前回のおさらい
お気に入りの服にシミが付いたり、虫食い穴があいたなんて経験をしたことはありませんか? 気に入ってた服ほど着る頻度も高く、洗濯の回数も増えるので、徐々にほつれてきたり、擦り切れてきたりするもの。そんな、もう着れないと諦めてた服をよみがえらせる「ダーニング」という方法が近年注目されています。ダーニングとは「繕うこと」を意味する英語で、イギリスで古くから行われている衣類を修繕する針仕事のこと。
初回ではダーニングの魅力や基本の道具について、2回目ではバツダーニングとゴマシオダーニング、3回目ではバスケットダーニングをテキスタイルデザイナーの野口光さんに教えていただきました。
ハニカムダーニングをしてみよう!
今回紹介するのは、穴に向かってぐるぐるとブランケットステッチを刺していく「ハニカムダーニング」。蜂の巣のような模様が生まれるので、そう呼んでいるようです。大きな穴や広範囲に付いてしまったシミにも使えるテクニックです。
ハニカムダーニングする服
今回は長年履いていて擦り切れてしまった、パンツの裾にあいた穴をダーニングします。
野口さん「今回はお気に入りだったパンツの裾の穴あき。元のデザインと履きやすさが気に入っていたとのことでしたので、元のデザインを損なわないようにしたいと考えました。シンプルなパンツの場合、糸選びが難しいと思います。目立たないデザインにする場合は、服の布の織り糸を見て、それと同じ色、または同系色の糸、それも難しい場合は同じトーンの色の糸を選ぶといいでしょう」
ハニカムダーニングの仕方1
服を裏返します。表側からダーニングしたい部分にダーニングマッシュルームを当てて、ヘアゴムでしっかりと固定します。
野口さん「ハニカムダーニングは表側を見ながら刺していく他のテクニックとは違い、裏側から刺していきます。完成まで、表側を見ないで進めていきます」
ハニカムダーニングの仕方2
穴の周り1㎝のところにチャコペンシル(ない場合は鉛筆などでもOK)で印を付けます。
ハニカムダーニングの仕方3
糸を50㎝程度でカットし、針に糸を通します。糸端は玉結びせずに、印から3㎝程離れたところに針を刺し、印に針を出します(★)。
ハニカムダーニングの仕方4
糸端は10㎝程残します。縫い始めの糸端はダーニングが終わった後に始末するので、そのまま休ませておきます。
ハニカムダーニングの仕方5
★から左に0.5㎝のところで、中心に向かって針を刺します。約0.5㎝中心側に針先を出し、そのままの状態で右から左へ糸をかけ、針を引き抜きます。1針刺せました。
野口さん「これは刺繍のブランケットステッチと同じ刺し方です。糸は引き過ぎないようにするのがポイント。もちろんゆる過ぎてもだめなので、適度な強さで引いてください」
ハニカムダーニングの仕方6
同様にして、印の上を左側へ刺し進めていきます。
ハニカムダーニングの仕方7
途中で糸が短くなった場合、残りが10㎝程度になったら糸を替えます。
野口さん「糸は同じ糸でも構いませんが、違う糸にするのがおすすめです。素材や太さなどを変えても楽しいですよ」
ハニカムダーニングの仕方8
針に新しい糸を通し、最後の針目から約0.5㎝左、印上に中心に向かって針を刺し、中心側約0.5㎝のところに針を出します。針先に前の糸をかけ、針を引き抜きます。2本の糸端は同じくらいの長さにそろえ、邪魔にならないように避けてまち針でとめておきます(ない場合はマスキングテープでとめてもOKです)。
ハニカムダーニングの仕方9
前の針目から0.5㎝左、印上に中心に向かって針を刺し、中心側約0.5㎝のところに針を出します。針先に新しい糸をかけ、針を引き抜きます。同様にして左側に刺し進めます。
ハニカムダーニングの仕方10
印の上をぐるりと刺し終えたら、刺し始めでかけた糸に針を通します。これで1段目が終わりました。
ハニカムダーニングの仕方11
2段目を刺していきます。1段目のステッチの内側から中心に向かって針を刺し、中心側約0.5㎝のところに針を出します。針先に糸をかけて、針を引き抜きます。同様にして左側に刺し進めます。
野口さん「針目の間隔は1段目に合わせる必要はありません。自分が心地よく刺しやすい間隔で刺し進めましょう」
ハニカムダーニングの仕方12
糸が短くなったら7~8と同様にして糸を替えます。
ハニカムダーニングの仕方13
2段目が刺し終わりました。3段目を刺していきます。
ハニカムダーニングの仕方14
3段目が刺し終わり、穴の際まできました。ここから先は穴を覆うのに厚みや強度が必要なので、糸は太い糸か2本取りに替えます。
ハニカムダーニングの仕方15
穴の際から0.3㎝外側に針を刺し、穴から出します。糸をかけて針を引き抜きます。これをくり返し、穴の際を1段刺します。前の糸と替えた新しい糸の糸端はそろえてまち針でとめておきます。
ハニカムダーニングの仕方16
穴の際が刺し終わりました。ここからは布をすくえないので、前の段の糸をすくって刺し進めていきます。
野口さん「穴を埋めようと細かく刺す必要はありません。今までと同じ間隔で刺し進めるのがポイントです。糸の引き過ぎにも注意しましょう」
ハニカムダーニングの仕方17
穴が埋まり、最後の段まで刺し終えました。横長に小さくなった穴に縦に渡すように針で糸をすくます。糸をかけて針を引き抜きます。
ハニカムダーニングの仕方18
同じようにくり返し、横長の穴が完全にとじました。糸端は針目に4目くらいくぐらせてとめ、残りはカットします。
ハニカムダーニングの仕方19
他の糸端もまち針を外して、針に通し、同様に始末します。ダーニングマッシュルームを外し、服を表に返します。
完成
ハニカムダーニングの完成です。布が裂けて少し大きめにあいていた穴がきれいに埋まりました。元のデザインを邪魔しない、でもポイントになるような仕上がりになりました。
野口さん「ハニカムダーニングは裏側を見ながら刺しますから、服を表に返すまで完成がわからないドキドキ感があります。裏と表でステッチの雰囲気が変わりますので、お好みでどちらが表になるように刺しても大丈夫です」
ハニカムダーニングの仕方は動画でこちらからもご覧いただけます。
まとめ
今回は、蜂の巣のような模様が面白いハニカムダーニングを教えていただきました。全体の流れを見てみると、中心に向かってブランケットステッチをぐるぐると刺していくというシンプルな手法。大きな穴や広範囲のシミなど、もう着れないかもと諦めた服をお持ちの方にぜひ試していただきたいテクニックでした。
次回は最終回。簡単にできる、当て布でのダーニングを教えていただきます。どうぞお楽しみに!