クラフトビールとは? 大手メーカーのビールと何が違う?
最近流行りのクラフトビール、一般的なビールとは何が違うのでしょうか?クラフトビールの種類にはどんなものがあり、どのように選んだら良いのでしょうか? また、美味しい飲み方や料理との合わせ方とは一体どういったものなのでしょうか?
2019年11月10日、東京ガスのWeb会員サービスであるmyTOKYOGASの会員の方を対象としたクラフトビールのセミナーが行われました。講師は有限会社エールハウスの鈴木博行氏と上田裕樹氏、ともにブームが起こる前からクラフトビールを扱ってきた第一人者です。
東京ガスの料理教室では、myTOKYOGAS会員さま向けにこうしたスペシャルなイベントを開催しています。今回、申し込みが殺到した本セミナーの内容の一部を特別にご紹介していきます。
(鈴木氏)アメリカのクラフトビール協会が定めているクラフトビールの基準は、
・小規模であること
・独立していること
・伝統的手法であること
の3つです。
日本の場合は酒税法改正より「小規模な醸造所で造られる、醸造量が少ないビール」をクラフトビールと呼んでいます。現在では400以上あります。
例えばアメリカの場合、大手のビール会社の傘下や提携先の企業だと、クラフトビールと呼ばない人が多いですが、日本ではそうしたブランドも存在しています。
実は違いがない⁉ クラフトビールは地ビールとどう違うの?
(鈴木氏)「地ビールとクラフトビールは別物」だという印象があるかもしれませんね。実は、明確な違いはなく、小規模醸造のビールはどれもクラフトビールと呼ぶことができます。国内外のブランドどちらも含みます。
1994年の酒税法改正により、ビールの最低製造数量が2,000キロリットルから60キロリットルへと規制が緩和されました。これにより、小規模のビール会社が各地にできました。これが「地ビール」と呼ばれ、ご当地の土産物などとして人気を博しました。
その後、2000年代にアメリカから輸入されたクラフトビールが流行し、何度かのブームを経て、クラフトビール文化は定着してきました。今では国際大会で入賞する日本のブランドも出てきています。
種類を知りたい! 基本のクラフトビールの7つの種類とは? スタイルって何?
(鈴木氏)クラフトビールの種類は、原料や製法によって分類されます。こうした分類は「スタイル」と呼ばれています。100種類以上のスタイルがあり、今も新たなスタイルが登場しています。
すべて覚えるのは難しいですが、多くのスタイルは代表的な7つの種類に分類されます。この分け方を知っておくだけでも大まかな傾向が掴めますし、好みのビールが見つけやすくなりますよ。
【クラフトビールの種類1】ラガーのゴールド
スタイル:ピルスナー、ラガー、ヘレスなど
色:黄金色
味:苦味と爽快な喉ごし
日本の大手ビール会社の缶ビールと言えば、この「ラガーのゴールド」の中のピルスナーが主体。そのため、日本人に最も馴染みのあるタイプの味と言えます。
【クラフトビールの種類2】ラガーのアンバー&ブラウン
スタイル:ダークラガー、ウィンナーラガーなど
色:銅のようなダークブラン系、赤と黄色の間の土っぽいアンバー系
味:やや落ち着いた風味。香りとコクを味わうように、ゆっくり飲むのがオススメ
【クラフトビールの種類3】ラガーのブラック
スタイル:シュバルツビアなど
色:黒に近い深くて濃い色
味:スッキリとした味わいで、コーヒー系のアロマと煎った麦芽が香ばしい
【クラフトビールの種類4】エールのゴールド
スタイル:ケルシュ、ブロンドエール、ストロングゴールデンエールなど
色:ブロンド系のゴールドイエロー
味:柑橘系の爽やかな香りでスッキリとして飲みやすい
【クラフトビールの種類5】エールのアンバー&ブラウン
スタイル:ペールエール、アルト、ブラウンエール、IPAなど
色:淡い黄金色、褐色
味:麦芽の甘みとコク、苦味のバランスが良い。軽い口当たりでスッキリとした味わい
【クラフトビールの種類6】エールのブラック
スタイル:ポーター、スタウトなど
色:ダークブラウン・ブラックなど黒に近い濃い色
味:香ばしいロースト香やスモーキーな香り。主張が強いので、チョコレート系のデザートによく合う
【クラフトビールの種類7】エールのホワイト
スタイル:ヴァイツェン、ホワイトエールなど
色:白濁した明るい黄色(色が白濁しているのは、小麦由来のタンパク質成分による)
味:スパイシー&フルーティーで、ホップの風味や苦味が弱く、コクや甘みのあるソフトな味わい
(上田氏)スタイルは主にパッケージの表面に記載されています。店頭でどのクラフトビールを買うか悩んだら、スタイルをチェックしてください。ブランドによって味は違いますが、大幅に好みから外れることは少ないと思います。
クラフトビールはなぜ味のバラエティが多いの? その理由とは?
(鈴木氏)ビールには、主にエール(上面発酵)・ラガー(下面発酵)・自然発酵の3つの製法があります。
エール(上面発酵)
常温に近い高めの温度で発酵させる製法。
気泡とともに酵母がビール液の上面に上がってくるため、「上面発酵」と呼ばれます。紀元前からの伝統的な製法。冷蔵技術がなかったため、常温でも発酵できる酵母が使われてきました。
ラガー(下面発酵)
約10度の低温でエールより長い時間をかけてじっくり発酵させる製法。
製造中に酵母が下に溜まることから「下面発酵」と呼ばれます。雑菌が繁殖しにくく品質管理をしやすいため、大量生産が可能に。日本の有名ブランドのビールはラガー製法で作られたものが大半です。
自然発酵
人工的に培養した酵母ではなく、自然にある酵母を使って発酵させる製法。
(鈴木氏)日本の代表的なビールはラガー系が主流なので、「ビール=喉ごしがよく苦味の強いお酒」とイメージされるのかもしれません。でも、お話してきたようにさまざまな製法があり、味も香りも多様なんですよ。
クラフトビールの主な原料とは? 麦芽、ホップに〇〇⁉
(上田氏)ビールの基本的な原材料は、麦芽・ホップ・酵母・水の4種類です。組み合わせ方もそのビールの持つ個性です。また、麦芽の焙煎度合いや加えるホップによっても味が左右されます。クラフトビールが盛んなアメリカでは、数え切れないくらいのクラフトビールが日々作られていますよ。
クラフトビールをより美味しく! 冷やし方や注ぎ方のコツとは?
(鈴木氏)クラフトビールを飲む際には、温度管理・グラス・注ぎ方の3つが大事なポイントです。このポイントを押さえれば、自宅でも飲食店のように美味しく飲むことができます。
【自宅でクラフトビールを楽しむコツ 1】温度管理
(鈴木氏)冷蔵庫のドアポケットでビールを冷やす方が多いですが、ここは冷蔵庫を開閉する度に温度が変わったり、振動がある場所。激しい温度変化や振動はビールの質を劣化させるため、避けるのが懸命です。冷蔵庫なら開閉の回数が少ない野菜室や冷蔵庫の奥など温度変化の少ない場所が良いでしょう。
また、ビールをより美味しく飲むには、スタイルによって温度を変えるのも良いですよ。
喉越しの良いビールは冷たいままで、香りを楽しみたいビールは、ぬるめの方が香りをしっかり感じられます。
エール系は9~12℃
ラガー系は5~7℃
が良いでしょう。
冷蔵庫の温度は、冷蔵室で2℃~6℃、野菜室は約3℃~7℃が目安なので、ラガー系は取り出してすぐ美味しく飲めます。エール系は冷蔵庫から出して少し常温に馴染ませてから飲むと良いでしょう。
最初は冷たく一口、少し時間を置いてまた一口など、味の変化を楽しむのも良いですね。
【自宅でクラフトビールを楽しむコツ 2】グラスにこだわる
(鈴木氏)グラスの形状によって味わいの感じ方も変わります。クラフトビールのスタイルごとに、いくつかグラスを用意できたら良いのですが、それは難しいですよね。
クラフトビール用にグラスを用意するのであれば、写真のようにガラス製で、飲み口が広め、脚のあるタイプがオススメ。こうした形状のグラスなら、どんなクラフトビールにも合いますよ。ガラス製なのでクラフトビールの色も楽しめます。
ステンレスのグラスは温度が一定に保て、耐久性があるというメリットがあります。TPOや好みに合わせて、グラスは選んでくださいね。
グラスのお手入れ方法
グラスのお手入れの仕方にもコツがあります。
表面に油汚れが残っているとビールを注いだ時にしっかり泡立ちません。油汚れがスポンジを介してビール用のグラスに付かないよう注意してください。食器用とグラス用とスポンジを2つ用意するのも手です。
また、ゴミや拭き跡がつくので布巾などで拭くのは控えてください。自然乾燥が一番です。この2つに注意するだけで、注いだときの泡立ちが全然違いますよ!
【自宅でクラフトビールを楽しむコツ 3】「三度注ぎ」
(鈴木氏)ビールの注ぎ方は3回に分けて注ぐ「三度注ぎ」をしましょう。飲食店のような、ふわふわの泡立ちが再現できますよ。
三度注ぎの方法1.
まず、勢いよくグラスに注ぎ、しっかり泡をたてます。
泡がグラスの8−9割までになったら、一度手を止めます。
三度注ぎの方法2.
泡と液が1:1になるまで、しばらく待ちます。
三度注ぎの方法3.
泡がグラスから少し出る位までゆっくりと注ぎます。
しばらく待つと、泡が落ち着くので、液がグラスの6-7割くらいになったら再度注ぎます。
三度注ぎの方法4.
泡がグラスから少し盛り上がるまで注ぎ足して完成です。
今回は缶ビールでしたが、瓶ビールから注ぐときも同じように注いでみてくださいね。
泡は絶対に立てたほうがいい?
(鈴木氏)ラガー系はクリーミーな泡があると美味しく感じられるかもしれません。また、三度注ぎの場合は、泡がきめ細やかでクリーミーになるだけではなく、炭酸量が減ることで口当たりが優しくなります。
ただし、泡を立てなくてもよいタイプのビールもあります。
クラフトビールと料理の組み合わせを楽しむ! ペアリングの方法とは?
(鈴木氏)ペアリングの方法は主に3つあり、どれを試しても構いません。
色々なペアリング方法がありますが、複数のクラフトビールや料理を同時に楽しむ場合には、味の薄い組み合わせ順で味わうと良いですよ。味が濃い料理と合わせるのは難しいので、最後にするほうが良いでしょう。
ペアリングの基本1. クラフトビールの産地の料理と合わせる
(鈴木氏)クラフトビールの基本は麦芽・ホップ・酵母・水ですが、他にもその土地のスパイスや産物を加えることが多いんです。そのため、クラフトビールの産地の料理との相性が良いですよ。
例えば、ドイツのクラフトビールにジャーマンポテト、イギリスのクラフトビールならフィッシュアンドチップスなどです。
ペアリングの基本2. クラフトビールの色と料理の色で合わせる
(鈴木氏)クラフトビールの基本の7種類をご紹介した際に、それぞれの色をご紹介しましたが、クラフトビールの色と料理の色が近いものを合わせます。
例えば、色の濃いビールには煮込み系の濃い色の料理が合いますし、淡い色のビールには、サラダ系や魚介系もよく合います。
ペアリングの基本3.クラフトビールの香りと似た香り(または逆の香り)の料理に合わせる
(鈴木氏)クラフトビールの香りと近い香りの料理を選ぶ方法もあります。
例えば、IPAは柑橘系の香りが強いので、柑橘系のドレッシングをかけたサラダと合わせます。サッパリした爽快感の相乗効果を楽しめます。
また、真逆の香り同士を組み合わせる方法もあります。例えば、ほろ苦い香りが強いスタウトに甘い香りのチョコレートケーキを合わせます。こうした上級テクニックもおもしろいですよ。
おわりに
クラフトビールとは小規模醸造のビールのこと、種類が豊富で奥深い世界です。飲み比べや料理とのペアリングを通じていくつかのスタイルを知ると、ビール選びがますます楽しくなりそうですね。
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