パワーコンディショナとは?
太陽光発電システムに必須のパワーコンディショナは、「パワコン」「PCS(Power Conditioning System)」「インバーター」とも呼ばれるもので、太陽光発電システムで生成される直流電力を家庭内で使える交流電力に変換するための設備です。
パワーコンディショナは、その他にも蓄電池への充電、売電など、それぞれの用途に応じて電力を変換しますが、同時に過電流や過電圧、短絡などの問題を検知してシステムを安全に停止させる保護機能も備えています。太陽光発電システムにおける他の機器や電力系統の損傷を防ぐことで、システム全体の安全性も高めているのです。
パワーコンディショナにはさまざまなタイプがあります。それぞれの特徴については、「パワーコンディショナを選ぶ際のポイント」で詳しく解説します。
パワーコンディショナの寿命はどのくらい?
パワーコンディショナの寿命は、一般的に10〜15年程度とされています。太陽光パネルの寿命は25~30年程度なので、通常はパワーコンディショナのほうが先に寿命を迎えることになります。
経年劣化が進むと故障や性能低下が起こりやすくなるため、設置後10年以上経過したパワーコンディショナは必要に応じて修理や部品交換などを実施しましょう。
パワーコンディショナの不具合を早期に検知するためには、日常点検、定期点検が大切です。
日常点検は月1回程度が理想で、異常を示すランプが点灯していないか、エラーコードが出ていないかを確認したり、通風口に付着した汚れやほこりを取り除いたりします。詳細な方法は、メーカーのホームページや機器の取扱説明書をご確認ください。
定期点検は4年に1回以上を目安に、専門業者に行ってもらいましょう。
パワーコンディショナの主な故障の原因
パワーコンディショナの主な故障原因としては、「経年劣化」と「天候」の2つが挙げられます。
経年劣化
パワーコンディショナは発電開始から10年間を経過すると、急激に性能が劣化するといわれます。パワーコンディショナはコンデンサー、フィルタ、冷却ファンなど多くの部品が使われており、長期的な使用によりそれらの性能が劣化していきます。
経年劣化による故障を防ぐためには、定期的な点検で劣化の兆候を早期に発見して対処していくことが大切です。経年劣化の速度はパワーコンディショナの設置環境によっても異なるので、日々の発電量なども参考にして劣化が早いと感じる時などは専門業者に相談してみましょう。
天候
パワーコンディショナの故障原因の多くは経年劣化ですが、天候によって故障するケースもあります。具体例としては、落雷が挙げられます。
太陽光発電システムに直接雷が落ちる場合だけでなく、近隣に落雷した場合でも影響を受ける場合があります。パワーコンディショナには落雷などによる過電流や過電圧から機器を保護するための機構が備わっていますが、それでも許容量を超えた負荷がかかった場合は故障してしまう可能性があります。
パワーコンディショナを選ぶ際のポイント
パワーコンディショナを選ぶ際の主なポイントとなる「価格」「タイプ」「屋内/屋外」について詳しく解説します。
価格
パワーコンディショナに限らず、価格は重要な検討要素です。製品価格は、定格出力(容量)、性能、メーカーなどによって大きく異なります。
経済産業省の資料によれば、太陽光発電システムの導入費用は発電容量1kWあたり26.1万円で、そのうちパワーコンディショナが占める設備費用は4.2万円となっています。発電容量3~5kW程度の太陽光発電システムの場合、パワーコンディショナの費用相場は12.6万~21.0万円程度といえるでしょう。
ただし、先述のとおり製品ごとに価格は大きく異なるため、定格出力3~5kWのパワーコンディショナであっても30万~50万円台の製品も実際に販売されています。
価格の比較をする際には、単にパワーコンディショナ本体の価格だけでなく、設置工事費や将来の交換費用も考慮に入れることが大切です。太陽光発電システムは長期にわたって運用するため、パワーコンディショナも保守・メンテナンスコストや部品交換費用なども含め長期的な視点で選択することが求められます。
本体価格が安価なモデルの場合は、メーカーの実績や信頼性変換効率、保証条件などをしっかり調べた上で比較検討しましょう。
タイプ:単機能/ハイブリッド/トライブリッド
タイプは、主に太陽光発電システムと蓄電池の併用を検討している方が、パワーコンディショナを選ぶ際に重要となるポイントです。
パワーコンディショナには、「単機能」「ハイブリッド」「トライブリッド」といったタイプがあります。ニーズに合うタイプを選択しましょう。
以下にそれぞれの特徴をまとめてみました。
タイプ | メリット | デメリット |
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単機能 |
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ハイブリッド |
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トライブリッド |
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- 単機能タイプ
太陽光発電においては、太陽光パネルで発電した直流電力を交流電力に変換する機能に特化したパワーコンディショナのことをいいます。太陽光発電システムのみであれば、単機能タイプのパワーコンディショナで機能的には十分です。比較的安価なため、太陽光発電システムの初期費用を抑えたい方には魅力的な選択肢でしょう。
一方で、単機能タイプの場合、1台で太陽光発電システムと蓄電池の両方と連携することはできません。それぞれと連携するためのパワーコンディショナが必要となるため、2台のパワーコンディショナを使用する必要があります。
ただ、太陽光発電システムや蓄電池それぞれに適したパワーコンディショナを選択できるため、機器間の相性を気にすることが少ない、といったメリットもあります。 - ハイブリッドタイプ
1台で太陽光発電と蓄電池の両方と接続できるタイプです。パワーコンディショナが1台で済むため、太陽光発電と蓄電池のシステム全体をコンパクトに構成できる点がメリットです。また機器の数が少なくなり、機器同士の電気交換も少なくなるため、変換過程などで発生する電力ロスも抑えることができます。
ただし、後から蓄電池を導入するケースなどでは、ハイブリッドタイプのパワーコンディショナと相性のよい蓄電池を選ばないと、思うような性能を発揮できない場合があります。また、蓄電池の後付けにより、保証条件から外れてしまうことも考えられます。
蓄電池を後付けを考えている方は、プロに相談をしながら、計画的にパワーコンディショナを選ぶことが大切です。 - トライブリッドタイプ
トライブリッドタイプなら、太陽光発電、蓄電池、追加の発電源(例えばEV)と統合的に制御することができます。さまざまな発電源の組み合わせにより、より高いエネルギー効率と安定性を目指す場合は、このタイプを選択するとよいでしょう。
設置場所:屋内/屋外
パワーコンディショナには、屋内設置型と屋外設置型があります。
東京ガスでは屋内設置型と屋外設置型の両方を取り扱っていますが、天候の影響を受けず長持ちしやすい点、ブレーカーの近くに設置でき送電時のロスを防ぎやすい点などから、基本的には屋内設置型のパワーコンディショナを推奨しています。また、屋内設置型には機器本体の「自立運転コンセント」を利用できる点もメリットのひとつです。
自立運転コンセントとは、災害などによる停電時に、太陽光発電システムや蓄電池の電源を利用できるようにするコンセントのこと。屋内設置型のパワーコンディショナは本体から利用できますが、屋外設置型の場合は屋内のどこかに自立運転コンセントの設置工事が必要となります。
サイズ
パワーコンディショナのサイズも、価格と同様に定格出力(容量)や性能、メーカーなどによって異なります。ただ、基本的にパワーコンディショナのサイズは、定格出力と比例すると考えてよいでしょう。パワーコンディショナには通風口などがあるため、周囲にスペースを確保しておくが必要です。屋内設置型を検討する際は、設置スペースに対して適切なサイズの製品を選ぶことがポイントです。
まとめ
パワーコンディショナは、太陽光パネルから送られる直流電力を家庭やビルで使用できる交流電力に変換する重要な装置であり、過電流や過電圧から太陽光発電システムを守る役割も果たします。
太陽光発電システムを長期にわたり安全に運用するためには、パワーコンディショナについて理解し、トラブルに備えることが大切です。
クリーンエネルギーを生み出す太陽光発電システムは、今後ますます重要性を増していきます。この機会に、太陽光発電システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。