教育費、一体いくら貯めればいいの? 正しい貯め方とは?
教育を巡る環境は親世代と大きく異なり、教育費も高騰しています。「我が子には十分な教育を受けさせたい」そう思いつつも、不安になる人は少なくないようです。実際、奨学金の返済が滞ったり、教育費破綻する家庭のニュースも耳にします。
「一体いくら貯めれば良いのか」「いつからどのように貯めればよいのか」をファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんに伺いました。
貯め方の前に! 幼稚園から大学までの19年間でかかる教育費とは?
ーーー子どもの進路によっても異なりますが、一般的には教育費はいくら貯めておけば良いのでしょうか?
(竹下さん) 上のグラフを見てわかるように、公立と私立、どちらを選ぶかによって、金額は大きく異なります。
ーーーすべて国公立の場合でも約800万円かかるんですね。
(竹下さん)ただ注意したいのは、親世代の時代と異なり、「すべて国公立にしたい」と思っても難しいケースが増えてきているんです。一つには、高校での学区制を廃止する都道府県が増えたこと。公立高校の受験時の競争率が上がり、公立に入りたくても落ちてしまい私立を選ばざるを得ない子どもが増えています。また、公立の幼稚園が通える範囲にない地域もあります。
上のグラフで言うとケース1を選べず、結果的にケース2やケース3になってしまった場合、約200~250万円の上乗せになるということです。突然、これだけのお金を家計から拠出することになるのは、やはり厳しいものです。あらかじめ、幼稚園や高校は私立になることも想定して、多めにお金を用意しておくのがオススメです。
国公立の大学が安いとは限らない!?
(竹下さん)また、親世代が大学に通学していた時代は「国公立なら学費は格安」というイメージがあったかと思います。実際、当時は毎年の学費は30万円程度でした。
ただ、今は国公立の学費は高騰し倍近くなっています。また私立でも優秀な学生を取るために、給付型の奨学金を出すところも増えています。
つまり「一概に国公立が安い」とも言えないんですね。特に下宿費用は大きいので、遠くの国公立よりは近くの私立の方が安く済むケースも多いですよ。
【教育費の貯め方】貯金を開始する時期はいつ?
ーーー1,000万円以上のお金が必要と聞くと圧倒されてしまいますが、いつから貯め始めれば良いのでしょうか?
(竹下さん)貯め始める時期は早ければ早い方が良いと思います。中には妊娠中から貯金を始める人もいますよ。
教育費は一度にすべて用意する必要はありませんが、大学資金だけは入学時までに2年分を目安に用意しておくと安心です。教育費として使いながら大学入学に向けて無理なく貯蓄していくのが良いでしょう。
医歯系学部を除き、自宅から通学するのであれば、大体4年間の学費で400万円かかります(※進路により増減があります)。所得制限のかからないご家庭の場合、児童手当をすべて積み立てれば、総額で200万円ほど貯まります。あと、200万円を自力で貯めるイメージです。
お子さんが生まれてすぐ貯蓄を始めれば、文系なら月1万円、理系なら月2万円貯めていきましょう。自宅通学の学費であればおおむねカバーできそうです。
【教育費の貯め方の鉄則】1.「教育費」用の口座は生活費とは別に作る
(竹下さん)人生の三大資金というと他に住宅資金や老後資金がありますが、教育資金の場合、別口座に分けて管理するのがオススメです。教育費の特徴として、習い事や学校への支払いなど、現金で支払わなくてはならないケースが多くあります。そうすると、教育費としてせっかく貯めておいた分をうっかり生活費に使ってしまいがちなんです。
【教育費の貯め方の鉄則】2.円建てで低リスクな金融商品を選ぶ
(竹下さん)教育費で注意したいのは安全な運用を心がけることです。大きく元本割れしてしまって、必要な額が準備できなくては元も子もありません。円建ての運用でリスクの低い商品を選びましょう。
定期預金や学資保険は定番ですね。
学資保険は返戻率(支払った保険料総額に対する祝金・満期金の合計額の割合)が高い訳ではありませんが、契約者である親がもしも死亡した場合でも満額の祝金・満期金を受け取れます。また保険は中途解約すると元本割れするのが通常ですが、支払った保険料総額の9割程度が解約返戻金として戻ってきます。
一方、低解約返戻金型終身保険は、保険料払込満了後の解約なら返戻率は良いのですが、保険料払込期間中に中途解約してしまうと解約返戻金は支払った保険料総額の7割程度しか戻ってきません。いずれも、途中で解約することのないよう、家計に無理のない保険料での利用がオススメですよ。
【教育費の貯め方の鉄則】3.「2つ以上の金融商品」に分けて管理する
(竹下さん)教育費は2つ以上の金融商品に分けて管理するのが良いでしょう。教育費の特徴として決まった時期に決まった額を確実に支払わなくてはなりません。
「預貯金&学資保険」や「学資保険&投資信託」というように2つの金融商品に分けて準備しておけば、一方の金融商品で元本割れしてしまっても、もう1つの金融商品で当面の教育費を間に合わせることができます。逆に運用結果が好調過ぎて解約したくないケースでも他の金融商品を利用できるんです。
また、教育費として貯めていた定期預金や学資保険の満期のタイミングが大学への支払いのタイミングとずれていても、他の金融商品で備えていれば、これらを途中で解約する必要がなくなります。
奨学金を利用するつもりのご家庭の場合でも、大学の入学金や前期授業料の支払いは一般的に3月で、奨学金の給付が受けられるのは早くて5月。奨学金給付前に現金を用意する必要があるんです。
そもそも貯金ができない! お金を貯めていくコツとは?
ーーー毎月1万円、2万円の積み立てで良いと言っても、そもそも貯金もできないというご家庭も少なくありません。お金をどう使い、どう貯めていけば良いのでしょうか?
(竹下さん)住宅費や食費、通信費などの必要経費を除いて、収入の約2~3割は貯めていくよう習慣づけると良いですよ。例えば、毎月の手取りが約30万円のご家庭のケースでは約9万円を、教育費用の積み立て・運用のほか、将来のイベントや老後資金のための貯蓄、保険に配分するイメージです(上図)。
もし生命保険など万一のための保険にかけるお金の割合が大きくて、教育資金を貯める余裕がない場合には、保険を見直すのも一つの手ですよ。
おわりに
教育費の準備というとかなり大掛かりなイメージがありますが、児童手当を活用してコツコツと貯めていけば大丈夫だとわかりました。ぜひ参考にしてみてくださいね。