「ゲームやりすぎ」が子どもに及ぼす影響とは
スマートフォンやタブレット、携帯型ゲーム機の登場で、いつでもどこでもゲームができるようになりました。つい夢中になって、あっという間に時間が過ぎた・・・という経験は、子どもに限らず大人にもあるのではないでしょうか。
子どものネット依存などの問題に取り組む団体「エンジェルズアイズ」代表で、都内の小中学校で情報教育アドバイザーなどを務める遠藤美季さんは、子どもがゲームをやりすぎることで「心身が成長する貴重な時期の大半をゲームに費やすことになってしまう」と言います。
ゲームをやりすぎるとどのような影響が出るのでしょうか。遠藤さんに詳しく伺いました。
目の疲れや肩凝り・頭痛、体力の低下
ゲームをしていると明るい画面を見つめることになるので、目を酷使します。
また長い間同じ姿勢を続けるため、悪い姿勢のままでゲームをすると首や肩が凝り、ひどくなると頭痛がすることも。
加えて、ゲームのやりすぎは運動不足にもつながります。
「体を動かさなくなるわけですから、筋力、体力が落ちる恐れがあります」(遠藤さん)
睡眠不足、生活リズムの乱れ、成績の低下
夜遅くまでゲームに夢中になれば、それだけ寝る時間が遅れ、寝不足になります。そのために朝起きるのが遅くなったり、起きられなくなったりすることも。
「寝る直前まで明るい光にさらされれば、脳がさえて眠れなくなります。夜の時間に深い眠りが得られず、朝起きられずに遅刻や不登校の一因になることも心配です」(遠藤さん)
また、ゲームに時間を取られてやらなければいけないことを後回しにしてしまい、結果として成績が下がるということもあるようです。
「ゲーム依存症」という病気になる
ゲームのやりすぎで、食事や睡眠など生きるために必要なことよりもゲームを優先するようになってしまえば、それは「ゲーム依存」の状態です。※
ゲーム依存の状態を放置すると「ゲーム依存症」という重い症状になります。アルコール依存症やギャンブル依存症と同じ精神疾患(病名は「ゲーム障害」)で、前述した心身の変調がますます目立つようになります。
何より深刻なのは脳への影響。依存症になると、脳の働き方が変わってしまうとのこと。具体的には、ゲームの刺激に慣れることで反応が鈍くなり、もっと強い刺激をゲームに求めるようになったり、衝動が抑えられなくなったりします。
遠藤さんは「ゲームを生活の中で最優先にして他のことを疎かにすれば、さまざまなことを経験する機会を逃してしまいます。勉強や読書、運動といったことだけでなく、家族や友達など目の前にいる人とおしゃべりしたり遊んだりすることや、ときには何もせずぼーっとするということも実は大事な経験なのです。こうした機会がゲームによって奪われてしまいます。
これは、心と体が成長する時期の子どもにとって特に深刻な問題。依存症についての知識や意識を持たずにゲームをすることで、他の経験を自ら失ってしまうことに気付いてほしいのです。また、依存症になってしまったら、どうやってゲームをする時間を減らしていくかを一生考えていかなければなりません」と警鐘を鳴らします。
※参考:ゲーム依存相談対応マニュアル作成委員会「ゲーム依存相談対応マニュアル」(令和4年3月発行)
ゲームをやりすぎる原因と、「やりすぎ」の目安は
そもそも、なぜゲームをやりすぎてしまうのでしょうか。
ゲームには、敵を倒したりステージをクリアすることで得られる達成感や、毎日のログインでボーナスポイントが付いたり、期間限定で入手できるアイテムが用意されていたりと、ゲームをする人を夢中にさせるさまざまな工夫がなされています。
また、ゲームをやりすぎてしまう要因のひとつとして遠藤さんは「やめるタイミングが難しいこと」を挙げます。
「例えばオンラインで人とつながってやるゲームでは、一緒にゲームする仲間と協力してプレイします。自分が抜けると迷惑がかかると考えたり、相手に合わせてやめるタイミングを逃したりして、その結果、長時間続けてしまうのです」(遠藤さん)
さらに、遠藤さんは「ゲームのやりすぎは、社会構造や家庭環境にも原因があります」と指摘します。
「共働き世帯も増え、今は親がとても忙しい時代です。忙しいお父さんお母さんは無意識に、ゲームや画面を子どもの遊びの相手にしがちです。子どもがゲームに夢中になっている間は家事などがはかどりますから『子どもが楽しく過ごしてくれれば』『少しの間だけなら』と子どものゲームを認めるうちに、長時間使用につながることがあります」(遠藤さん)
「ゲームやりすぎ」かどうか判断するには
ゲームをやりすぎているかどうかを見極めるためのポイントについて、遠藤さんに以下のとおり教えていただきました。
【ゲームのやりすぎを見極める主なポイント】
- 長時間のゲーム使用を指摘すると異常なほど怒る
- 親に隠れてゲームをしている
- 今まで遊んでいた友達と遊ばなくなる
- 深夜にゲームをしていて朝起きない、遅刻する
- 成績が下がる、宿題や課題をやらずに学校で注意を受ける
- 家族で出かけるなどの誘いに乗らない
- ゲーム以外に関心がなくなってきた
- ゲームに関することを聞かれたときに、うそをついたりごまかしたりする
「ここで挙げたポイントは、思春期の特徴である『親に反抗する』『親と一緒に行動したがらない』と重なる部分もあり、ゲームだけに原因があるとは言えません。とにかく子どもの様子をよく見て、『変化』に注意すること。以前と違う、というちょっとした変化に気付ければ、事態が深刻化する前に対処できます」(遠藤さん)
子どもがゲームと上手に付き合えるようにするためには
子どもがゲームをやりすぎることなく、うまく付き合っていくために、親ができることにはどんなことがあるでしょうか。
遠藤さんは「まず親自身が、ゲームについてよく知っておくことが大事。身の回りにはゲームができる機器がたくさんあり、子どもがそれにいつまでも触れずにいるのはほぼ不可能です。深刻な事態に陥るのを防ぐためには、ゲームについて親子でよく話をすることも大事です」とアドバイスします。
話し合って約束を決める
親子で話し合い、ゲームをするときの約束を決めましょう。
「できれば最初のうちは、親子で一緒にゲームをして、使いながら教えるとスムーズです。『〇分やったからやめようか』『ご飯までの約束だよね』『最初に区切りを決めておこう!』と、自然に約束作りができます」(遠藤さん)
使う場所は、親の目が届く範囲に限定するのがやりすぎを防ぐコツ。
「自分の部屋などの個室で一人でゲームをさせるのは基本的にNGです。親子のコミュニケーションを妨げないよう、もし自室でやるならドアを開けるように決めておきましょう」(遠藤さん)
また、使用時間を設定することも大事です。「寝る前や深夜はしない」と決めたり、子どもが小さいうちは「1日〇時間まで」と時間で区切ったりする方法もあります。
「親子で意見が対立したら、1日24時間を、必要なこと・大事なことから埋めて、残った中でゲームに使える時間を考えましょう。睡眠、食事、入浴、学校、勉強、ぼーっとする時間・・・と紙に書き出していくと、ゲームを何時間もする余裕がないと分かります。
物事の優先順位を決めておくことも重要です。食事や睡眠以外にも、家の手伝い、学校の勉強、家族と過ごす時間、友達との外遊びなどが、成長のためにとても大事なことだと伝えるようにしましょう」(遠藤さん)
ゲームの危険性について正しく知る・教える
遠藤さんは、ゲームのやりすぎで依存症になる危険性を教えることも、ゲームのやりすぎを防ぐ効果があると言います。
「『ゲームをやりすぎて病気になる人がいる』と伝えると、そこで初めてゲームの怖さに気付く子もいます。すると自分から、やりすぎないように気をつけるようになった、という話を聞きます」(遠藤さん)
子どもへの伝え方として、直接話をするほかに、「ゲーム依存やルールに関する本を目につくところに置いておく」というのもよい方法です。
「親の言葉は耳に入らなくても、ネットやゲームのルールを教える本を子どもの目につくところに置いておくと、ゲームやスマホに興味のある子は自分から手に取ります。分からない言葉などを聞いてきたら、話をするチャンスです」(遠藤さん)
マンガを取り入れた本だと子どもが読みやすいそう。親子で一緒に読んで話し合ってみるのもいいですね。
ゲーム以外に楽しいことを見つけられるようサポートする
他にすることが見つからない場合や、ストレス発散のためにゲームをしていることもあります。そういうときには、ゲーム以外に楽しいこと、興味あることを見つけると、ゲームのやりすぎを防げます。
「ゲームのやりすぎに限らず、いろいろな気分転換の方法を知っておくのはよいことです。デジタルでの気分転換は逆にストレスにつながることも多いので、できればリアルな物事で何をするかを考えましょう」(遠藤さん)
気分転換には、本を読んだり、体を動かしたりいろいろな方法が考えられます。遠藤さんが行ったアンケート調査では「バットで素振り」「寝る」などと答えた子もいたそうです。
「ゲームが現実逃避になり依存していくことも。気分転換する方法を複数持っている子の方が、ゲームへの依存度は低いです」(遠藤さん)
親ができるのは、子どもが選択肢を増やせるようサポートすること。例えば、親子で参加できる体験教室などもおすすめです。
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子どもとゲームの話をする時はタイミングと言い方に注意する
ゲームのことで話がしたいときは、タイミングと言い方に注意が必要です。
とはいえ、ゲームに夢中になっているときは聞く耳を持ちません。ゲームをしていないときや、今やっているゲームに飽きた頃合いを見計らって声をかけましょう。
また、ゲームの最中に話しかける場合、言い方は特に重要です。いきなり「やりすぎじゃない?」と言うのはNG。「やりすぎ」と決めつけず、まずは「今、何してるの?」「ちょっといい?」と声をかけてから話し始めるのがよいでしょう。
「相手が子どもだからと上から一方的に言うのは逆効果。コミュニケーションの取り方次第で結果は変わります」(遠藤さん)
【実践編】子どものゲームやりすぎを防ぐためにやってみたこと
遠藤さんのお話も踏まえ、ゲームをする子どもに親がどう対応したか、小学生のお子さんを持つご家庭にお話を伺いました。その実例をご紹介します。
【小3女児の母親】小学生向けのルール本で正しい知識を習得
「ゲームは親戚の家でたまに遊ぶ程度でしたが、学校の友達にスマホを持つ子が増え『スマホが欲しい』『ゲームがしたい』と言うようになりました。
そこでゲーム依存やルールに関する小学生向けの本を図書館で借りて渡すことに。
マンガで読みやすかったせいか、すぐに読み終えたようで『ゲームをやりすぎたら大変なことになるんだね。友達と遊ぶ方が楽しいし、スマホはまだいらない』との返事が。それから1カ月ほどたちましたが、その後ゲームをしたがりません」
このように、まだ日常的にゲームをしていない子どもに対しては、早い段階で正しい知識を教えておけるとよいでしょう。
【小3・小1男児2人の母親】子どもに決めさせ、うるさく注意しないよう配慮
「小3の長男と小1の次男がいるわが家では、目を休ませる時間の確保(ゲームを20~30分したら1回休憩する)を条件にゲーム使用を認めています。小1の次男にはまだ時間の感覚がないので、使用時間ではなく「〇時〇分まで」と本人に決めさせてます。
それでも時間を過ぎてしまうことがありますが、あまりうるさく言わないよう心がけ、叱ったり注意したりせず、『何して遊ぶ?』などと声をかけ、ゲームから気をそらすようにしています」
既に日ごろからゲームを楽しんでいる子どもに対しては、やみくもにゲームを禁止したりせず、話し合って本人に使用時間を決めさせたり、親が様子を見ながら適宜声かけを行うなどの工夫が重要になります。
おわりに
子どもがゲームをやりすぎないためには、早めのルール作りが大事ということ、また、ゲームについて話し合う場合はタイミングや使う言葉が重要であることが分かりました。
子どもがゲームと上手に付き合えるよう、様子をよく見て、変化を見逃さずに見守っていけるとよいですね。