイだけど、今日だけTPO的に気になる」といった場合にも便利な方法です。ぜひ試してみてくださいね。