マネーリテラシーって何? それって必要?
最近スーパーに行くと、いろいろなモノの値段が上がっていることに驚きませんか? これから先、楽しく安心して暮らすためには、節約やお金のムダ使い防止だけではパワー不足かもしれません。そこで、注目されているのが「マネーリテラシー」です。
マネーリテラシーとは、お金に関する知識や判断力のこと。お金は生活に欠かせないものなのにも関わらず、そのことについて勉強しないままここまで来てしまったという方も多いのではないでしょうか。
では、お金の勉強ってどうすればよいのでしょう。手軽に実践できることはあるのでしょうか?
お笑い芸人で税理士の税理士りーなさん(以下りーなさん)に、マネーリテラシーの意味と初心者向けの実践方法を教えていただきました。
マネーリテラシーを身に付けるメリット
私たちがマネーリテラシーを身に付けるメリットとして思いつくのは、
- 金融詐欺の被害に遭いにくくなる
- 資産形成(お金を貯める)に役立つ
- 借入について正確な知識が得られる
といったことではないでしょうか。
これに対し、りーなさんは、マネーリテラシーは「生きる力」だと言いきります。
「私はマネーリテラシーを身に付けるメリットは、『生き抜く力が強くなって、人生が豊かになること』だと考えています」(りーなさん)
実際、りーなさんはマネーリテラシーが欠如していたことで、損をしていた方の例もたくさん見てきたそうです。そうならないためにも、マネーリテラシーについてしっかり知って実践していきましょう!
税理士りーなさんおすすめのマネーリテラシー向上作戦
「お金の知識」といっても、お得な買い物方法から税制までジャンルは多種多様。どこから学んで、どのように活かしていけばよいのか迷ってしまいます。
そこでりーなさんに、初心者におすすめのマネーリテラシー向上のための方法を3つ教えていただきました。
その1 税金の「扶養」や「配偶者控除」「配偶者特別控除」を再確認する
「家庭単位で税金について考える場合、こまごまと節約する前にまず税控除に関する部分を考えることがマネーリテラシー向上作戦の1つ目です」とりーなさん。税の見直しは生活水準を変えることなく家計を助けることにつながります。
その中でも「配偶者控除・配偶者特別控除」について、正しく理解しているかどうかを確認することが大切だといいます。特に、家計のためにパートで働いている方は注意が必要とのこと。
「『私、扶養なので、お給料を103万円以内に抑えています』というパートさんは本当に多いです。でも配偶者に関わる103万円の壁は、もう5年以上前から消えているんですよ」(りーなさん)
ここで知っておかないといけないのが、「扶養の壁」には2種類あるということ。
1つは「税金の壁」で、もう1つは「社会保険の壁」。
さらに「税金の壁」には、「控除を受けられる壁」と「自分が税金を負担する壁」があり、税金を負担する壁は「住民税」と「所得税」で異なるといいます。
参照:国税庁 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直しについて
税金の壁:住民税がかかるのは年収いくらから?
りーなさんは「パートの年収を103万円以内にしていたのに、住民税の納付書が届きました。これ払わなくてはいけないのですか? 」という質問をよく受けるそうです。
これに対して、りーなさんは、「『扶養の控除を受けられるかどうか』と『個人に税金がかかるかどうか』は別のハナシです」と説明します。
「住民税はお住まいの自治体によってルールが違います。だからパートの年収は概ね90数万円程度に抑えておけば、住民税を払わないで済む可能性が高いのではないでしょうか? といった程度しか回答できないのです」(りーなさん)
過去の相談者さんの事例では、パートの年収が90万円あるだけでも住民税を払わなくてはいけない自治体もあったそうです。お住まいの自治体でのルール(条例)をしっかり把握しておくといいでしょう。
税金の壁:配偶者特別控除を満額受けるには?
次に教えていただいたのは、所得税に対するよくある勘違いです。
例えば、パート年収が「103万円を超えると主な稼ぎ手の配偶者特別控除が受けられなくなってしまう」「150万円を超えてしまったら配偶者特別控除は0になる」よく耳にする内容かもしれませんが、どちらも勘違いだとりーなさんは言います。
「パートで働く方の多くは、主な稼ぎ手の配偶者特別控除38万円の恩恵をまるまる受けたいと考えています。それなら気にすべきは、103万円ではなく『150万円の壁』。パートの年収が150万円を超えると、38万円の控除額が減っていくんです。
とはいえ、150万の壁を超えた途端にゼロになるのではなく、減り方はじわじわ。パート収入150万円を超え155万円以下の場合は36万円の控除。わずか2万円減るだけです。それ以降もちょっとずつ減るだけなんですよ。だから150万円の壁もあまり気にしなくてもよいと思っています」(りーなさん)
「主な稼ぎ手の配偶者特別控除が減り始めるのは、パートで150万円を越えて稼いだ時から。でも控除額の減り方は緩やかなので、あまり神経質になる必要はない」と覚えておくとよさそうです。
こうした制度を丁寧に説明していくと「そういう仕組みだったのですね」と納得される方が多いそう。一方で「それだったら来年は扶養の枠を気にせずしっかり働きます」と宣言する方もいるそうです。
税金の壁:配偶者(特別)控除が受けられる人・受けられない人
「税金の扶養」の所得税においては、主な稼ぎ手の所得にも注意が必要です。
下の表は、夫婦の一方が主たる稼ぎ手(A)、他方がパート(B)で働いているケースの配偶者(特別)控除額について記載したもの。
「つまり、主な稼ぎ手の給与所得が1,095万を超えてしまうと、そもそも配偶者(特別)控除は使えないのです。でも過去の相談では、ご主人の給与所得が1,095万円を越えていて配偶者特別控除の対象外でもあるにも関わらず、『パート収入を103万円以内にしとかないと』と気にしていた方もいらっしゃいました」(りーなさん)
ご自身が配偶者(特別)控除を受けられるのかどうか、しっかり確認して把握しておきたいですね。
社会保険の壁:パート年収130万円の壁の存在
「130万の壁」というと「それ、103万の間違えでは?」と思われがちですが、「いいえ、130万円の壁はあるのです! 」と、りーなさん。
「交通費を含むパート年収が130万円を越えると、社会保険料(厚生年金、健康保険)を自分で負担することになります。これは住民税と同じく、パートで働いている方ご自身が負担する金額です」(りーなさん)
りーなさんは、「パート勤務だと社会保険を負担することによる収入減を気になさる方も多いのですが、社会保険料を払うことで将来の年金受取額が増えるというメリットにも着目してほしいですね」と言います。
配偶者(特別)控除は主な稼ぎ手に関する税金の優遇制度で、所得税・住民税や社会保険はパート勤務者本人に関する税や支出だと知っておくことが大切とのこと。
家計収入に大きく関わる税控除。きっちり38万円の配偶者特別控除を最大限使って家計に残るお金を増やすのか、それとも働き方を変更して家計収入自体を増やすことや、自身の将来の受取年金額を増やすほうがよいのか。家庭ごとにしっかり方針を決めることがポイントになります。
その2 「NISA」と「iDeCo」で運用に挑戦しよう!
りーなさんが教えてくれたマネーリテラシー向上作戦の2つ目は、投資に関係する税金優遇制度「NISA」と「iDeCo」のしくみを知って、軽~く実践してみること。
配偶者(特別)控除を活用して手元に残るお金が増えた時や、扶養から外れて家計の収入が増えた場合など、そのお金を運用することを考えてみましょう。
NISAは、一定金額の範囲内で購入した株式や投資信託などの投資商品から得られる利益に対し、税金がかからなくなる制度。投資商品の購入代金は所得控除の対象になりません。NISAには、枠内で好きな時に好きなだけ投資商品を買い付ける形の「NISA」と、少額から毎月一定額の投資商品を買い付ける形の「つみたてNISA」があります。現状「NISA」と「つみたてNISA」の併用はできないため、どちらか一方を選ぶ必要があります。どちらを選んだ場合でも資産を好きなタイミングで売却できるため、住宅購入や子どもの教育資金の積み立てなどに向いています。
iDeCoは個人型確定拠出年金のこと。加入の申込、掛金の拠出、掛金の運用の全てを自分で行い、掛金とその運用損益との合計額を基に給付を受け取ることができます。掛金の全額が所得控除の対象になるため、所得税や住民税が軽減されます。また、iDecoは原則として、60歳まで引き出すことができません。そのため、老後の資金を積み立てたいときにおすすめです。
「お給料から所得税や住民税を天引きされる会社員の場合、税金額を自分でコントロールすることはできないと思い込んでいる方も多いです。でも実際は、iDeCoをやった人とやらなかった人では、控除額が異なってきます。正しい知識=マネーリテラシーがあれば、自分にあった控除を活用し、税額を減らすことができるんです」(りーなさん)
なお、iDeCoとNISAの使い分けについては「『税金をたくさん払っています。少しでも税負担を軽くしたいです』という方にはiDeCoをおすすめしています。一方で『ちょっと投資をやってみたい。税金の負担はあまり感じていません』という方には、NISAをおすすめしています。ただしiDeCoは60歳まで引き出せませんので注意してください」とのこと。
「『投資』にどうしても怖いイメージがあるという方は、毎月100円からできる『つみたてNISA』をやってみましょう。どんな感じで投資したお金が増えたり減ったりするのかが分かるようになりますよ」(りーなさん)
100円からの投資なら、気軽に挑戦できますね。
りーなさんのところには、「知り合いからiDeCoやNISAがいいと聞いたからやってみた」という方も多く訪ねてくるそうですが、知人にすすめられてiDeCoやNISAを始めた方には気になる傾向が見られるとのこと。
それは、始めてから2~3カ月程度の期間で価格が下がってくると「なんか怖い。このまま持っていたらもっと損するかも」と思い、売ってしまうということだそう。
「投資というのは、そんな短期的の話ではないのです。もっと壮大なスペクタクルでお送りするハナシ。ちょろんとしたハナシではありません。もっと先の人生を見ましょうよ! 預貯金とは異なり、投資は将来有望な投資先に資金を投じ、お金を増やしていくものです。調子が良い時も、そうでない時もあります。焦らないためにも、自分が投資しようとしている商品がどういった時に値段が上がって、どういった時に値段が下がるのかを理解した上で、投資商品を買いましょう」(りーなさん)
投資は、目先の価格の上下に一喜一憂せずに、長い目で見ていくことが大切だということですね。
なお、NISAは2024年以降、制度改正が実施されます。主な変更点は以下の3つです。
新しいNISAは、非課税となる年間投資枠の金額が大きくなったことと、非課税保有期間が無期限になったことで、投資を考える人にとってより使いやすい制度となりそうです。
新NISA制度の施行をきっかけに、投資について勉強してみるのもマネーリテラシー向上のためにおすすめです。
その3 「ふるさと納税」を利用して税額控除を受けよう
りーなさんのマネーリテラシー向上作戦の3つ目は「ふるさと納税」を利用することです。
ふるさと納税とは、1月から12月の間に自分の選んだ自治体に寄付(ふるさと納税)を行った際、寄付額のうち2,000円を越える部分について、翌年の住民税から原則として全額が控除される制度です(控除の上限は、総所得金額等の40%です)。
しかも、「ふるさと納税」は、納税(寄付)した自治体から、お礼の品が届くものが多いので、楽しみながら翌年の住民税を減らすことができます。
ただし、ふるさと納税を行う場合は「限度額を知っておくべき」とりーなさんは言います。
例えばりーなさんは、12月に訪れた相談者さんから「ふるさと納税を、よく分からないけれどやっています。上限を越えたらダメと言われて今までは毎年1万円ずつ。でも、来年は2万円やってもいいかなと思っているのですが、いかがでしょうか? 」と尋ねられたことがあるそう。
そこで、りーなさんが計算してみたところ、この相談者さんの限度額は12万円でした。それを知った相談者さんは慌てて12月中に限度額までふるさと納税を行ったそうです。それによって11万8,000円分の税額控除になり、翌年の住民税負担が大幅に軽減できることになりました。さらに各自治体からの返礼品も受け取れます。知っているのと知らないのとでは大きな差が生まれるという例ですね。
なお、ふるさと納税の寄付金控除額は総務省が提供しているシミュレーションなどでも試算できます。詳細は下記をご参照ください。
総務省 ふるさと納税のしくみ 税金の控除について
子どもにもマネーリテラシーは大切!
2021年から、小学校でも「お金の学習」が始まっています。「マネーリテラシー=生きる力」だからこそ、子どもたちにはぜひとも身に付けてほしい力です。
りーなさん「子どもにマネーリテラシーを身に付けさせるには、親がお金について話し合う様子を見せていくのがよいと考えています。それによってお金についてどういった着眼点で考えたらよいのかを、子どもが学ぶよい機会になるからです」
子どもにお金の大切さを伝えるための2つのポイント
りーなさんは、夏休み期間に親子で受講できる「お金って何?」という講座を個人で開催しています。そこでは以下のようなポイントを教えているといいます。
1.お金はどこからやってくるの?
講座では、おうちの人が働いた結果、お金がわが家にやってくるということを子どもたちにまず伝えるそうです。なぜなら子どもは、お金は親のお財布に湧いてくると勘違いしていることもあるのだとか。特に小さいお子さんは「親のお財布=いつでもお金が入っていて何でも買ってもらえる」と思っていることが多いそうです。可愛いけれど、ちょっと困りますね。
2.お金は使うと減ってしまう!
お財布の中のお金が増えないなら、今お金を使うと、将来使うお金が減ってしまうということを教えます。りーなさんは「1年間、毎日100円のお菓子を買うとするよ。お菓子は毎日食べられるけれど、1年後にゲームが欲しいと思ってもゲームが買えなくなるよ」というように、将来において本当に欲しい時に欲しいモノを買えるように、計画的に使うことを説明するとのことです。
りーなさんの「お金の授業」と子どもたちの反応
りーなさんは子ども向けの授業で、「ペットボトルのお茶を買う」計算を取り入れているそうです。
りーなさん「160円のペットボトルのお茶を毎日購入するとします。仮に自宅で水筒にお茶をいれた場合は10円かかります。ペットボトルを購入するのと、水筒を持ち歩くのでは、1年間でどのくらいの差額が発生しますか? 」
上の問題の答えは(160-10円)×365=54,750円。
「この54,750円を、子どもがどう思うかがポイントです。子どもたちは『え? 5万円! 毎日ペットボトル買ってお茶飲むだけなのに? 』となります」(りーなさん)
講座に参加した子どもの親御さんから後日「うちの子が毎日水筒にお茶を入れて持っていくようになったんです!」と連絡があったそうです。わが子が勉強したことを行動に移せるようになったことに感激したとのことでした。
この事例のように、子どもたちも今まで何となくやっていた行為を、マネーリテラシーの向上によって意味のある行為に変えていけるといいですね。
家族の絆を深める「わが家のマネーリテラシー」
りーなさんは、夫婦間でお金について話し合い、知識や財産を共有する方が、より安心で幸せな生活が手に入る可能性が高いと考えています。
特に共働き夫婦は、各々がお金の管理をする傾向がみられるそうですが、りーなさんが講師を務めるオンラインセミナーの受講をきっかけに、今後の資産形成について話し合うようになったご夫婦もいらっしゃるそうです。
家計を共有するなら、習慣的に購入してしまっている無駄なものがないか、何となくお金を使ってしまうことがないかを確認すると同時に、支払い方法についてもチェックしてみましょう。同じモノ・サービスでも買い方や支払い方法によって「お得さ」が違ってきます。
例えば、電気契約の見直しが家計の固定費の節約につながることも。
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一人では続けにくいお金の勉強も、家族と協力しながらだと続けやすそうです。
お金に関する情報を家族間でシェアすることで、家庭のマネーリテラシーを向上させるとともに、家族の絆も深められるといいですね。
おわりに
税理士りーなさんにお話を伺って、マネーリテラシーは、よりよく生きるために役立つ知識であることが分かりました。例えば、税金についての知識が増えれば家計に入るお金も増える可能性があります。そして、増えたお金は、税金優遇のある投資で運用したり、ふるさと納税で節税しながら返礼品を楽しむという活用法も。家族みんなでできることから実践して、マネーリテラシーを底上げしていきましょう。
参考:総務省 ふるさと納税ポータルサイト ふるさと納税のしくみ
参考:金融庁 NISAとは?
参考:厚生労働省 iDeCoの概要