育児の常識、昔と今ではこんなに違う!?
地域や家族のあり方、そして母親の働き方が昔と変化している現代について、子育てをパパ・ママだけでするのはなかなか難しい場合も。
そこで、パパ・ママの親世代、赤ちゃんにとってのじいじ、ばあば世代が育児を手伝う「孫育て」が注目されています。
一方で、社会の変化や環境の変化、赤ちゃんの研究の発展によって、「育児の常識」が、祖父母世代と今とでは全く違うことがあります。
育児のバイブル「母子手帳」に書いてあることすら、昔と書き換わっている部分がたくさんあるのです。
そんなとき、お互いにトラブルを避けるために、パパ・ママ世代も、祖父母世代も知っておきたい「育児の常識、昔と今の違い」について、○×クイズ形式で12個ご紹介します。
【昔と今の育児の違い1】「抱き癖」をつけるのはNG?
答えは×。
昔は、「抱き癖」がつくから、赤ちゃんが泣くたびに抱っこするのはやめた方がよいと言われていました。
しかし今は、泣いたらすぐに抱いて、安心させてあげる方が、情緒の安定のためにも大切だと言われています。
科学的な観点からの研究も進み、「オキシトシン」という愛情や信頼をはぐくむホルモンが、スキンシップによって分泌されることも分かってきました。
もちろん、赤ちゃんが泣くのは色々な理由があります。まずは抱っこしてあげて、赤ちゃんが泣く原因を探してあげましょう。
【昔と今の育児の違い2】粉ミルクより母乳の方が栄養がある?
答えは○。
昔は、母乳より粉ミルクの方が栄養があると言われていた頃もあったそうです。
しかし、今は母乳の栄養が赤ちゃんにとって優れていることが、様々な研究から分かっています。
ママの母乳がちゃんと出るのであれば、赤ちゃんの飲み物は、基本的に母乳のみでよいと、現在は言われています。
ただし、「絶対に母乳でなくてはいけない」というわけではありません。粉ミルクや哺乳瓶の方も進化していて、限りなく母乳に近い栄養を届けられるようになっています。
ママの体質などによって母乳が出にくい、仕事などの都合で粉ミルクが必要というときは、無理をしすぎず、粉ミルクに頼ることも大切です。
また、ビタミンDやビタミンKなど、母乳だけではどうしても不足しがちな栄養素もあります。
健診などで医師に相談しながら、場合によって粉ミルクで補っていく必要もあります。
【昔と今の育児の違い3】離乳食の前段階で果汁を飲ませる必要はない?
答えは○。
昔は、ビタミン補給などの観点から、離乳食の前段階で果汁を与えた方がいいとされ、母子健康手帳には「果汁を飲ませていますか?」という質問項目もあったそうです。
しかし最近では、前述した粉ミルクの進化や母乳の研究などによって、栄養学的にもあえて果汁を与える必要ない、ということで、母子手帳からも削除されています。
逆に、甘い果汁をあげることで母乳やミルクの摂取量が減ったり、赤ちゃんの消化不良につながるなどの方がデメリットだと言われているようです。
【昔と今の育児の違い4】お風呂上りにベビーパウダーと白湯は必須?
答えは×。
昔は、「ベビーパウダー」があせも予防になるとして、夏の汗をかく季節に推奨されていたようです。
しかし、現在ではベビーパウダー以外にも、ベビーローションやあせもクリーム、吸汗性の高い下着など、様々なあせも対策の商品が出ています。
また昔に比べると、エアコンなども発達し、住環境の温度調整もしやすくなっています。
このため、必ずしもパウダーを使う必要はありません。ベビーパウダーをつけすぎると、汗の出る穴が詰まりやすいことも指摘されています。
また、水分補給のために、お風呂上りやお散歩帰りには「白湯」を飲ませるというのも、昔は常識だったそうです。
しかし今は、母乳が十分出ている場合は、水分補給も「母乳」が推奨されています。
粉ミルクの場合は、白湯ももちろんOKですし、ノンカフェインの麦茶や番茶など、様々な赤ちゃん用の飲み物があります。
【昔と今の育児の違い5】1歳までに断乳させないとダメ?
答えは×。
昔は1歳までに授乳をやめ、断乳するようにと母子健康手帳に書かれていたそうです。その方が離乳食が進みやすかったり、虫歯になりにくいと考えられていたようです。
現在でも、卒乳の最適なタイミングについては諸説ありますが、個人差もあり、全員いつまでにしないといけない、というものではないとされています。
逆に、仕事や保育園の都合で、早くから断乳が必要な場合もありますが、粉ミルク等の栄養も改善された現在、それが問題になるということもありません。
心配があれば医師等と相談しながら、赤ちゃんとママに合わせて進めていくとよいでしょう。
【昔と今の育児の違い6】赤ちゃんに日光はあてない方がいい?
答えは×。
以前は日光浴をさせるという項目が母子手帳にありましたが、今は昔に比べて、紫外線の害が気にされるようになり、「日光浴」という項目は削除されました。
しかしこの風潮から、逆に日光不足により、歩行などに支障が出る「くる病」となる赤ちゃんが増えたことが指摘されています。
くる病の原因は、ビタミンD不足だと言われています。
栄養事情の改善によって、くる病はなくなったと思われていましたが、ビタミンDを生成するための「日光」などの不足により、近年また増えてきたそうです。
このことから、日光浴は母子手帳から削除されたものの、全くさせない方がいいというわけではなく、カーテンを開けた窓際で遊んだり、お散歩などの外出をして、日焼けしない程度に日光浴をさせることが望ましいと言われています。
参考:日本小児内分泌学会「ビタミンD欠乏性くる病・低カルシウム血症の診断の手引き 」
【昔と今の育児の違い7】離乳食のあげ方で虫歯がうつることがある?
答えは○。
昔は、大人が噛み砕いたものを離乳食としてあげていた時代もあったそうです。
しかし今は、それが赤ちゃんの虫歯の原因になることが分かっています。
赤ちゃんの口には虫歯菌はおらず、大人の口からうつるそうです。
噛み砕いたものをあげたり、口移しすることはもちろん、お箸やスプーン、コップなどを共有することでも、虫歯菌がうつってしまう可能性が。
子どもの虫歯は、なるべく防いであげたいもの。子ども専用のお箸やスプーンを使い、ペットボトルなども共有しないように気を付けましょう。
【昔と今の育児の違い8】歩行器よりもハイハイの方が発達に役立つ?
答えは○。
昔は、歩行器を使うことで、歩行訓練になるとされていました。
しかし今は、ハイハイが、赤ちゃんの成長に重要な役割を持つことがわかっています。
全身の筋肉を使うハイハイは、歩けないから仕方ない移動手段ではなく、全身をバランスよく発達させるために必要なプロセスだそうです。
最近では、家が狭いなどの理由ですぐにつかまり立ちに移行してしまう赤ちゃんも増えているそうですが、あえて広いところでたくさんハイハイをさせることが、体や脳の発達にとっても重要だと言われることもあります。
「おもちゃ」として歩行器も使わせることは問題ありませんが、歩行の訓練として歩行器を長時間使わせることは、避けた方がよさそうです。
また、ハイハイから歩行に移行する時期には個人差があります。
歩行器などで無理に訓練せずに、赤ちゃんの発達のペースを見守ってあげましょう。もしも気になるようなら、医師に相談しましょう。
【昔と今の育児の違い9】赤ちゃんには砂糖をあげるよりはちみつの方がいい?
答えは×。
健康食品としても注目されているはちみつですが、今は、1歳未満の赤ちゃんには絶対に与えないよう指導されています。
これは、はちみつに含まれる「ボツリヌス菌」が赤ちゃんの体内に入ると「乳児ボツリヌス症」という中毒症状を引き起こす場合があるためです。
1歳以上の子どもや大人には問題ないのですが、1歳未満の赤ちゃんの場合は腸内環境が整っていないため重症化しやすく、国内で死亡事故も起こっています。
ボツリヌス菌は加熱でも死なないため、加熱する料理の味付け(カレーなど)に使うようなこともNGです。
知らなければ、「砂糖よりヘルシー」「喉にいい」など、よかれと思って与えてしまう場合もありますので、気をつけてくださいね。
参考:厚生労働省「ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。」
【昔と今の育児の違い10】おむつはできるだけ早く取った方がいい?
答えは×。
昔は、おむつは1歳前後でとれるようにするのが常識だったそうです。
しかし、今は子どもの成長に合わせてゆっくり進めるようになってきています。
昔は布おむつが中心だったため、おむつの洗濯なども大変で、できるだけ早く外せるよう努力するというのが一般的だったようです。
布おむつだとすぐ交換しなければ漏れてしまう上、赤ちゃんにとっても不快であるため、お互いに「おむつを卒業したい」というモチベーションがあったのかもしれません。
しかし、紙おむつの進化によって、現在はおむつ替えもずいぶん楽になり、赤ちゃんにとっても快適になってきました。
今は、2~4歳までおむつが外れないという場合も珍しくありません。
精神的なものも大きく、一度トイレトレーニングができても、引っ越し・入園・下の子の出産など、環境の変化があると、またおむつに戻ってしまうこともあります。
子どもと親のペースで、焦らず進めていく方が一般的になっています。
【昔と今の育児の違い11】赤ちゃんには厚着をさせなくてもいい?
答えは○。
昔は、赤ちゃんには厚着をさせた方がよいという考え方がありました。
これは、今と昔で住環境や医療体制の違いもあったようです。昔の建物や暖房器具では、家の中は寒く、赤ちゃんが風邪をひいて重症化することもありました。
しかし現代は、住宅環境も、空調も整っているので、薄着でよいとされています。靴下についても、フローリングで靴下を履いていると滑って危ないので、室内温度によっては脱がせた方がよいことも。
また、昔は熱が出ると「厚着をして汗をかかせると熱が下がる」と考えられていましたが、現代は、「汗をかいて熱が下がるのではなく、熱が下がった時に汗が出る」ことが分かっています。
むやみに汗をかくと脱水症状になりかねないので、汗をかきすぎない快適な環境を作ってあげることが大切です。
【昔と今の育児の違い12】3歳までは働かずに子育てに専念した方がいい?
答えは×。
いわゆる「3歳児神話」といって、「3歳までは母親が子育てに専念すべきだ」という考え方が以前はありました。
しかし、平成10年(1998年)、厚生労働省は、「三歳児神話(子どもは三歳までは、常時家庭において母親の手で育てないと、子どものその後の成長に悪影響を及ぼす)には、少なくとも合理的な根拠は認められない」という白書を出しています。
参考:厚生労働省「平成10年版厚生白書の概要」
日本赤ちゃん学会の発表によると、3歳児神話には、3つの観点が含まれるといいます。
1つ目は、「子どもの成長にとって3歳までが非常に大切だ」という考え方。
2つ目は、「生来的に育児の適性を持っているのは母親だ」という考え方。
3つ目は、「母親が仕事などをせず、育児に専念するべきだ」という考え方です。
参考:日本赤ちゃん学会「3歳児神話を検証する2~育児の現場から~」
「生きる力」をはぐくむ教育を研究してきた私の観点からすると、このうち1つ目の「子どもの成長にとって3歳までが非常に大切だ」という観点は、その通りだと思います。
子どもの心の成長にとって非常に大切な「自己肯定感」は、3歳までにそのベースが育つと言われています。
この時期に、無条件に世話をしてもらい、愛情を注いでもらい、子どもが「自分は生きていていいんだ」と思えるようになることは、一生の心のベースとなるとても大切なことです。
ただし、だからといって、そうした育児を母親だけが担うべき、それも仕事などをせず子育てだけに専念するべき、というわけではないと、現在では言われています。
3歳までの育児はとても大切ですが、各家庭や個人に合った色々なやり方があるはずです。
哺乳類である以上、妊娠・出産を担うのは母親です。
でも、人類や日本の歴史からしても、母親だけが育児を専門で担ってきたわけではありません。現代でも、世界各国の文化や社会によって、様々な子どもの育て方があります。
パパ・ママの小さい頃の経験や価値観によっても、答えは違ってくると思います。
もちろん、逆に、3歳まで母親が育児に専念しない方がいい(仕事をした方がいい)、というわけでもありません。
各家庭でよく話し合って、自分たちにとってよりよい子どもの育て方を、一人一人が模索していくことが大切なのではないでしょうか。
昔と今の育児の違いを知るための「祖父母手帳」も!
昔と今の違いに戸惑う祖父母の「孫育て」を応援するために、全国の自治体や団体等が「祖父母手帳」や「孫育てガイドブック」等を発行しています。
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二世代で共有して、お互い納得の子育て・孫育てができるといいですね。
NPO法人 孫育て・ニッポン「全国の祖父母手帳」
おわりに
パパ・ママ世代も、祖父母世代も知っておきたい、「育児の常識、昔と今の違い」を12個ご紹介しました。
これだけ昔と今とで時代が変化している今、子どもの育て方は、これからも変化していくことは間違いありません。
子どもと家族が笑顔で過ごせるようなあり方を、皆で一緒に考えていきたいですね。