【だしの使い分け方の前に】そもそも「だし」とは?
「だし」は魚介や野菜など味の出る素材を水につけたり煮出すことで、うま味成分を抽出した液体です。
味には「五味」と呼ばれる5つの基本味があります。「だし」に含まれるうま味は、甘味、塩味、酸味、苦味に次ぐ第5の味覚といわれています。
うま味成分には、植物性の素材から取れる「グルタミン酸」、動物性の素材から取れる「イノシン酸」、しいたけに含まれる「グアニル酸」などがあります。
【だしの使い分け方】かつおだし
かつお節は、水揚げしたかつおの身をおろして煮熟(煮詰めること)し、骨抜きしたものを何度も燻し、乾燥を繰り返して作られます。燻すことでかつお節独特の香りが生まれます。
燻し終わったら、カビがつきやすくなるように表面を削り、カビ付けを行います。カビを付けることで、カビの成長の過程で内部の水分を吸収し、乾燥を助けると共に、微生物の働きによって発酵・熟成が進みます。
その後天日干し、カビの払い落とし、カビ付けを繰り返してさらに水分を抜いていきます。最終的にできたかつお節は、水分含有量が12~15%まで低下し、重量は約6分の1にまでなるそうです。
このように多くの工程を経て作られたかつお節は、豊かな風味とうま味を持ち、「イノシン酸」が豊富に含まれています。
かつおだしは、「すまし汁」や「茶碗蒸し」など、だしが主役の和食に向いています。
【だしの使い分け方】昆布だし
昆布だしは上品で控えめなうま味を持ち、「グルタミン酸」が豊富に含まれています。
日本の昆布の約90%は北海道全域でとれるそう。昆布は産地によってさまざまな種類があり、特徴が異なります。主な昆布の種類と特徴をご紹介します。
真昆布(まこんぶ)
厚みがあり幅が広く、最高級の昆布と言われています。主に「だし昆布」や「佃煮」、「塩昆布」に使われます。上品な甘みをもつだしが取れるので、「お吸い物」などにおススメです。
羅臼昆布(らうすこんぶ)
香りが良く黄色味を帯びた濃厚でコクのあるだしが取れます。「だし昆布」として使用する他、「佃煮」や「おやつ昆布」などに使われます。細切りにしてそのまま食べたり、「酢こんぶ」にするのも良いそうです。
利尻昆布(りしりこんぶ)
透明で風味の良い高級だしが取れ、「会席料理」などによく使われるそうです。「だし昆布」として使う他、「湯豆腐」などにもオススメです。
日高昆布(ひだかこんぶ)
濃い緑に黒味を帯びた昆布で、柔らかく煮上がるので「昆布巻き」などに使われる他、「佃煮」や「おでん」などにも使われます。
【だしの使い分け方】合わせだし
アミノ酸系(昆布などに含まれるグルタミン酸)の成分と、核酸系(鰹節などに含まれるイノシン酸)の成分を合わせることでうま味の相乗効果が生まれ、うま味が強くなると言われています。
昔の人々はこの相乗効果を感覚的に理解し、昆布とかつおの合わせ出汁は昔から使われてきました。素材の味を引き出すことができる合わせだしは、【幅広い料理】にオススメです。
【だしの使い分け方】煮干しだし
煮干しだしのうま味成分は、かつおだしと同じイノシン酸です。
煮干しだしは、かつおだしに比べて酸味が弱く、香りが強く濃厚な風味のだしが取れます。「みそ汁」や「麺類のつゆ」、「煮物」などに向いています。
そのまま使用したり、頭と腹わたを取り除いて苦味を抑えたりと、地方や料理によってさまざまな使い方があります。
【だしの使い分け方】しいたけだし
干ししいたけから得られるグアニル酸は、鰹節や煮干しと同じ核酸系に分類されます。
干ししいたけは、低温でゆっくり戻すとうま味がよく出ます。時間はかかりますが、水でゆっくりもどしましょう。香りとコクのある味わいになります。
急いでいるからとお湯などでもどすと、苦味が出てしまうことがあります。
干ししいたけのだしは、かつおや昆布とあわせることがほとんどです。独特な風味をいかし「煮物」「中華の炒め物」「炊き込みご飯」など、戻したしいたけ自体も一緒に料理に使うのがおススメです。
おわりに
いかがでしたか? 和食に欠かせない「だし」。素材によって風味が異なり、それぞれに相性の良い料理があります。だしを上手に使うことで、いつもの料理がひと味違ったものになるかもしれませんね。料理やお好みに合わせて、ぜひ使い分けてみてくださいね。
参考:株式会社にんべん「鰹節が出来るまで」
参考:日本昆布協会「昆布の種類(昆布いろいろ)」