FIT制度とは?
FIT制度(固定価格買取制度)は、太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーの普及促進を目的として、これら再生可能エネルギーで発電した電気を一定の期間、一定の価格で電力会社が買い取ることを国が保証する制度です。下表のように、2024年度に発電容量が10kW以下の太陽光発電システムを導入する場合は、10年間に渡って1kWhあたり16円で電力を買い取ってもらえることが保証されます。
1kWhあたり調達価格/基準価格注1) | |||||
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50kW以上 | 10kW以上 | 50kW以上 | 10kW以上 | 10kW未満 | |
2024年度 | 9.2円 | 10円 | 12円 | 12円 | 16円 |
調達期間/交付 | 20年間 | 10年間 |
参考:経済産業省 資源エネルギー庁「買取価格・期間等|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー」
注1)FIT制度(太陽光10kW未満及び入札制度適用区分を除く)は税を加えた額が調達価格、FIT制度の太陽光10kW未満は調達価格、FIP制度(入札制度適用区分を除く)は基準価格、入札制度適用区分は上限価格。
注2)FIT制度であれば調達期間、FIP制度であれば交付期間。
注3)10kW以上50kW未満の事業用太陽光発電には、2020年度から自家消費型の地域活用要件を設定する。ただし、営農型太陽光発電は、3年を超える農地転用許可が認められる案件は、自家消費を行わない案件であっても、災害時の活用が可能であればFIT制度の新規認定対象とする。
このFIT制度は、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(FIT法)」に基づき、2012年7月から施行されました。その後、FIT法は改正され、2022年4月からは「再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法」となっています。なお、FITの名称は英語の「Feed-in Tariff」の頭文字からきています。
同様の制度は海外でも広く導入されており、例えばドイツでは1991年、スペインでは1992年から始まっています。
なぜ、FIT制度が再生可能エネルギーの普及促進につながるのかというと、収支の見通しが立てやすくなることが理由のひとつとして挙げられます。太陽光発電では天候など不確実な要素はあるものの、FIT制度で導入後しばらくの間は導入後の売電価格が固定されるため、「どれくらい売電による収益が得られそうか」「どれくらいで初期費用が回収できそうか」を見立てやすくなり、より安心して導入することができるのです。
FIT制度のメリット
一般家庭では太陽光発電システムを導入してFIT制度を利用することで、電気代の負担軽減が期待できます。またFIT制度の利用者が増えていくことで、地球環境の保全にもつながります。
電気代の負担を減らせる
FIT制度の大きなメリットのひとつは、電気代の負担を減らせることです。住宅に太陽光発電システムを導入した場合、自宅で使いきれなかった電気(余剰電力)を電力会社へ売ることができますが、一定期間はFIT制度によって電力会社への売電価格が固定されているため安心といえるでしょう。自宅に導入した太陽光発電システムや蓄電池システムの性能や設置条件などによっては、電気代の節約と売電による収益化を両立させることも可能です。
なお、FIT制度の期間終了後、いわゆる卒FIT後にも余剰電力を売電すること自体は可能です。さまざまな事業者が余剰電力の買取サービスを行っているため、自分に合ったサービスを選びましょう。
東京ガスでは、卒FIT後のご家庭に向けた3つのプランを用意しています。特に、卒FITを機に蓄電池システムを導入しようと考えている方には、FIT期間中よりも魅力的な価格で余剰電力を買い取ってもらえるプランもありますので、ぜひ検討してみてください。
温暖化防止の取り組みに貢献
FIT制度の利用者が増えていくことは、地球温暖化を防ぐ取り組みにも役立っています。日本全体の発電量における再生可能エネルギーの占める割合は、FIT制度の施行前が10.4%(2011年度)だったのに対し、施行から10年目を迎えた2021年度では20.3%にまで上昇しました。経済産業省は野心的な目標として、今後は2030年度までに36~38%にすることを掲げています。
太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの普及がさらに進むことで、CO2排出量の削減が実現し、地球温暖化を抑制する効果が期待できます。
FIT制度が実施されるようになった背景
FIT制度の創設背景には、冒頭でも触れたとおり再生可能エネルギーの普及促進という目的があります。再生可能エネルギーは、地球環境への負荷が低く永続的に利用できるエネルギー源であり、石油やLNGといった化石燃料の産出が少ない日本国内にとっては重要な資源です。
日本のエネルギー自給率は低く、2020年度は11.3%、OECD諸国中37位でした。エネルギーの大部分を輸入に頼っているということは、国際情勢や安全保障上の理由で安定的なエネルギー供給に支障がでることもあり得るということです。そのため国としても、太陽光、風力などの再生可能エネルギーの普及促進は重要な位置づけであるといえます。
しかし、再生可能エネルギーを利用する発電設備は、個人や企業にとって設備費用や工事費用といった初期費用が高いことが参入のハードルを高くしていました。初期費用が高いために、導入後に初期費用に見合った収益が得られるのか、どれくらいの期間で回収できるのかといった見通しが立てにくいためです。こうした中、一定期間の余剰電力の固定買取価格を定め、参入ハードルを下げることを狙いのひとつとして創設されたのがFIT制度です。
FIT制度の仕組み
FIT制度により、2024年度の例では発電容量が10kW以下の太陽光発電システムを導入する場合、電力会社が10年間にわたって1kWhあたり16円で買い取ることが保証されます。売電した家庭には売電した電力量に応じて買取価格が支払われますが、この買取価格の原資には「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」が含まれます。
再エネ賦課金とは、FIT制度において固定価格で電力を買い取る電力会社の費用負担を減らすために、国民から電気料金の支払いと合わせて一定割合で徴収されている料金のことです。2023年5月分から2024年4月分まで、再エネ賦課金は電気使用量1kWhあたり1.40円と決まっています。
再エネ賦課金について詳しく知りたい方は、こちらのページも参考ください。
FIT制度に認定されるまでの流れ
FIT制度で電力の買取をしてもらうには電力会社に系統連携申請や売電に係る契約をしたうえで、経済産業省の事業計画認定を申請し、認定を受ける必要があります。買取価格や買取期間は、それぞれの再生可能エネルギーごとに経済産業省によって定められていますが、例えば2024年度に一般的な住宅で太陽光発電システムを導入するようなケースでは電力1kWhあたり16円で10年間です。買取価格や買取期間は通常、事業計画認定を受けた時点で決定し、FIT期間中は変動しません。
発電容量50kW未満の太陽光発電システムの場合の、FIT制度の大まかな手続きの流れは以下のとおりです。FIT制度は手続きが多いため、システム導入だけでなく、こういった各種制度の申請までサポートしてくれる会社を選ぶことが重要です。東京ガスではFIT制度の申請サポートも対応していますので、ぜひお気軽にご相談ください。
- 太陽光発電システムの導入を検討
- 事業計画策定ガイドラインを踏まえて事業計画を立てる
- 販売店などで詳細な見積もりを取る
- 電力会社への系統連系申請、特定契約の締結を済ませる
- 経済産業省へ事業計画認定の申請(再生可能エネルギー電子申請サイト)
- 経済産業省から事業計画の認定を受ける
- 太陽光発電システムの設置工事を開始
- 完成
- 基礎情報および使用前自己確認届出を提出
- 電力供給開始
- 定期報告
先述のとおり、FIT制度を利用するには経済産業省から事業計画認定が必要です。事業認定とは、「安定的かつ効率的な発電が行えるか」などのいくつかの観点から、FIT制度を利用する事業として適切かどうかを判断するものです。事業認定申請を行うには、電力会社の「接続の同意を証明する書類」の提出が必要であり、そのために事前に電力会社と電力配線の接続や売電にかかわる契約を結んでおく必要があります。
発電容量50kW未満とそれ以上とでは、電子申請の使用可否などいくつか手続きの流れに違いがあります。詳しくは経済産業省 資源エネルギー庁のホームページをご確認ください。
FIT制度の今後の課題
FIT制度には国民による賦課金の負担抑制、調達期間終了後の環境整備といった課題があります。それぞれ詳しく解説していきます。
- 国民による賦課金の負担抑制
世界的なエネルギー価格の高騰などにより、大手電力会社は2024年6月請求分まで電気代の値上げを継続する考えを示しています。こうした電気代の高騰が家計にのしかかるなか、再エネ賦課金の国民負担の調整は、今後もFIT制度が向き合っていく課題といえるでしょう。
なお、FIT制度では電力の需給状況を踏まえ「調達価格の目標の見直し」「2017年より入札制度を導入」「2022年よりフィード・イン・プレミアム(FIP)制度を導入」といった方策により国民負担の抑制を図っています。再エネ賦課金については、2022年度は3.45円/1kWhだったところ、2023年度には1.40円/1kWhへと単価が引き下げられています。再エネ賦課金の単価引き下げは、FIT制度の開始以来初めてのことです。 - 調達期間終了後の環境整備
現行のFIT制度では、発電容量10kW未満の太陽光発電の調達期間は「10年」です。2009年に開始した前身の余剰電力買取制度も同様で、2019年11月以降は調達期間が終了した個人や企業が増え続けている状況です。
再エネによる発電を拡大していくためには、卒FIT後も安定的に運用され続けることが重要であるため、経済産業省では調達期間終了後の選択肢の提示や、余剰電力の買取を行っている事業者の情報提供などを行っています。さらに、2024年4月1日からは太陽光発電システムへの追加投資(増設・更新)に対して、既存部分とは別に新たに買取価格が適用される法改正が施行されます。
まとめ
FIT制度は、再生可能エネルギー由来の電力の買取価格を国が保証する制度です。FIT制度を使うことで、事業者や個人は発電した電力を一定期間、一定価格で売ることができます。
ただし、FIT制度の買取価格は年度によって変動することや、太陽光発電システムの着工前から手続きを進める必要があることなどから、太陽光発電の導入を検討する時には、FIT制度についてもしっかり理解しておくことが大切になるでしょう。
また、一般的な家庭であれば10年間で卒FITを迎えるため、期間終了後の選択肢に関する情報収集も行っておきたいものです。東京ガスでは、卒FIT後の方に向けた余剰電力の買取サービスを提供しています。3つのプランから選ぶことができ、蓄電池購入サポートプランなら6ヶ月のあいだは最大23円/1kWhで売電可能です。卒FIT後の買い取りは、ぜひ東京ガスにお任せください。