太陽光発電のデメリットとは?
太陽光発電の発電力や経済効果などに懐疑的だったり、不安があるという方も少なくありません。設置した後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、知っておきたい太陽光発電のデメリットについて解説します。
【デメリット1】導入費用が高い
太陽光発電システムの導入を検討するにあたって、大きなハードルでもあり、デメリットともいえるのが初期費用が高い点です。
結論からいうと、一般家庭の平均年間電力消費量約4,716kWhを太陽光発電を利用した電力でまかなおうとすると、設備導入に必要な初期費用はざっと試算しただけで約100万~150万円となります。
かなり幅がありますが、使用する機器や依頼する業者によって設置に関わる費用に差があるためです。また、設置する場所によっても用いる機器や工事費が異なります。
費用面を順に説明していくと、まず太陽光パネル(太陽電池モジュール)が必要です。これは、屋根の上など太陽光を受けやすい場所に設置されているパネルのことです。
設置環境の日照時間などにもよりますが、1kWの太陽光パネルの年間発電量は1,000kWhと想定されるので、一般家庭で1年間に必要な約4,000kWhをまかなうためには、4~5kWの発電容量をもつ太陽光パネルの設置が望ましいでしょう。5kWの太陽光パネルを設置した場合の費用は1kWあたり20万~30万円が相場です。
その他にも、太陽光発電システムを稼働させるためには多くの機器が必要です。例えば、太陽光パネルを設置するための架台、太陽光パネルで発電した電気(直流)を家庭で使用できる電気(交流)に変換するパワーコンディショナ、太陽光パネルからの配線をまとめてパワーコンディショナへ送る接続箱、発電量などをチェックできるモニターや、各機器をつなぐ各種ケーブルなどがあげられます。
これらを合算した金額が100万~150万円程度ということになります。
また、太陽光発電は日照時間によって発電量が変わるため、多く発電できたときに余った電力を蓄え、発電量が乏しい時間や災害などの非常時に使用できる蓄電池も一緒に用いるスタイルがおすすめです。蓄電池を設備に含めると、価格は蓄電池の容量にもよりますが、さらに150万~250万円程度必要になります。
長期のスパンで考えるのであれば、こういった費用の回収も期待できますが、初期費用としてはかなり大きな金額といえるでしょう。
初期費用の負担を少しでも減らすための対応策としては、以下のようなことが考えられます。
※1.一般社団法人太陽光発電協会 表示ガイドライン(2023 年度)
1.補助金制度を利用する
地方自治体がクリーンエネルギーである太陽光発電の導入を支援するための補助金制度を設けている場合があるので、お住まいの地域で利用可能なものがあるか調べてみましょう。補助金の利用は認可までの期間も考えて早めに準備することをおすすめします。
2.設置料金を比較検討する
太陽光発電システムはさまざまなメーカーから発売されているので、複数社で見積もりをとるなどして、機器の価格に工事費も含めて金額を検討しましょう。
3.初期費用0円モデルを利用する
特定の条件の下、太陽光発電システムの初期費用を0円に抑えることができます。例えば、PPA(太陽光PPA:電力購入契約)やリースなどの「第三者保有モデル」が知られており、いずれも初期費用だけでなく、維持管理費用もかからないという魅力があります。
ただし、注意点もあります。
PPAは初期費用0円で太陽光発電システムを導入できる代わりに、設備はPPA事業者が所有します。PPAの特徴は発電した電気を事業者が管理する点で、後述する「売電」をすることはできません。
リース契約は、リース事業者が設備を所有するため、契約者は毎月固定のリース料金が発生します。
一方で、初期費用0円で自己所有することも可能です。
東京ガスの「IGNITUREソーラー(フラットプラン)」(※1)は主に新築の方を対象とし、初期費用0円(※2)で太陽光発電システムを導入・自己所有することができます。
「IGNITUREソーラー(フラットプラン)」は、月々のサービス料がかかる・売電収入が得られないといった注意点はありますが、本サービスは2024年1月時点で東京都の「住宅用太陽光発電初期費用ゼロ促進の増強事業」に採択されており助成を受けることができます。助成制度を活用することで、魅力的な月額料金でクリーンエネルギーをくらしに取り入れることができるので新築時に太陽光発電を導入検討される場合は、初期費用を抑える策のひとつとして、ぜひ検討してみてください。
※1 新築時の太陽光発電導入をメインとしたサービスです。住宅会社さまによってはサービスのお取り扱いがない場合がありますので事前に住宅会社さまにご確認ください。
※2 初期費用がかかる場合もあります。
参考:クール・ネット東京 | 東京都地球温暖化防止活動推進センター「住宅用太陽光発電初期費用ゼロ促進の増強事業」
【デメリット2】日照時間や日射量に発電量が影響される
太陽光発電のエネルギー源は太陽からの光エネルギーです。そのため天候が悪ければ発電量は落ち、夜間など太陽エネルギーが得られない時間は発電することができません。
これらの理由から、太陽光発電では得られる電気量はどうしても不安定になることもデメリットといえます。
日照時間が長い夏場は発電量が多いと思われがちですが、太陽光パネルは熱がこもると発電ロスが起きてしまうため、必ずしも夏場に発電量が多くなるとはいえません。
冬場はそもそも日照時間が短いことや、地域によっては積雪で太陽光パネルが覆われて発電できないこともあるので、基本的には発電量が落ちます。雨天が多い梅雨の時期も発電量は少なくなります。
気温や日照時間の点では、春が発電量の多いシーズンといえるでしょう。
【デメリット3】設置に向いていない住宅がある
日照時間が少ない立地や建物の構造によっては、太陽光発電システムを設置しても効果的に発電できません。このような環境の場合、設置には不向きといえるでしょう。
一般的にはパネルを南向きに設置できる場所がもっとも日照時間を確保できるとされています。また、東西方向も環境によっては発電効率が良い場合もありますが、北向きは太陽光パネルへの日照量や時間を考慮すると発電効率が芳しくないので、北向きにしか設置できない場合は設置にあたって検討を要します。
その他、住宅の築年数などによっては太陽光パネルや架台の重さに耐えられないと判断され、設置できない可能性もあります。
太陽光パネルは1枚が約10~15kgといわれ、発電容量5kWには太陽光パネル20枚程度かそれ以上が必要なので、架台を含めると約400kg以上となることも珍しくありません。築年数の古い住宅の場合、太陽光パネルの設置を考慮した耐荷重の屋根ではない場合もあります。
また、太陽光パネルの重さは複数の支点に分散されますが、数十年屋根に載せ続けるとなると、屋根への負担がかかることは否めません。
耐荷重的に設置が可能か、設置後も耐震性などへの影響はないか、専門業者の調査が必要です。
【デメリット4】設備には寿命がある
太陽光パネルに使用されている半導体は、半永久的に稼働し続けます。また、太陽光パネル自体も可動部が少ないため比較的寿命が長い機器だといえるでしょう。
しかし、屋外に設置するという特性上、雨風などによるダメージは避けられず、架台やケーブルなどの経年劣化のほか、パネル自体の多少の劣化やトラブルなどが起こる可能性があります。
また自然災害によって、太陽光パネルが汚れたり破損したりして、発電量が下がってしまうケースもあります。破損の有無くらいは自分で確認できると思われるかもしれませんが、屋根の上にある機器を確認するのは非常に危険な作業です。さらに電気系統の確認や点検は、有資格者でなければ行えません。
以上のことから、太陽光発電システムは数年に一度、定期的な点検とメンテナンスを行う必要があります。このような維持管理費がかかるのもデメリットのひとつといえるかもしれません。
【デメリット5】反射光トラブルが発生する可能性がある
太陽光パネルの設置によって思わぬご近所トラブルが発生してしまうことがあります。太陽光パネルに反射した光が別の住宅の窓に当たることから「反射光トラブル」といわれるもので、太陽光パネルを北面に設置している住宅と、その北側に位置した住宅の間で問題になる場合があります。
そもそも太陽光パネルを北向きに設置するのは発電効率の観点から避けられる傾向がありますが、それでも北側に太陽光パネルを設置しようと考える場合は、反射光トラブルを含むリスクをよく検討することが重要になってきます。
【デメリット6】機器の設置場所を確保しなければならない
太陽光発電システムでは、太陽光パネルの設置場所だけでなく、その他の機器の設置場所についても確保する必要があります。
そのひとつが、パワーコンディショナです。パワーコンディショナは容量にもよりますが、おおむね小型のエアコンほどのサイズ感で、設置する際には上下左右に空間を空けなければなりません。また、高湿度や直射日光、衝撃を避け、換気や風通しの良い場所に設置する必要があります。
さらに、多くの場合、分電盤と近い場所に置くことが推奨されていることも考慮しましょう。理由は距離が遠いと長いケーブルが必要となり、せっかく発電した電気をロスすることにつながるからです。
屋内にパワーコンディショナの設置場所を確保するのが難しかったり、動作音やモーター音が気になる場合は、屋外設置型のパワーコンディショナを検討するのも良いでしょう。
太陽光発電のメリットとは?
ここまで太陽光発電システムのデメリットを紹介してきましたが、メリットもたくさんあります。
環境意識の高まりだけで太陽光発電を導入する住宅が増えているわけではありません。家計に直結する経済的なメリットや災害時に備えての安心感なども個人住宅で太陽光発電を導入する大きな理由になっています。
ここからは、太陽光発電にはどのようなメリットがあるのかをご紹介していきます。
【メリット1】電気代の節約になる
太陽光発電システムを導入する大きなメリットであり、導入する動機としても多いのが電気代の節約になるという点です。
これまで電力会社から購入していた電気を自宅で生み出せるため、電気代が減らせるのです。
太陽光発電を併用することで電力会社から購入する電力量が減れば、電気代の節約につながります。さらに蓄電池を導入することで家庭で使用する電力の大半を自宅の太陽光発電システムで発電した電気でまかなうことができれば、月々の電気代を大幅に減らすことが可能となります。
【メリット2】売電収入を得られる
自宅に太陽光発電システムを導入すると、発電した電気が余った場合、それを電力会社に売ることが可能です。これを“売電”といいます。
例えば、日照時間が長い日中に発電したけれど使用しなかった電気がある場合、それを売電することによって収入を得ることができます。
ただし、近年はFIT(固定買取価格制度)の期間中の買取価格が下がってきていることもあり、売電収入を得ることは主目的ではなく、プラスアルファの利点として考えましょう。
また、初期費用なしで設置できるPPAモデルなどのサービスを利用して太陽光発電を導入する場合は、契約期間中に売電することはできない場合もあるので注意が必要です。
【メリット3】停電中でも晴れていれば電気を使える
いつ起きるか分からない自然災害は人ごとではなく、停電のリスクは常にあると考えるべきでしょう。しかし、太陽光発電システムを導入していれば、停電時が日中で晴れていて発電していれば、自立運転モードに切り替えることで電力を自宅内で使用することができます。
蓄電池を併用していれば、太陽光発電が発電していなくても、ためた電気を供給させることも可能です。
停電中でも電気が利用できれば、携帯電話の充電切れを防げることから情報収集がしやすかったり、電気ポットでお湯をわかせることで温かい飲み物や赤ちゃん用のミルクを作ったりすることもできます。
2018~2020年に起こった5つの台風被害による停電で、99%復旧に至るのに要した日数は2日~12日でした。(※2) また、大地震が起こった場合も電力供給が途絶えたり不安定になることがあります。不安が募る停電時にも電気が使えるという安心感が太陽光発電の大きなメリットだと考える方はこれからも増えていくと思われます。
※2. 経済産業省「台風15号・19号に伴う停電復旧プロセス等に係る個別論点について」
【メリット4】電気代高騰の影響を受けにくくなる
近年、電気代が高騰している理由は、電気代の内訳から理解することができます。
基本的に、電気料金は「基本料金」「電力量料金」「再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)」で構成されています。
電力量料金には石炭や天然ガスを調達するための燃料費調整単価が含まれており、世界情勢の影響を受けやすくなっています。
再エネ賦課金は再生可能エネルギーを電力会社が買い取る費用の一部を電力利用者が負担しているものですが、再生可能エネルギーの普及率の上昇に伴って金額が上がっています。
そしてこれらの単価を消費者がコントロールすることはできません。
しかし、太陽光発電を利用することで電力会社から電力を購入する割合を減らせば、高騰し続ける電気代の家計への影響を減らすことが期待できます。
【メリット5】補助金を使える可能性がある
太陽光はクリーンエネルギーとして世界規模で注目されています。
エネルギー源が無限であることはもちろん、大気汚染がほとんどなく、太陽光発電システム自体も長寿命なうえに解体する際も廃棄せずにリサイクルできる材料が多いことが理由です。
そのため、太陽光発電の普及を後押しすべく、補助金制度を設ける地方自治体が増えてきています。例えば、東京都では新築住宅に太陽光発電システムの設置を義務化することが決まっており、それに伴って支援策も広げているところです。
太陽光発電システムの導入を考えるときには、まず現在お住まいの地域で利用できる制度があるのか、ある場合は利用条件や金額の上限などはどうなっているのか、制度がまだない場合は検討が始まっているのかなどをリサーチしましょう。
【メリット6】断熱・遮熱効果がある
太陽光パネルは、よく日が当たる屋根に取り付けられていることが多く、それにより遮熱効果が期待できます。
室内の温度は屋根から伝わってくる熱の影響を受けますが、太陽光パネルが設置されていると直射日光を反射することで遮熱できるのです。一方で冬はエアコンなどで暖めた空気の保温ができたりします。
このように太陽光パネルを設置することで、冷暖房効率が良くなることもメリットといえるでしょう。
おわりに
太陽光発電システムのメリットやデメリットをご紹介しました。重要なことは、メリットやデメリットから一歩進んで太陽光発電システムの仕組みまでしっかり理解した上で導入を検討することだといえます。
自宅で使う電力を安心・安全・お得に利用できる方法のひとつとして、太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。