家庭用蓄電池の目安容量と選び方

家庭用蓄電池の目安容量と選び方

家庭用蓄電池の容量は、設置の目的や太陽光発電システムの容量、電気の使用時間、停電時に使いたい家電の消費電力などをもとに、適切に選ぶことが大切です。本記事では、蓄電池の一般的な容量や家庭用蓄電池の基礎知識、家庭にあった蓄電池の容量の選び方、比較検討するために必要な情報、選ぶ際の注意点を解説します。

最終更新日:2025年02月28日公開日:2024年04月10日

目 次

この記事でわかること

  • 家庭用蓄電池の設置を検討するポイントがわかる!
  • 蓄電池の一般的な容量や選び方がわかる!

容量の前にチェック|家庭用蓄電池の比較で用いる単位や数値

蓄電池の容量を選ぶ前に、知っておきたい単位や数値は、以下のとおりです。

  • W/kW/kWh(ワット/キロワット/キロワットアワー)
  • V(ボルト)
  • サイクル数
  • 変換効率

それぞれの意味を、詳しく紹介します。

W/kW/kWh(ワット/キロワット/キロワットアワー)

W/kW/kWh(ワット/キロワット/キロワットアワー)

Wは電力の単位で、1,000Wは1kWに換算が可能です。家電が1時間で消費する電力量を、kWhで表します。

WやkWは、蓄電池でどの家電をどの程度動かせるかを確認するために把握しておきたい単位です。主な家電の消費電力は、Wで表示されており、使用した時間でkWhに換算できます。具体的な計算式は、以下のとおりです。

消費電力(W)×時間(h)÷1,000=電力量(kWh)

主な家電とその消費電力(W・kW)の目安を、下表に示します。

家電の種類

消費電力

冷蔵庫

約200W〜300W

家庭用エアコン(6畳)

約400W

液晶テレビ

約50W

洗濯機

約400W

電子レンジ

約1400W

蛍光灯照明

約100W

注)製品によって消費電力は異なるため、詳しくは説明書や製品に表記された仕様をご確認ください

上記の家電を家庭で使用した場合、想定される時間でkWhに換算した数値は、下表のとおりです。

家電の種類

想定使用時間

電力量

冷蔵庫

約24時間

約4.8kWh

家庭用エアコン(6畳)

約5時間

約2.0kWh

液晶テレビ

約3時間

約0.15kWh

洗濯機

約1時間

約0.4kWh

電子レンジ

約1時間

約1.4kWh

蛍光灯照明

約7時間

約0.7kWh

電気の使用時間は、家族の人数やライフスタイルによって異なります。上記の表を参考にして、普段使用する家電製品の消費電力や時間から必要な電力量を計算してみましょう。

V(ボルト)

V(ボルト)

V(ボルト)は、一度に出力できる電力量を示す値です。家電と家庭用蓄電池どちらにもそれぞれ設定されているため、チェックしておきましょう。

例えば、200Vに設定されている家電は、エアコン、IHクッキングヒーター、エコキュート、電子レンジなどです。もし、停電時にも上記のような家電を使いたい場合は、200V出力に対応する蓄電池を選ぶ必要があります。

ただし、200V対応の家電は消費電力が大きく、蓄電池の容量がなくなりやすいため、注意しましょう。

サイクル数

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サイクル数は、蓄電池を満充電の状態と蓄電した分を使い切った状態を、何度行き来できるかを示す値です。蓄電池の寿命の目安ともいわれており、サイクル数が多いほど蓄電池が長持ちします。

サイクル数が終わると蓄電池が使えなくなるわけではありませんが、ためておける電力量(容量)が減少します。サイクル数にあわせて記載されている「50%以上保証」「60%以上保証」といった表記は、サイクル数・保証期間を終えたのちに、蓄電池にためられる容量の指標です。

変換効率

変換効率

変換効率とは、太陽光発電で作られる直流の電気を、家庭内で使用できる交流の電気に変換する場合に生じる、電気の損失割合を示した数値です。

蓄電池の説明書・仕様書には、「変換効率が94%や95%」などの記載がありますが、これは電気の変換時に、5%〜6%程度の損失があるという意味です。変換効率がより高い数値の蓄電池を選ぶことで、実質的な容量を多く確保できます。

また、太陽光発電システムと蓄電池をつなぐ「パワーコンディショナ」というシステムが増えると、変換効率が低下します。すでに太陽光発電システムを導入している場合は、蓄電池とパワーコンディショナの互換性も確認しておくことがポイントです。

蓄電池の一般的な容量

蓄電池の一般的な容量

蓄電池の一般的な容量には、1kWh〜5kWhの低容量、6kWh〜10kWhの中容量、10kWh以上の大容量があります。2024年1月に施行された消防法では、20kWh以下の家庭用蓄電池は特別な届け出は不要となっています。

ただし、容量といっても、定格容量と実効容量がある点に注意が必要です。定格容量(kWh)は、蓄電池全体の容量で、実効容量は蓄電池で使える容量(自立起動もできるための容量)を表します。

おおむね、「定格容量-1kWh=実効容量→実効容量90%」と算出できます。比較の際は、実効容量を用いることが重要です。

家庭用蓄電池を比較検討するために必要な情報

家庭用蓄電池を比較するためには、製品のスペック以外に、以下の情報が大切です。

  • 毎日の使用電力量(買電量)・売電量
  • 家庭用蓄電池の価格相場

それぞれ、具体的に把握すべき内容を解説します。

毎日の使用電力量(買電量)・売電量

毎日の使用電力量(買電量)・売電量

毎日どれくらいの電力を使っているかを確認しておくことで、必要な蓄電池の容量の目安がわかります。太陽光発電システムをすでに導入している場合は、買電や売電をしている電気の量を把握しておきましょう。

もし、日中の電気を賄いたい場合は、夜間にためておきたい電力量(日中の使用量)にあわせて選ぶことがおすすめです。一方、夜間の電気を賄いたい場合は、日中に太陽光発電システムでためておくべき電力量にあわせて選ぶと良いでしょう。

売電している場合は、売っている分を自家消費に回すために、どれくらいの量をためておけるようにすべきかを把握してから選びましょう。また、その際、蓄電池のV数(出力できる最大の電気量)をチェックするために、平均消費電力だけでなく、最大で何kWhを消費しているかもあわせて確認しておくことが大切です。

家庭用蓄電池の価格相場

家庭用蓄電池の価格相場

蓄電池には、5kWhまでの低容量、10kWhまでの中容量、10kWhを超える大容量と、3つのタイプがあります。
三菱総合研究所の「定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査」によると、2022年度のシステム価格の総額は14.0万円/kWh。工事費を合算した導入費用の平均は1kWhあたりの価格相場は18.7万円です。タイプ別の価格相場は下記のように算出できます。

  • 5kWh:約69.5万円
  • 10kWh:約139万円
  • 16kWh:約224.4万円

ただし、機能性やメーカーなどによって価格は左右されるため、あくまでも目安として把握しておきましょう。

参考:三菱総合研究所「定置用蓄電システム普及拡大検討会の結果とりまとめ

家庭用蓄電池の容量の選び方(1) 目的に応じて選ぶ

家庭用蓄電池の導入を検討する場合の目的として、次の3つが考えられます。目的に応じた選び方は、下表のとおりです。

目的

選び方

太陽光発電の余剰電力をためて自家消費したい

余剰電力量にあわせて容量を選ぶ

時間帯によって電力単価が変動する料金メニューの有効活用をしたい

電気代が安くなる時間帯を除いた電力使用量に合わせて容量を選ぶ。

災害・停電対策に活用したい

停電時に使いたい電気製品に応じて選ぶ

それぞれ必要な容量が異なるため、目的に応じた検討が必要です。また、電気使用量は、それぞれのライフスタイルにより、変化します。現状の電気使用量や余剰電力が分かる書類が必要なため、検針票・アプリの利用状況などを手元に用意しておくと良いでしょう。

家庭用蓄電池の容量の選び方(2) 太陽光発電システムの容量で選ぶ

太陽光発電システムをすでに導入している場合は、その発電容量から蓄電池の容量を選ぶ方法もあります。

太陽光発電システムの発電量と蓄電池の容量が異なる場合、電気が余ってしまったり、ためる際の効率が悪くなったりします。そのため、太陽光発電システムの発電容量を確認しておくことが必要です。

例えば、太陽光発電協会では、発電容量1kWあたりの年間発電量の一例として「1,000kWh」と述べています。これに従い1日あたりの発電量を約2.7kWh/kWと考えると、発電容量が5kWの太陽光発電システムの場合は、1日あたりに約13.5kWhの電力を発電できると想定されます。さらに発電した電力量に対する自家消費の割合(自家消費率, 電力自給率)を30%と仮定すると、自家消費しない余剰電力は約9.45kWhになります。

もちろん、すでに太陽光発電システムの発電量を日頃から発電モニターなどでチェックされている方は、そうした機器から読み取れる情報をもとに検討すると、より実態に合わせた蓄電池の容量を選ぶことができるでしょう。

参考:太陽光発電協会「太陽光発電により、家庭で使用する電気を全部まかなえますか?」

家庭用蓄電池の容量の選び方(3) 蓄電池で電力を賄いたい家電の消費電力量で選ぶ

蓄電池で電力を賄いたい家電の消費電力量で選ぶ

時間帯によって電力単価が変動する料金メニューへ加入している方は、蓄電池で電力を賄いたい家電の消費電力量で容量を選びましょう。例えば、電力単価が安くなる夜間に蓄電池を充電しておき、電力単価が高い時間帯の電力購入を控えたい場合に適した選び方です。

電力単価が高い時間帯に使っている家電をピックアップし、W・kWを算出して消費電力量を把握し、カバーできる蓄電池を選びましょう。使用する家電に合わせた必要な蓄電池の容量をシミュレーションすると、以下のようになります。

  • ケース1:冷蔵庫のみ(日中は完全外出している方)


0.35kWh×12=4.2kWh(一日の日中消費電力量)

→低容量タイプ(5kW)でよい(変換効率90%でもカバー可能)

  • ケース2:冷蔵庫・エアコン使用(日中は完全外出しているが、ペットがいる方)

0.35kWh×12=4.2kWh(一日の日中消費電力量)

0.6kWh×12=7.2kWh

→全体で11.2kWh→13kWh以上(大容量タイプ)が目安

  • ケース3:冷蔵庫・エアコン・パソコン(日中在宅・テレワークをしている方)

0.35kWh×12=4.2kWh(一日の日中消費電力量)

0.6kWh×12=7.2kWh

0.035kWh×12=0.42kWh

→全体で11.62kWh→13kWh以上(大容量タイプ)が目安

  • ケース4:冷蔵庫・エアコン・テレビ・洗濯機・電子レンジ(日中在宅・家事をする方)

0.35kWh×12=4.2kWh(一日の日中消費電力量)

0.6kWh×12=7.2kWh

0.035kWh×12=0.42kWh

0.05kWh×12=0.6kWh

→12.22kWh→14以上の大容量タイプが必要

注)製品によって消費電力は異なるため、詳しくは説明書や製品に表記された仕様をご確認ください

以上から、消費電力量を完全にカバーしたい場合は、大容量タイプが必要なケースが多くなります。

家庭用蓄電池の容量の選び方(4) 停電時に使いたい家電の消費電力で選ぶ

停電したときにどの家電を使用したいかが明確になっている場合は、それをもとに蓄電池の容量や対応電圧を選ぶのも一つの方法です。

蓄電池には100Vだけに対応しているタイプと、100V・200Vに対応しているタイプがあります。一部のエアコンやIHクッキングヒーターなどへの給電は、200Vに対応している蓄電池でなければなりません。これらの機器を停電時に使用したい場合、200Vに対応しているものを選ぶと良いでしょう。

ただし、200Vの給電をする場合は出力が大きくなる傾向にあり、電気使用量も増えやすいため、蓄電容量を多く見積もっておく必要があります。停電時にどのように過ごしたいかを考え、使用する家電の電圧や消費電力から必要な容量を考えることがポイントです。

また、停電時に電気を使いたい場所を考えることも重要です。

蓄電池には全負荷タイプ、特定負荷タイプがあり、タイプによって電気を使える場所が異なります。特定負荷タイプは、停電時に家全体の家電を使用することはできないため注意しましょう。

家庭用蓄電池の容量の選び方(5) 設置場所で選ぶ

家庭用蓄電池には、屋内専用・屋外専用・屋内外専用の3種類があり、種類によって設置場所が異なります。希望の設置場所がある場合は、設置可能な蓄電池の種類から、容量を検討する必要があります。

また、設置スペースの都合により、容量の制約もあります。例えば、容量が大きな蓄電池は広い設置スペースが必要な場合や屋外専用の場合があるため、屋内しか設置できない場合は、容量の検討が必要です。

容量やメーカーによって、大型のタイプや薄型タイプなどさまざまな種類があります。置き場所によって、希望の容量の蓄電池が配置できるかどうか、設置業者に現地で確認してもらいながら、検討しましょう。

家庭用蓄電池の容量を選ぶときの注意点

家庭用蓄電池の容量を選ぶときの注意点

家庭用蓄電池には、家全体へ電気を供給する「全負荷型」と電気を利用したい特定の場所に電気を送る「特定負荷型」があります。

全負荷型は容量が大きくなる傾向があるため、大容量タイプが安心です。ただし、費用が高額になる点には注意が必要です。特定負荷型は使用できる範囲は限られますが、費用負担は抑えやすいことが特長です。

部屋や使う家電に応じて、中容量(5kWh〜10kWh)でも適する場合があります。停電時の過ごし方に合わせて検討しましょう。

注意点(1) 蓄電容量は大きすぎてもNG

蓄電容量は、使用する量に見合ったものを選ぶことが基本です。

一般的に、蓄電容量が多いとそれに比例して本体のサイズも大きくなるため、より広い設置スペースを必要とします。さらに、蓄電池本体の価格も高額になり、費用対効果の観点から無駄なコストとなりかねません。

また、蓄電池には寿命があり、長期的に見てもいずれは買い替えなければならない製品です。蓄電容量が大きすぎても、持て余して使いこなせないまま寿命を迎えてしまう恐れがあります。

大は小を兼ねるという考えはせず、大きすぎず小さすぎない最適なサイズを選びましょう。

注意点(2) 定格容量ではなく、実効容量で選ぶ

蓄電池の容量の表示には「定格容量」と「実効容量」の2種類があります。定格容量はフルで使える容量ではないため、実効容量を基準に選ぶことが重要です。一般的に、実効容量は定格容量よりも10~20%程度少なく設定されています。

  • 定格容量…規定された条件の下で蓄えられる電気量のこと
  • 実効容量…実際に使える電気量

注意点(3) 保証内容・期間をチェックする

保証内容・期間をチェックする

保証内容や保証期間は、メーカーによって異なるため、事前に確認するようにしましょう。

蓄電池の保証期間は10年〜15年が一般的です。蓄電池はサイクル数や使用期間に合わせて、十分な保証期間のものを選ぶようにしましょう。

また、保証内容の違いもしっかり確認した上で、比較検討することが求められます。販売店によっては、独自の保証を行っている場合もあります。できるだけ長く安心して蓄電池を使うためにも、保証内容や保証期間を確認することが重要です。

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家庭用蓄電池の容量は、自分の家庭に適した大きさを選ぶことが重要です。電気の使い方は各家庭によって異なるため、普段の電気の使用時間や、停電時に使用したい家電の消費電力を計算して選びましょう。

また、太陽光発電システムが既設の場合は、その容量も考慮する必要があります。容量が大きすぎると逆に費用対効果が悪くなる恐れがあるため、実効容量やサイクル数などを確認しながら最適な蓄電容量を選びましょう。

  • この記事の監修者

    東京ガスの太陽光発電サービス コラム編集チーム

    太陽光発電・蓄電池の仕組み、メリットから設置、メンテナンスなど幅広いトピックを解説します。みなさまの太陽光発電・蓄電池選びに役立つ情報を発信していきますのでぜひご活用ください!

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