寒天とゼラチンの主な違いとは?
寒天とゼラチンは原材料が異なるため、食感が違います。寒天は高温で溶ける性質があるため、口の中では溶けずにホロリと崩れますが、ゼラチンは体温で溶けるため、プルンと口どけが良いのが特徴です。
こうした特徴を活かし、寒天は和菓子に、ゼラチンは洋菓子に使われることが多いです。
さらに詳しい「寒天とゼラチンの特徴」や使い方のコツなどをみていきましょう。
「寒天」の特徴とは?
・原材料:テングサやオゴノリなどの海藻
・食品分類:植物性食品
・見た目:白く濁りがある
・溶かす温度:90℃以上 (沸騰させる)
・固まる温度:30〜40℃
・固まってから溶ける温度:68〜84℃ (常温に置いておいても溶けづらい)
・味:ほぼ無味で味への影響は少ない。天然寒天は海藻が香る場合もある。
・使用量の目安:液体の量に対し0.3〜1.5%
・特徴:ゼラチンに比べ、強度がある。
食物繊維が豊富で、昔から「お腹の砂下ろし」と呼ばれ、便秘対策にも使用されてきました。
※商品によって、各温度や使用量の目安は異なります
「ゼラチン」の特徴とは?
・原材料:牛や豚の骨や皮に含まれているコラーゲンを熱分解したもの
・食品分類:動物性食品
・見た目:透明感のある薄い黄色
・溶かす温度:50-60℃ (沸騰させない)
・固まる温度:10℃ (冷蔵庫で固める)
・固まってから溶ける温度:20〜30℃ (夏場は溶けやすい)
・味:ほぼ無味で味への影響は少ない。
・使用量の目安:液体の量に対し1.5〜4%
・特徴:30℃くらいで溶け出すため、口どけが良い。ゼリーやムースなど洋菓子によく使われる。
※商品によって、各温度や使用量の目安は異なります
出典:あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター 「ゲル化剤について」他
【寒天、ゼラチン】の特徴、違い、使い分け方法
それでは、寒天やゼラチンの種類、特徴や違い、使い分け方法について、以下に詳しく見ていきましょう。
【寒天の種類や使い方・注意点】選ぶ寒天によって味が違う!?
寒天には、棒寒天や糸寒天などの「天然寒天」と粉状の「粉寒天」があります。
「天然寒天」と「粉寒天」は、味や使い方に少し違いがあるので、詳しく見てみましょう。
【寒天の種類1】「天然寒天」の味の特徴、使い方とは?
「天然寒天」とは、主にテングサ(天草)などの海藻を水漬けし柔らかくしてから煮た「寒天液」をこして、箱に入れて固めて角柱状(棒寒天)もしくは糸状(糸寒天)に切り、冬の外気で凍結させ低温解凍を繰り返して乾燥させたものです。
こうした昔ながらの製法で作ると、海藻に含まれるさまざまな成分が残っています。「粉寒天」と比べて、海藻らしいにおいが強く、弾力性も強いという特徴があります。
○「天然寒天」の活用例
・水ようかん
・杏仁豆腐
・ところてん
「天然寒天」は、和菓子など以外にも、水に戻してスープやサラダにちぎって入れるなど、手軽に利用することができます。
〇天然寒天(棒寒天・糸寒天)の使い方
・洗って小さくちぎり、30分ほど水に浸けてふやかし、水気を取る。
・鍋などに入れ、かたまりがなくなるまで煮溶かす。
※ふやかす時間は商品によって異なります。製品説明をご確認ください。
【寒天の種類2】粉寒天の味の特徴、使い方とは?
「粉寒天」はテングサ(天草)を煮出した「寒天液」を乾燥させ、粉状にしたものです。
自然の気候を利用して作る天然寒天と異なり、粉寒天は工場で作られます。
天然寒天のように事前にふやかしたりする手間がいらないので、初心者にもオススメです。
棒寒天や糸寒天と比べると透明度が高く、海藻のにおいも弱く、味はあっさりとしています。
○粉寒天の活用法の例
・水ようかん
・杏仁豆腐
・ところてん
〇粉寒天の使い方
・分量の水の中に、粉寒天を入れ沸騰させ煮溶かします。
【寒天の使い方・注意点】寒天が固まらなかった!? 失敗しない寒天の使い方とは?
○熱湯にしっかりと煮溶かす
寒天はお湯にきちんと煮溶かすことで、冷やす際に固まりやすくなります。沸騰温度近くになってやっと溶けるため、しっかりお湯が沸騰するまで加熱しましょう。
○「砂糖」を入れて凝固力を上げる
寒天は、「砂糖」を入れると固まりやすくなります。ただし、寒天を溶かす前に砂糖を加えたり、寒天と一緒に加えてしまうと、寒天が溶けにくくなります。寒天が溶け切ってから砂糖を加えてくださいね。
○「酸」のある果汁は、粗熱を取ってから加える
オレンジなど「酸」のあるフルーツの果汁を使う場合、寒天はお湯にしっかり煮溶かし粗熱を取ってから、果汁を加えるようにしましょう。
◯「天然寒天」は30分ほどふやかしてから使用する
棒寒天や糸寒天の場合には、小さくちぎって水に入れ、ふやかしてから煮溶かします。なお、粉寒天の場合にはふやかしは不要です。
【ゼラチンの種類と使い方】ゼラチンの特徴、種類や活用方法とは?
【ゼラチンの種類と使い分け】粉ゼラチンと板ゼラチンの違い、使い分け方とは?
ゼラチンには、粉ゼラチンと板ゼラチンがあります。どちらも、原材料(動物の皮や骨などに含まれるコラーゲン)は同じで、乾燥させて粉状にしたものが粉ゼラチン、板状にしたものが板ゼラチンです。味や成分に違いはありません。
粉ゼラチンはグラムごとに計量できるため、少量使いたい場合に便利です。逆に板ゼラチンは一枚の重量が一定なので、計りやすく多量に使いたい場合に便利です。
○ゼラチンの活用法の例
・ゼリー
・ムース
・ババロア
・マシュマロ
【ゼラチンの使い方】ぬるま湯NG!? 失敗しないためのゼラチン使用の注意点とは?
◯冷たい水でしっかりふやかす
まず冷たい水に浸してよく吸水させましょう。これは、お湯に急にいれると(中まで充分に水分を吸収する前に)表面だけが溶けてダマになりやすいためです。
また、粉ゼラチンは、水の中に振り入れるようにしてください。ゼラチンの上から水をかけないようにしましょう。
20分ほど水でふやかしたら、粉ゼラチンの場合はゼラチンが溶けた水ごと調理に使用します。板ゼラチンの場合は、ふやけたら軽く水を切り、お湯で煮溶かしていきます。
中にはふやかす必要のない製品もあり、その場合は温めた液体に直接溶かします。ふやかす時間、水の量とあわせて商品に記載の使用方法を確認してみてください。
○ゼラチンは沸騰させない。「余熱」や湯煎で溶かす
ゼラチンは、煮立てたり高温で長時間加熱すると、たんぱく質が変質して固まる力が弱くなってしまいます。50〜60℃で溶け始めるので、火を止めてから、ふやかしたゼラチンを余熱で溶かしてください。(または湯煎)
電子レンジを使うと、煮立って吹きこぼれたりすることもあるので注意しましょう。
○「砂糖」を入れて凝固力を上げる
ゼラチンも、寒天と同様「砂糖」を入れると、ゼリーの透明度が増し、強度が上がります。
○果汁は加熱する
生のパイナップル、キウイなどの南国系の果物はタンパク質を分解する酵素を含んでおり、ゼラチンの凝固を妨げ、固まりづらくなります。果汁は加熱して酵素を失活させてから使用しましょう。缶詰を使う場合は、既に加熱されているのでそのまま使えます。
またレモンやオレンジなど「酸」の強いフルーツの果汁は、ゼラチンの固まりを弱くする性質があるため、果汁の量を少なくするようにしましょう。また果汁を加えてからの加熱は最小限にしましょう。
※使用方法は商品によって異なります。商品に記載の使用方法をご確認の上ご使用ください。
寒天とゼラチンは「デザート以外の料理」にも! そのメリットとは?
「寒天」の場合
寒天を使った料理と言うと、煮凝りをイメージする方が多いかもしれませんね。実はご飯に混ぜて炊くと、手軽に食物繊維を摂取できます。
「棒寒天」や「糸寒天」の場合は水で戻して、ちぎって入れましょう。お米にツヤと甘みも出やすいようです。
「ゼラチン」の場合
ゼラチンは口当たりがいいので、ジュレにするのがオススメ。例えば「ポン酢ジュレ」を作れば、食材の上にかけても食材とよく絡みます。口の中で溶けるので、普通のソースやドレッシングと同じように味わえるのもいいですね。
また、介護食などにもおススメ。ゼリー状にしたり、とろみをつけたりすることで飲み込みやすくなります。
【レシピ】寒天やゼラチンを使ったレシピのご紹介
ほどよい食感!「寒天を使ったレシピ」まとめ
やさしい口当たり! 「ゼラチンを使ったレシピ」まとめ
おわりに
凝固剤として使われる「寒天」と「ゼラチン」。違いを知って、調理の参考にしてみてくださいね。
参考:あいち産業科学技術総合センター食品工業技術センター 「ゲル化剤について」
参考:日本調理科学会誌「寒天の種類・特性と使用方法」vol.38, No.3, 292-297(2005)
参考:農畜産業振興機構「砂糖の調理性と上手な使い方」
参考:長野県寒天水産加工業協同組合「寒天ごはん」