「テレワーク」とは?「在宅勤務」「リモートワーク」と何が違うの?
テレワーク、在宅勤務、リモートワーク・・・。いろいろな言葉がありますが、厳密にいうと一つひとつは少しずつ違うのだそうです。
20年以上前から日本に「テレワーク」を普及させるために取り組んでこられた田澤由利さんは、それぞれの言葉の定義をこう教えてくれました。
田澤さん「テレワークは『tele = 離れた所』と『work = 働く』をあわせた造語です。時間や場所を有効に活用するための、柔軟な働き方の『概念』ですね。テレワークという概念を具体的にカタチにしたものの一つとして、『在宅勤務』(住居を職場として仕事をする)があり、『リモートワーク』(オフィスに出社せず離れた場所で仕事をする)があります」
【在宅勤務の悩み1】子どもの「遊んで!」攻撃で仕事が進まない!!
「ママ、喉がかわいた~」「ママ、お人形の腕が取れた~」「ママ、あれ取って~」。
子どもの「〇〇して!」という要求は、数分おき、かつ、エンドレスに続きます。そのたびに手を止め、PCの前に戻ってきたときには、すっかり集中力が切れている…。もう、ため息も出ません。
このジレンマ、どうすれば解決できるのでしょう?
【解決策1】チャイムやアラームアプリで時間を区切る
キーン、コーン。カーン、コーン。学校のように、30~45分おきにチャイムを鳴らして「休憩だよ」と一息入れるのは、親のためにも子のためにもオススメ。
田澤さん「子どもの年齢が小さいほど、じっと待っていられる時間は短いですよね。チャイムなど、子どもの注意を引く音を鳴らして、『ここからは〇〇の時間だよ』とはっきりラベリングしてあげることが大事です」
決めた時間をいい子で待てたら、そのあとの休憩時間でたっぷり遊ぼうと声掛けをして、タイマー(アラーム、チャイムアプリ等)をセット。大人も子どもも、次のチャイムが鳴るまでは頑張って集中します。未就学のお子さんは20~30分くらい、小学生なら45分くらいで区切ってみると、頑張れそうです。
田澤さん「ここまで待つ(=一人でおとなしく遊べる)と、パパやママに遊んでもらえる。先の見通しを立ててあげることで、お子さんはきっと頑張ってくれますよ」
田澤さん自身も、3人のお子さんを育てながらテレワークをしてこられました。テレビのオンタイマー機能や視聴予約機能を使って「次にテレビがつくまで待っててね~」と声掛けをすると、ワクワクしながら待ってくれましたね・・・と、ご自身の経験を振り返っています。
【解決法2】子どもとじっくり「働くこと」について話し合ってみる
なぜパパやママは、オフィスでなく家で仕事をしているのか。なぜ仕事をしなければいけないのか。この機会だからこそ、お子さんとじっくり話し合ってみることも大切です。
田澤さん「仕事だからいい子にしてて!と言われても、子どもは理解できません。なぜ仕事をしないといけないか、ということを、お子さんに伝わる言葉で話してみましょう」
子どもが大切にしているおもちゃ、お気に入りの洋服、日々の生活用品に、食べるもの・・・。これらはすべて、仕事をしているから手に入るものです。
田澤さん「どんなに小さい子でも、いま自分がなぜ学校や保育園に行くことができず、自宅待機なのかをうっすらと理解しているはずですよね。
同じように、パパもママも会社に行くことはできないけれど、お仕事をしないとお金を稼ぐことができないから、こうしておうちで仕事をしているんだよ、と伝えましょう。怒らずに、子どもに分かる言葉で。そして、家族みんなのために、お仕事できるように協力してね、助けてね、と、真摯に伝えれば、子どもは必ず何かを感じ取ってくれますよ」
小さくたって、子どもは家族というチームの一員。チームのメンバーとコミュニケーションを取るように、子どもにもきちんと目的やビジョンを伝えて共有することが大切なのですね。
【在宅勤務の悩み2】動画やビデオを見せっ放しにしてしまう
動画を見ている間はおとなしく過ごしてくれるからと、ついついスマホを子どもに渡してしまう人、きっと多いはずですね。
「いけないとわかっているけれど、背に腹は代えられない」。ジレンマだらけのこの状況を、どんな風に打開していけばよいでしょうか?
【解決策1】スマホやPCを一緒に並べて「仕事やってる感」を楽しむ
こちら、ある日の我が家の様子。動画を見る子どもたちと同じテーブルで仕事をしてみました。
田澤さん「この非常時下、動画やスマホアプリ、DVDなどに子守りをしてもらうのは、ある意味仕方がないことだと割り切らないと、お互いに気持ちがつらくなってしまいます。『ママはパソコンでお仕事、あなたは動画を見るお仕事、どっちもお仕事だから頑張ろうね!』と、声を掛けながら一緒に机を囲んでみたらどうでしょう」
「動画を見るお仕事」。なんとポジティブな響き!!
田澤さん「長時間ダラダラ視聴にならないよう、アラームや見守りアプリで時間を区切りつつやりましょう。WEB会議など、どうしても静かにしていてほしい間だけポイントで使うのも効果的です」
【解決法2】「聞く絵本」など、アプリを活用して遊びながら学ぶ
スマホで遊んでいてもらう間も、できれば少しでも学びのあるものがいい・・・。そう考える人には、聞く絵本(オーディオブック)や知育アプリがおすすめです。
田澤さん「知育系のアプリは、罪悪感なく使えるのがいいですね。使わせっぱなしにしておくのではなく、履歴をさかのぼりながらどんな遊びをしたか、親子で振り返ってみると、子守りツールがコミュニケーションツールに早変わりです」
絵本は「心の栄養」といわれます。外出できずにストレスが多い日々、子どもの心の癒しとしても、絵本を楽しんでもらいたいですね。
【在宅勤務の悩み3】子どもがいてWEB会議が大変!
在宅勤務で最も困る時間・・・。それは、WEB会議です。
静かにしていてほしい時に限って「ママ、DVDが止まったよー」と会議に乱入してしまう子ども。PC画面の向こうに広がる「大人の時間」を乱さないために、どんな工夫ができるでしょうか。
【解決法1】「音と声」を一時的に遮断できる場所をつくる
こちらは記者が子ども部屋に一時的に作ったWEB会議スペース。イス1個とPCを置く空間があれば、WEB会議はなんとか乗り切れます。
田澤さん「WEB会議の成功のポイントは、家の中の音声をどれくらい遮断できるかにかかっています。
ドアを閉められる場所さえあれば、子どもの声やテレビの音は遮ることができます。WEB会議のときは、子どもをどこかに隔離するよりも、親がノートPCを持って別の部屋に移動するほうがスムーズですよ」
ノートPCがない場合はスマホが便利。壁などどこにでも立てかけられます。
子どもには『ドアが閉まっているときは入っちゃダメだよ』とよく言い聞かせて、「WEB会議=特別な時間」のルールづくりをするのもポイントです。
【解決策2】寝室、洗面所、バスルームでもWEB会議はできる
こちら、我が家の洗面所。「えーっ!?」と驚かれるかもしれませんが、相手には洗面所だということは意外にわかりません。
田澤さん「書斎がない場合、子どもの声や生活音を遮るのにおすすめなのは寝室、洗面所、バスルーム。寝室なんて生活感のある場所で会議なんかできない。恥ずかしいと思うかもしれませんが、大きめの布やパーテーションがあれば隠せますし、ドアを背景にすると意外にわかりません。
多くのWEB会議ツールにはバーチャル背景の機能もあるので活用しましょう」
こちらは本記事の取材中に田澤さんが使っていたバーチャル背景。
田澤さん「バーチャル背景は面白いですよ。フォーマルな雰囲気のものや、シンプルな背景もいろいろとありますのでお気に入りを探すのも楽しいです」
【在宅勤務の悩み4】3食用意するのが苦痛・・・
子どもと一緒の在宅勤務で大変なのは、お昼ご飯の時間です。あと少し頑張りたい・・・というところで「ママ、お腹空いた~」と子どもの声。
仕方なく手を止めて、ため息をつきながらお昼の用意。毎日がこんな調子で、献立を考えるのも大変!
食事の悩みやストレスを少しでも解消するには、どのように工夫すればよいでしょうか?
【解決法1】時短レシピを活用し、朝に昼食・おやつまで作ってしまう
お昼ご飯問題を解決するカギは、朝。
「通勤時間が減った分、朝に少しゆとりができていませんか?」と、田澤さん。
田澤さん「ちょっと早起きをして、朝のうちにお昼の分までご飯を作ってしまいましょう。量を多めにつくって朝と昼で食べてもいいですし、品数を多めにつくってお昼の分はラップして冷蔵庫→電子レンジで温めて食卓に並べるというのもいいですね。洗う食器を減らすため、ワンプレートを活用するのもおすすめです」
ガスコンロのグリルを使うと、一度に何品も「同時調理」ができます。朝の分、お昼の分を一度に作ってしまえば、お昼どきの負担がグッと減りそうですね。
【解決法2】ベランダやピクニックシートの「非日常」が効率アップになる!?
ある日の我が家の昼食時間。ご近所の居酒屋さんが始めたテイクアウト弁当を買ってきて、ベランダで食べました。
田澤さん「突然始まった在宅勤務。ご自宅に書斎がなく、多くの家庭がダイニングテーブルで仕事をされていると思います。PCや書類、子どもさんの勉強道具など、午前の間に机いっぱいに広がったものを、お昼が来るたび一度すべて片づけるのは、とても時間効率が悪いですよね」
そこで田澤さんがおすすめしているのが、ピクニックごっこ。食卓は作業状態のまま、食事をする場所を変えるという発想の転換です。
これまたある日の昼食時間。ダイニングのすみにピクニックシートを敷いて、お弁当っぽく楽しんでみました。
テーブルの上を片づけないことと、非日常を追求するため、食卓の下での昼食も試してみました。わが子には「狭い」と不評でしたが、もっと小さなお子さんなら楽しんでくれそうです。
田澤さん「朝ご飯の支度をしながらお弁当を詰めてしまえば、お昼を準備する手間が省けますね。しかも、ベランダや子ども部屋などどこででも食べられるから、子どもたちは喜ぶ、洗い物は減る、テーブルを片づける必要もない、といいことづくめ。お弁当を作るのが大変・・・という人も、例えば毎週水曜日はテイクアウトの日にするなど、ルーティンを決めて楽しみましょう」
おわりに
新型コロナウイルスの影響から、全国で突然始まってしまった方も多いだろう、在宅勤務。しかし、いざやってみると、通勤のストレスや時間の拘束・負荷が減るなど、メリットも発見できたのではないでしょうか。
今回の学びを生かせば、子どもが病気をしたときでも、柔軟に在宅勤務へ切り替えられますし、大切な会議を欠席する必要もなくなるかもしれません。いまこの瞬間を「緊急事態だから」で済まさずに、この先へどう生かすのかという発想でとらえる――。アフターコロナの社会や働き方を見据えて、前向きに工夫と挑戦をしていきたいですね。