刺身とわさび、なぜ合わせて食べるようになったの?
刺身を購入すると、当たり前のようにわさびがついてきますよね。でも、なぜ刺身にわさびを合わせるのでしょうか?
今回は、刺身とわさびの組み合わせの「なぜ?」と、気をつけたい「刺身とわさびの食べ方のマナー」についてご紹介します。
【刺し身にわさびをあわせる理由1】抗菌作用を期待できます
東京都立衛生研究所の調査では、わさびには細菌やカビ、さらには寄生虫の増殖を抑制する「抗菌作用」があることが明らかになっています。刺身とわさびの組み合わせは、味だけでなく安全面での効能もあったんですね。
刺身とわさびを一緒に食べ始めたのは、江戸時代後期頃。握り寿司の流行とともに広まったと考えられています。
現在のように効果や効能が科学的に実証されていなかった時代から、昔の人たちはわさびの効果を経験から知り、食あたり予防を期待して食べ始めたそうです。
※そもそもわさびとは
古くから日本に自生し、利用されていました。江戸時代に広く普及すると、栽培されるようになりました。消臭や食中毒の病原菌に対する抗菌効果があります。わさびは日本が原産の薬味なのです。
西洋わさび(ホースラディッシュ)に対して、日本原産のものを「本わさび」と呼びます。
【刺し身にわさびをあわせる理由2】味のアクセントとして
わさび特有の辛さ、香りが鮮魚特有の生臭さを消し、生魚の味わいにアクセントをつける役割があります。
わさびのツーンと鼻に抜ける辛味の正体は?
からしや唐辛子などの辛さと違い、わさびは鼻に抜けるような辛さが特徴ですね。
このツーンと鼻に抜ける辛さの正体は、辛み成分「アリルイソチオシアネート(アリルカラシ油)」と呼ばれる揮発性成分によるものだそう。この成分はわさびをおろし、酸素に触れた際に生み出されます。
本わさびをおろして使用する際は、とても目の細かい「鮫皮おろし」を使用すると辛さが引き立ちます。
わさびの種類と表記
本わさびだけではない、わさびの形状(粉わさび・チューブわさび)
粉わさび、チューブわさびは形状や使い方だけでなく、原料にも違いがあります。
【粉わさび】
本来は本わさびの根茎を乾燥し粉砕したものですが、現在は西洋わさびやわさび大根などの粉末で作られています。水で溶き、よくかき混ぜて使用します。
粉わさびに対し、わさびをおろした生のものは「生わさび」と呼ばれます。
【チューブわさび】
製品によっても異なりますが、西洋わさびと本わさびを組み合わせた商品や、本わさびだけを使用した製品などがあります。チューブからそのまま出して使用できる手軽さから、家庭では主流ですね。
「本わさび入り」と「本わさび使用」の違いは?
本わさびが50%未満のものを「本わさび入り」。本わさびの使用が50%以上のものを「本わさび使用」と表示するようです。
参考:S&B「 本生本わさびのこだわり」
刺身のわさびを醤油に溶かすのはマナー違反?
お刺身が出された時「醤油の小皿にわさびを入れて溶くのはマナー違反」ということを耳にした方もいらっしゃるのではないでしょうか。でも、なぜダメだと言われているのでしょうか?
理由
〇味がすべて同じになる懸念
他の薬味で食べた時にもわさびの味が強く出て、味を楽しむことができないからといわれています。
〇わさびの風味が損なわれてしまうため
わさびの辛味成分は揮発性なので、醤油に溶くと風味が損なわれていくからです。
〇見た目の美しさを損なうため
透き通ったお醤油がわさびによって濁ってしまうと、美しさに欠けると考えられています。
ただし、わさびを醤油に溶いたほうが辛さが抑えられ、わさびの刺激がやわらぎます。どちらが正しいというものではないので、お好みでよいそうです。
風味を生かす! 刺身とわさびのおいしい食べ方
まず刺身の片面にわさびをつけ、逆側に醤油をつけていただきます。こうすると、それぞれの風味が生き、醤油にわさびが溶けることもなくきれいに食べることができるそうです。
おわりに
いかがでしたか? 古くから食べられている「刺身とわさび」の組み合わせには「抗菌作用」や「味への働きかけ」などの理由がありました。
刺身とわさびを食べる上でのマナーも知ることができましたね。何気なく食べていた刺身のわさびも「なぜ?」を知るとひと味ちがうかもしれません。